今回は、日本の音楽シーンを長年にわたって牽引し続けているサザンオールスターズのボーカリスト、桑田佳祐さんの歌声と声質について、ボイトレの観点から詳しくお話ししていきたいと思います。
桑田佳祐さんといえば、やはりあの独特な「しゃがれ声」が最大の魅力です。
一度聴いたら耳から離れない、唯一無二の声質ですよね。
クリアで澄んだ声とは異なりますが、圧倒的な存在感と温かみがあり、多くのリスナーを魅了し続けています。
この記事では、桑田佳祐さんの声の魅力を音響学的な視点から紐解きながら、しゃがれ声に近づけるためのボイトレ方法やコツについても触れていきます。
ご自身の歌声に個性を出したいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
桑田佳祐さんのしゃがれ声の特徴と魅力
桑田佳祐さんは、以前はしゃがれ声を作るためにお酒でうがいをしたり、声帯を意図的に酷使したりしたこともあるそうです。
しかし現在はそうした手法に頼ることなく、素の声質を最大限に活かした歌唱をされています。
レッスンでも「しゃがれ声を出せるようになりたいです」というご相談をいただくことがあります。
もともとクリアな声質の方をしゃがれ声にするというのは正直かなり難しく、声帯に負荷をかける行為(喫煙や飲酒、睡眠不足など)を続ければ近づく可能性はありますが、もちろんおすすめはできません。
ですが、声帯を傷めずにしゃがれた質感に近づけるボイトレの方法はいくつかありますので、以下でご紹介していきます。
エッジボイスを活用したアプローチ
しゃがれ声に近づけるうえで非常に有効なのが、エッジボイスを活用したトレーニングです。
エッジボイスとは、声帯を軽く閉じた状態で「あ゛あ゛あ゛…」とガラガラした音を出す発声方法のことです。
このトレーニングを行うことで、声帯の閉鎖力をコントロールする感覚が身につきます。
桑田佳祐さんの歌声にも、このエッジボイスに近いニュアンスが随所に含まれています。
フレーズの入りや語尾に「ガリッ」としたざらつきを加えることで、あの独特のしゃがれた質感が生まれているのです。
エッジボイスの詳しい練習方法については、エッジボイスの出し方と練習方法の記事で解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
息のコントロールで声質を変える
桑田佳祐さんの歌声を分析すると、息の量を自在にコントロールしている点が大きな特徴として挙げられます。
息を多めにして発声すると、声は柔らかくウィスパーに近い質感になります。
反対に息を少なくしてしっかり声を当てると、芯のある力強い声になります。
桑田佳祐さんの場合、もともとの声質にこれらのテクニックが高次元で組み合わさっており、曲の中で実に巧みに声の表情を変えています。
この息の配分バランスを絶妙に操るのはとても難しいですが、練習を重ねて感覚をつかんでいくことが大切です。
すぐに取り組める息のコントロールのトレーニングとしては、「フェードアウト」が効果的です。
歌のフレーズの終わりで、声を徐々に小さくしていく方法です。
このとき、ビブラートをかけずにまっすぐ伸ばしたまま音量を落としていくところから始めてみてください。
声が小さくなるにつれて息の割合を増やしていくことで、滑らかなフレーズの処理ができるようになります。
ビブラートの技術そのものについて詳しく知りたい方は、ビブラートの出し方・かけ方のコツの記事も参考になるかと思います。
脱力した発声がしゃがれ声の土台になる
しゃがれ声を自然に出すためには、実は喉や身体の余計な力を抜くことが非常に重要です。
力んだ状態で無理にしゃがれた声を出そうとすると、声帯に大きな負担がかかり、喉を痛める原因になってしまいます。
桑田佳祐さんの歌声が長年にわたって衰えないのは、必要最低限の力で声帯を振動させる技術がしっかり身についているからこそです。
脱力のコツや具体的な練習方法については、脱力と発声の関係についての記事で詳しく解説していますので、あわせてチェックしてみてください。
非整数次倍音を多く含んだ桑田佳祐さんの声質
ここからは少し音響学的な視点で、桑田佳祐さんの声の秘密に迫ってみましょう。
音にはもともと「倍音」というものが含まれており、私たちが一つの音として聴いているものの中にも、実はたくさんの音が重なって鳴っています。
たとえばピアノで「ド」の音を弾くと、「ド」の音が聴こえるのはもちろんですが、実際にはそれ以外の周波数の音も同時に鳴っているのです。
普段は自覚できませんが、人間の聴覚はこの倍音をしっかり捉えています。
テレビの試験放送で流れる「ピー」という音は440Hz(ピアノの「ラ」の音の高さ)ですが、この440Hzを基準として整数倍の周波数の音を「整数次倍音」、整数倍ではない周波数の音を「非整数次倍音」と呼びます。
(たとえば2倍の880Hzは整数次倍音にあたります。)
整数次倍音と非整数次倍音の違い
整数次倍音が多い声は、アナウンサーのようにクリアで通りが良く、カリスマ性を感じさせる声質です。
一方、非整数次倍音が多い声は、ザラザラとした質感があり、聴く人の注意を引きつけたり、安心感を与えたりする効果があると言われています。
桑田佳祐さんの声は、まさにこの非整数次倍音を豊富に含む声質です。
だからこそ、BGMとして流れてきたときに「おっ!」と思わず耳を傾けてしまうのに、同時にどこか聴き心地がよく、何曲聴いても聴き疲れしない。
この絶妙なバランスが、桑田佳祐さんの声が長く愛され続けている理由のひとつだと考えられます。
倍音を意識した歌い方のヒント
もともとの声質でどちらの倍音が多く含まれるかは人それぞれですが、先ほどご紹介した息のコントロールを使うことで、ある程度は意識的に倍音の出方を変えることが可能です。
たとえば、歌い始めのAメロでは息を多めにして非整数次倍音寄りの柔らかい声で歌い、サビでは息を絞って整数次倍音寄りのクリアな声で歌う――というように、曲の場面に応じて声の質感を使い分けることができるようになります。
こうした表現の幅を広げていくことが、聴く人の心に響く歌声への近道です。
まとめ|桑田佳祐さんのしゃがれ声に学ぶボイトレのポイント
今回は、桑田佳祐さんのしゃがれ声の魅力と、その声質を支える「非整数次倍音」の仕組み、そしてしゃがれた声に近づくためのボイトレ方法についてお話しさせていただきました。
ポイントをまとめると、以下のとおりです。
・エッジボイスで声帯の閉鎖コントロールを身につける
・息の量をコントロールして声の質感を変える練習をする
・脱力した状態で発声する習慣をつける
・倍音の仕組みを理解し、場面に応じた声の使い分けを意識する
しゃがれ声は無理に作ろうとすると喉を傷めるリスクがありますが、正しいボイトレを積み重ねることで、声帯に負担をかけずに自分だけの個性的な声を磨いていくことは十分に可能です。
ブラッシュボイスでは、その人が持っている声質をしっかり活かした個性重視のボイトレ・レッスンを行っています。
「自分の声にもっと個性を出したい」「桑田佳祐さんのような表現力を身につけたい」という方は、ぜひ一度ボイトレ無料体験レッスンにお越しください。
株式会社ブラッシュボイス
関東代表ボイストレーナー/鈴木 智大

