こんにちは。ブラッシュボイスです。
「裏声を出すとかすれてしまう」「ファルセットが途中から息っぽくなって途切れる」「きれいな裏声を出したいのにガサガサした音しか出ない」――こうしたお悩みは、ボイストレーニングの現場で非常に多く寄せられます。
実は裏声がかすれる原因はひとつではなく、いくつかの要因が複合的に絡んでいることがほとんどです。
この記事では、裏声がかすれる主な原因を4つに分類し、それぞれの具体的な改善トレーニングまでプロのボイストレーナーの視点から解説します。
文章だけで発声のニュアンスをすべてお伝えするには限界がありますが、できるだけイメージしやすいように身体の感覚や比喩を交えてお話しますので、ぜひ最後まで読んでみて下さい。
そもそも裏声がかすれるとはどういう状態か
正常な裏声と「かすれた裏声」の違い
まず、裏声がかすれている状態とはどういうことかを整理しましょう。
正常な裏声(ファルセット)は、声帯を薄く引き伸ばし、その縁だけが振動することで生まれます。柔らかく軽やかな響きが特徴で、フクロウの「ホーホー」という声をイメージして頂くとわかりやすいです。
一方、かすれた裏声は「シュー」「ガサガサ」といった雑音が混じり、音程が不安定になったり途中で声が途切れたりする状態を指します。
この違いは主に、声帯の振動が安定しているかどうかで決まります。
声帯がうまく振動できていないと、息が無駄に漏れてノイズになってしまうのです。ちょうど、リコーダーの吹き口にしっかり息を当てられていないとき、「ピー」ときれいな音にならず「スー」と風の音しか出ないのと同じ原理です。
かすれは「下手」ではなく「バランスの問題」
裏声がかすれてしまう方の多くは、地声では問題なく歌えていたり、音域自体は広かったりします。
つまり「歌が下手だから」ではなく、裏声を出すときの身体の使い方のバランスが整っていないことが原因です。
バランスさえ整えれば改善できる問題ですので、まずは原因を正しく把握するところから始めましょう。
裏声がかすれる原因 (1) 息の量が多すぎる
なぜ息が多いとかすれるのか
裏声がかすれる原因として最も多いのが、息の量が多すぎることです。
裏声を出しているとき、声帯は薄く伸びた状態でわずかな隙間を保っています。
この繊細な状態の声帯に大量の息をぶつけると、声帯が耐えきれず振動が乱れてしまいます。イメージとしては、シャボン玉を作るときに息を強く吹きすぎると、膜が割れてしまうのと似ています。
「高い声を出すには息をたくさん使わなくては」と思い込んでいる方が多いのですが、実はまったくの逆。裏声は少ない息で効率よく声帯を振動させる発声なのです。
息の量を抑えるトレーニング
まずは次のような練習を試してみて下さい。
(1) 「固い裏声」を意識する
裏声を出すときに、声質をあえて「固く」「ドライに」してみましょう。輪郭のはっきりしたクリアな裏声を出そうとすると、結果的に息の量が自然と抑えられます。
「ホー」ではなく「フー」に近い、芯のある裏声を目指すのがコツです。
(2) ティッシュテスト
口の前にティッシュを垂らし、裏声を出してみましょう。ティッシュが大きく揺れるようなら、息を使いすぎています。ティッシュがほぼ動かない状態で裏声が出せれば、適切な息の量に近づいている証拠です。
裏声がかすれる原因 (2) 腹式呼吸が不十分
腹式呼吸「できているつもり」の落とし穴
「腹式呼吸はできています」とおっしゃる方でも、実際に歌っているときの呼吸を確認すると、裏声を出す場面では胸式呼吸に切り替わっているケースが少なくありません。
なぜこうなるかというと、高い声を出そうとしたときに身体に力が入り、お腹の支えが抜けてしまうからです。
車で例えるなら、平坦な道ではアクセルコントロールできているのに、坂道(=高音域)になると一気にアクセルを踏み込んでしまうような状態です。
腹式呼吸のやり方・コツについて詳しくはこちらの記事で解説していますが、裏声に関しては特に「息を支える力」が重要になります。
裏声のための腹式呼吸トレーニング
(1) ロングブレスで息の安定感を鍛える
「スー」と細く長く息を吐く練習です。20秒以上安定して吐き続けられることが目標です。
お腹が自然にへこんでいく感覚があれば、腹式呼吸で息を支えられています。途中で肩が上がったり胸が苦しくなったりする場合は、胸式に切り替わっているサインです。
(2) 裏声ロングトーン
「ウー」と裏声で一定の音を出し続ける練習です。最初は5秒からで構いません。
音量・音程・声質がブレずに出し続けられる長さを少しずつ伸ばしていきましょう。息を支えるお腹の感覚を、裏声を出しながら意識するのがポイントです。
裏声がかすれる原因 (3) 共鳴が不十分
声量が大きい=共鳴ができている、ではない
ボイストレーニングでは「共鳴」という言葉がよく出てきますが、声量が大きいことと共鳴ができていることは、実はまったく別の話です。
共鳴とは、声帯で生まれた小さな振動が口腔・鼻腔・咽頭などの空間で増幅されて豊かな響きになることを指します。
ギターに例えると、弦だけを弾いても小さな音しか出ませんが、ボディ(共鳴箱)があることで豊かな音量と音色が生まれます。人間の声もこれと同じで、声帯が「弦」、身体の空間が「共鳴箱」にあたります。
共鳴が不十分な状態で裏声を出そうとすると、声帯だけで音量を稼ごうとして余計な力が入り、結果的にかすれてしまうのです。
共鳴を高めるトレーニング
(1) ハミングで鼻腔共鳴を意識する
口を閉じた状態で「ンー」とハミングをしてみましょう。鼻の付け根や額のあたりに振動を感じられれば、鼻腔共鳴がうまく使えています。
この感覚を保ったまま口を開けて「マー」と裏声に移行する練習を繰り返すと、共鳴のある裏声が身についていきます。
(2) 「あくびの喉」で咽頭共鳴を広げる
あくびをするときのように喉の奥を大きく開けた状態で裏声を出してみて下さい。
喉の奥に空間ができることで、声に厚みと響きが加わります。ただし、力んで喉を押し下げるのは逆効果ですので、あくまで自然に開く感覚を大切にして下さい。
裏声がかすれる原因 (4) 喉の力みとコンディション不良
力むとなぜかすれるのか
高い音を出そうとすると、無意識に首や顎、舌の付け根に力が入ってしまう方がとても多いです。
この力みは声帯の自由な動きを妨げ、裏声のかすれや途切れの大きな原因になります。
水道のホースをイメージして下さい。ホースの途中をギュッと握りしめると、水の流れが不安定になりますよね。喉に力みがある状態は、まさにこれと同じことが声帯周辺で起きているのです。
力みを解消するトレーニング
(1) リップロールで喉をリラックスさせる
唇を「プルプル」と振るわせるリップロールは、喉に余計な力が入っていると続けられないという特徴があります。
リップロールをしながら低い音から高い音まで滑らかにスライドさせる練習は、力みのない発声の感覚をつかむのにとても効果的です。
(2) 首・肩のストレッチを歌う前に行う
歌う前に首をゆっくり回したり、肩を上げ下げしたりするだけでも、発声に関わる筋肉がほぐれます。
力みの原因は「歌うぞ」という緊張感から来ていることも多いので、身体をリラックスさせてから発声に入る習慣をつけましょう。
声帯のコンディション不良にも注意
テクニック以前に、声帯そのもののコンディションが低下しているときも裏声はかすれやすくなります。よくあるのが次のようなケースです。
- 長時間歌い続けた後:声帯が疲労して腫れ、振動が乱れやすくなります
- 風邪や喉の炎症があるとき:声帯周辺がむくんで、薄く伸びにくくなります
- 乾燥した環境:声帯の粘膜が乾くと振動しにくくなり、かすれの原因になります
- 睡眠不足や疲労:全身の筋肉のコントロールが鈍り、発声の精度が落ちます
「いつもは出るのに今日はかすれる」という場合は、コンディションの問題である可能性が高いです。こまめな水分補給と適度な休息は、裏声のかすれを防ぐ基本中の基本ですので、練習中も意識するようにしましょう。
また、歌った後に声がかすれるのが毎回続く場合は、発声方法そのものに負担がかかっている可能性があります。無理に練習を続けるのではなく、一度発声の基礎を見直すことをおすすめします。
なお、長期間かすれが改善しない場合や痛みを伴う場合は、専門の医療機関への相談も検討して下さい。この記事ではあくまでボイストレーニングの観点からのアドバイスに留めます。
裏声のかすれを改善する自宅練習メニュー
5分でできるデイリートレーニング
ここまで解説した原因別の対処法を、毎日5分でできるトレーニングメニューとしてまとめます。
STEP 1:リップロール(1分)
低い音から高い音へ、高い音から低い音へ滑らかにスライドさせます。喉のウォームアップと力みの解消を兼ねています。
STEP 2:ハミング(1分)
鼻の付け根に響きを感じながら「ンー」と発声します。共鳴のある声の感覚を身体に覚えさせましょう。
STEP 3:「固い裏声」ロングトーン(2分)
息を少なく、芯のある裏声で「ウー」と出し続けます。5秒→8秒→10秒と少しずつ伸ばしていきます。
かすれ始めたら無理に続けず、一度休んでからやり直すのがポイントです。
STEP 4:裏声スケール(1分)
ドレミファソラシドを裏声で歌います。音が上がるときに息が増えないよう、お腹で息を一定にコントロールする意識を持ちましょう。
練習するときの注意点
自宅で練習する際は、次の点を意識して下さい。
- 小さい声で構いません:大きな声を出そうとすると力みが入りやすくなります。まずは小さい声で正しいフォームを身につけることが大切です
- 鏡を見ながら練習する:首や顎に力が入っていないか、目で確認できます
- 違和感を感じたらすぐに休む:喉がイガイガする、痛みがあるなどの場合は練習を中断して下さい
裏声・ファルセットの出し方の基本についてはこちらの記事でも詳しく解説していますので、あわせて参考にして頂ければと思います。
まとめ|裏声のかすれは正しいアプローチで改善できる
裏声がかすれる原因は、大きく分けて次の4つです。
- (1) 息の量が多すぎる:少ない息で効率よく声帯を振動させる
- (2) 腹式呼吸が不十分:高音域でも息を安定して支える
- (3) 共鳴が不十分:ハミングで響きの感覚をつかむ
- (4) 喉の力みとコンディション不良:リップロールでリラックスした発声を身につけ、水分補給と休息も怠らない
どれかひとつだけが原因ということは少なく、複数の要因が重なっていることがほとんどです。
この記事で紹介したトレーニングをひとつずつ試してみて、自分に合った改善法を見つけて下さい。
ただし、文章だけではお伝えしきれない部分もあります。
「自分の裏声がなぜかすれるのか、具体的に知りたい」「正しくできているか確認してほしい」という方は、ぜひ一度プロのボイストレーナーに直接見てもらうことをおすすめします。
ブラッシュボイスでは60分の無料体験レッスンを実施しています。裏声のかすれでお悩みの方も、お気軽にお申し込み下さい。
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