いつもボイストレーニング、お疲れ様です。
本日は筋肉の付けすぎと高音の発声についてのご質問を頂きました。
結論から申し上げますと、筋トレと言うのは歌の場合はあまり必要ではないと言うのは事実なんです(すいません)。
日常生活に必要な筋肉が全身にまんべんなく備わっていれば、歌は充分歌えるようになります。
しかしご趣味で筋トレをやられていると言うことであれば、それを止める必要は全くありません。
これについて具体的に後述していきます。
筋肉の付けすぎは発声能力を妨げてしまう可能性がある
ハンドルネーム : グレール
ご質問タイトル : 歌と筋トレ
ご質問内容 :
質問失礼します。
自分は趣味で筋トレを良くしていて、ベンチプレスなどの高負荷なトレーニングをしています。
やはり筋肉を(特に胸)つけすぎると高音が出なくなったりするのでしょうか?
音域を広げたいと思っているのですが、ウワサで聞いたので心配になり質問しました。
筋肉を過剰につけると腹式呼吸を活かしづらくなる
筋トレと発声の関係ですが、実はむやみやたらに筋トレをしてしまうと発声で使う筋肉が凝り固まってしまって、うまく腹式呼吸のスキルを活かすことができなくなってしまう可能性があるんですね。
例えば1番影響受けやすい声の出し方としては高い声が出なくなるなどです。
下腹部の横に付いている筋肉の腹横筋が横にせり出してこなくなる、もしくはお腹の前の方(腹直筋の下の方)が内側へ筋肉が付きすぎて凹まなくなる。
このような状態になると、胸部下にドーム状に広がっているインナーマッスルであります横隔膜が息を出したり発声する際に上に押し上がらないので、勢いのある声や息と言うものが声帯を通過しなくなります。
と言う事は声が響かなくなる(共鳴しなくなる)わけです。
発声の事を考えると筋トレはしない方が良いのか?
それでは腹筋をつけたらいけないのかというと、そんな事はありません。
腹式呼吸の使い方をきちんと筋肉の動きを理解した上で、筋トレを行っていくのであれば、発声にはそれほど影響が出ない感じで筋力をつけていく事は可能だと考えます。
ですから歌を歌う際に体の使い方を理解していた人が筋トレを行っていけば理にかなった部分に筋肉がつきやすくなるので、それは止める必要なんて全くないと思うんです。
ですけれども逆に歌で体の使い方がどんなふうに使えば良いのかと言うことを全く知らない状態で先に筋トレから入ってしまうと不要なところに筋力がついてしまい、歌を歌うときにうまく体が作用しなくなってしまうんですね。
ですから手順をうまく踏んでやらないと失敗してしまうので気をつけないといけません。
脂肪は少しはあった方が歌う上で良い
あと皮下脂肪なんですけども、これは全くないよりかは少しはあった方が良いです。
声の響きと言うのは胸よりも上の部分で共鳴が出るわけですけれども、やはり人間の体と言うのは全体が結局は鳴る。
鳴るというか、音圧により共振するんですね。
その場合にほんの少しでも皮下脂肪があった方が伸びやかな声が出ますので、特に若い頃と言うのはあまり皮下脂肪はなくても勢いだけで何とかなるんですが、年齢を重ねていくと、ちょっと皮下脂肪があった方が声の質を維持しやすくなります。
さらに言えば年齢を重ねていくと基礎体力が落ちるので筋トレも逆に重要になってきます。
例えばボディービルダーなどであれば、大会前に脂肪を極限まで落として恐らく5%~10%くらいにするかと思うのですが、体脂肪率で言うなら10%~15%くらいはあると良いですね。
※15%はどれくらいかと言いますと、腹筋、いわゆるシックスパックが見えるくらいの目安です。
最後になりましたがかなり負荷のかかったベンチプレスをされていると言う事ですが、歌の事も考慮されるのであれば、腹横筋と腹直筋部分に関しては少しトレーニングを休まれて、腹式呼吸でのお腹の使い方と言うのをまずマスターしてから腹直筋と腹横筋に作用するトレーニングを開始された方が良いのかもしれません。
かなり勘が良い方であれば、筋力がついていても腹式呼吸はできる人もいますが、全体の何%位かと考えるとかなり少ないです。
腹式呼吸でしっかり横隔膜を作用させることができるかできないかと言うことが、筋肉をお腹周りにつける場合のある種の判断基準になりますので、ぜひ参考にしてみてください。
また何かご不明な点があれば、何でもご質問ください。