今回は、人間の赤ちゃんの発声から学べることをお伝えしていきたいと思います。
ちなみにですが、赤ちゃんの声の特徴として挙げられる事は何でしょうか?
おそらくまず思い浮かぶのは、「声が高い」「声が大きい」の2点であると思われます。
【赤ちゃんの声の特徴】
・声が高い
・声が大きい
しかしながら、なぜ赤ちゃんは声が高くて声が大きいのでしょうか?
これを考察しているボイストレーニングスクールの記事を私は拝見したことがございませんでしたので、今回ここに記しておきたいと思った次第です。
理由として最も大きなものが、横隔膜と頭との物理的な距離だと考えられます。
実はこれは大人のボイストレーニングを行うに当たっても、非常に大事なことです。
人間は発声をする時に腹部の横隔膜を上に押し上げることによって腹圧を高め、その勢いで発声をします。
細かい腹式呼吸と共鳴等の説明のメカニズムを今回は省きますけれども、ざっくり考えると腹圧と声の高さと声の大きさは大いに関係があります。
共鳴と腹式呼吸については下記を参照下さい。
【共鳴について】
共鳴を歌に活かす方法について
【ボイトレノウハウ6】共鳴 (図解あり)
【腹式呼吸について】
【ボイトレノウハウ1】歌唱における腹式呼吸の必要性とは?(図解あり)
大人になると、横隔膜と頭との距離が長くなります。
身長が赤ちゃんの時よりもはるかに高くなるわけですから当然です。
身長が高くなると言う事は、実は高い声については特になのですが出しづらくなると言うこととイコールです。
腹圧が赤ちゃんの頃に比べると圧倒的に大人の方が足りなくなるからです。
横隔膜と頭の距離、これが長くなれば長くなるほどに、高い声は出しづらくなる…事実としてまずこの点を捉えておいてください。
ということを考えると、大人のボイストレーニングを行う際に、この赤ちゃんの発声方法と言うのを考えて取り組むと大事なポイントと言うものが見えてきます。
それは、体全体を通して見たときにお腹と頭を分けて考えるのではなく、本来は1つの個体として捉えて声を出すことが望ましいと言うことです。
ブラッシュボイスのレクチャー方針では腹式呼吸と共鳴など様々なボイストレーニング方法を分けて紹介してきましたが、究極的には1つの身体1つの個体によっての発声であることには変わりはありません。
いかに柔軟に、大人になってもスムーズに体を使うことができるかどうかというのが、優れた発声を行う際の重要なポイントとなります。
しかしながら大人になると、身長が低めの人もいれば高い人もいます。
今回記述しているこの内容からすると、身長の高い人の方が高い声を出すと言うことに対してデメリットが大きいのではないかと言う問題が生じてくるかもしれません。
実は身長が高いと、高い声が伸びづらいのは事実なのです。
私の感覚としては、男性の場合は身長が165センチから170センチ位までの方が高い声がのびのびと出やすい傾向にある感じを持っております。
逆に、身長が180センチを超えるような長身の男性の場合は高い声が太くなってしまいがちな印象を持っております。
また女性の場合も同じなのですが、女性の場合は身長が高すぎると言うケースは全体的に見ると少ないので、比較的高い声は伸びやすい傾向にあります。
あくまでも横隔膜と頭との距離が今回大事と考えておりますので、男女関係なく身長が高い低いで読み進めていただけると良いのかなと考えます。
では、身長が高い人は高い声が伸びにくいからボイストレーニングをしてもダメなのか?と言う疑問が聞こえてきそうですが、そんなことは全然ありません。
身長の高い人をイメージしてみると、日本人では福山雅治さんや布袋寅泰さんなどが例えとして適切なのかもしれませんが、お二人とも高い声は伸びていきません。
しかし中低音の音域の使い方はとても上手で、逆に身長が低い人のように高い声はのびのびと出しづらくても中低音の特徴は他の追随を許さないものがあります。
このように、歌唱力を上げるにあたってまず自分自身の体型、体格を受け止めて理解することは非常に大事なことです。
それによってボイストレーニングを行って将来どのような歌い方のポジションにもっていくのか…これをある程度、最初の段階で想像してイメージを高めていくことも重要なのです。
人にはそれぞれ声に個性がありますから、苦手なやり方もあれば得意なやり方もあるのです。
合理的に考えるとボイストレーニングは、生徒さんの最も得意なやり方の範囲での発声方法を極限まで引き出すことを考えなければなりません。
話がだいぶ脱線してしまいましたが(脱線しているようで実は脱線していませんが)、身長と言うところで考えると赤ちゃんにはあまり個体差がありません。
みんな同じ位の身長です。
つまり赤ちゃんはみんな同じ位高い声が出る、そして低い声はほとんどの子が出しづらい。
さらに言うと横隔膜と頭との距離感が近いので、あまり個性の差も声と言う点では生まれません。
舌も下顎の上に乗っかっているだけの状態なので、舌の発声状態における形状もあまり差がなく、ここでもキャラクターの差と言うものはあまり生まれません。
赤ちゃんから大人になっていくと、どんどん個体差と言うものが明確に出てきます。
個体差と言うものは個性であり、キャラクターであり、それは人間として生きていく上でも非常に大事なものであるでしょう。
究極的な言い方になりますが、声は赤ちゃんからおじいちゃんになったりおばあちゃんになったりするまでに、キャラクターが変容していくものだと考えてください。
そのように考えられるようになると、年齢と声は壮大な旅路の中にあるロマンでもあるのではないでしょうか。
(注)
大人の個体差については、身長だけではなく筋肉量や体の太さなども関係してきますので、身長はあくまでも声の高さや大きさについての個体差の大きな目安の1つとして考えてください。