「取引先と話していたら、相手が聞き取りづらそうだった」
「自分の声がこもっている気がする」
こんな悩みを抱えている社会人の方は意外と多いです。
オンライン会議やプレゼン、接客など、声を使う場面が増えた今、「聞き取りやすい声」は立派なビジネススキルと言えます。
この記事では、
なぜ声がこもってしまうのか、そしてどうすれば声が抜けて、クリアに届くのかをボイストレーナーの視点からわかりやすく解説していきます。
本記事はYouTube動画をもとに作成しておりますので、下記の動画でも同様の内容を視聴できます。
なぜ「声が聞き取りづらい」のか?
相手から「声が聞き取りづらい」と感じられている場合、主な原因は大きく分けて次の2つです。
- 息の量が多すぎる
- 喉が開いておらず、声が共鳴していない
一見、声の問題のようですが、実際には
「息の使い方」と「喉や舌のポジション」が大きく関わっています。
原因1:息の量が多すぎる「胸式呼吸」
まず押さえておきたいのが、
「胸式呼吸」になってしまっている人が非常に多いという点です。
胸式呼吸とは?
胸式呼吸の特徴は、
- 胸や肩まわりに力が入る
- 肋骨を広げたり閉じたりする意識が強い
- 横隔膜がうまく使えていない
という状態です。
この状態だと、寒いときに「はぁ〜」と白い息を吐くような、息だけがたくさん出てしまう呼吸 になりがちです。
この「はぁ〜」という息に声が乗ってしまうと、
- 声の輪郭がぼやける
- トーンが全体的に下がる
- 相手に届きにくい
- こもった声に聞こえる
といった現象が起きます。
原因2:腹式呼吸が使えていない
一方で、よく聞く「腹式呼吸」は、縦の動きを使った呼吸 です。
- お腹の動きで横隔膜を上下させる
- 肺を下から圧迫し、息をスムーズに上に送る
- そこに声が乗ることで、自然と通りの良い声になる
腹式呼吸がうまく使えていないと、
どうしても胸や肩の力みに頼った強式呼吸 に偏り、
結果として息が多すぎる・声がこもる という状態になります。
「抜ける声」に必要なのは、息の量のコントロール
聞き取りやすい声を作るうえで、息の量をコントロールすることは必須です。
悪いパターン
- 息の量が多すぎる
- 「はぁ〜」というため息のような息に声が乗る
- 声が弱く、こもって聞こえる
良いパターン
- 息の量が必要最低限に抑えられている
- 声の輪郭がはっきりしている
- 「アイウエオ」「カキクケコ」「サシスセソ」がクリアに聞こえる
はっきりした声 = 息の量が少ない声と言い換えても良いくらいです。
ポイントは下記。
息で押し出そうとしない
声帯付近でしっかり声を鳴らすイメージを持つこと
共鳴とは?喉の3つのポイント
「声が通る」「声が抜ける」というとき、喉の中では何が起きているのでしょうか。
喉の中には、主に次の3つの共鳴ポイントがあります。
- 上咽頭
- 中咽頭
- 下咽頭
はっきりした声・息の量が適切な声は、これらのポイントで自然に響きやすくなります。
逆に、
- 息が多すぎる
- 喉が狭い
- 舌の位置が悪い
といった状態だと、この共鳴ポイントに声がうまく当たらず、こもった声になってしまいます。
「舌のポジション」が抜ける声のカギ
抜けのある声を作るうえで、実は舌(ベロ)の状態 が非常に重要です。
理想的な舌のポジション:4つのチェックポイント
練習のときは、まず「あー」の発声で次の4つをチェックしてみてください。
- 舌先が下の前歯の裏についている
- 舌の表面が平らになっている
- 舌全体がなめらかに下がっている
- 喉の奥(お医者さんに診てもらうときに見られる部分)が鏡でしっかり見える
この4つができていると、
- 喉がしっかり開く
- 声が前にスッと抜ける
- 共鳴ポイントに声が当たりやすくなる
という良い循環が生まれます。
子音+母音でも舌先は「歯の裏」
「あー」だけでなく、日常会話で頻出する子音+母音のときも舌のポジションは非常に大切です。
ポイントは、
どの音でも、母音に移るときには必ず舌先が下の歯の裏側についている
という状態を作ることです。
一瞬、上顎につくような子音(タ・テなど)があっても、母音(ア・エ)に移るタイミングでは舌先が歯の裏に戻ってきているのが理想です。
これが習慣化してくると、
- 舌が無駄に盛り上がらない
- 喉が常に開きやすくなる
- 声が自然と前に抜ける
といったメリットが出てきます。
自宅でできるトレーニング方法
ここまでの内容を踏まえて、自宅でできる簡単なトレーニングをご紹介します。
1. 鏡を見ながら「あー」でフォームチェック
- 手鏡を用意する
- 「あー」と発声しながら、次を確認
- 舌先:下の前歯の裏についているか
- 舌:平らで、余計に盛り上がっていないか
- 喉の奥:しっかり見えているか
- 息を「はぁ〜」と吐くのではなく、
声を鳴らす意識で発声する
これを毎日少しずつ続けることで、舌と喉の正しいポジションが体に定着していきます。
2. はっきり発音の練習
声がこもる人は、そもそも「はっきり話そう」という意識が薄くなっていることも多いです。
- 「アイウエオ」
- 「カキクケコ」
- 「サシスセソ」
などを、息に流されないように輪郭のはっきりした声で発音する練習も効果的です。
最初は違和感があって当然です
舌の位置や喉の開き方を意識し始めると、最初は
- 逆に話しづらく感じる
- ぎこちなくて、会話がしにくい
といった違和感が出るかもしれません。
しかし、それはこれまで無意識にやってきた「クセ」を修正し始めたサイン です。
新しいフォームを身につけるには、どうしても「慣れ」の時間が必要です。
筋トレでフォームを修正するときと同じで、少しずつ正しいやり方を体に覚えさせていきましょう。
まとめ:声がこもる人が意識すべきポイント
最後に、今日の内容を整理します。
- 聞き取りづらい声の主な原因は息の量が多すぎることと喉が開かず共鳴していないこと
- 強式呼吸で胸や肩に力が入ると、「はぁ〜」という息に声が乗り、声がこもりやすくなる
- 腹式呼吸で息をコントロールし、息の量を減らしたはっきりした声を目指す
- 舌のポジションは「舌先は下の歯の裏」「舌は平ら」「喉の奥が見える」という4ポイントを常に意識する
- 鏡を見ながら「あー」でフォームを確認し、毎日の会話や発声練習に落とし込んでいく
これらを継続していくことで、声がこもる状態から「抜けのある、聞き取りやすい声」へと変えていくことが可能 です。
「自分の声が相手にどう届いているか」を意識しながら、ぜひ今日から少しずつ試してみてください。

