発声で筋肉痛になる原因|力みとインナーマッスルの関係をプロが解説

    いつもボイストレーニング、お疲れ様です。

    今回は、「久しぶりに大きな声を出したら全身が筋肉痛になった。やはり力みが原因なのか?」というご質問をいただきましたので、回答と解説をしていきたいと思います。

    コロナ禍以降、「長期間歌っていなかったけれど久しぶりにカラオケに行ったら翌日ひどい筋肉痛になった」というご相談は非常に増えました。
    「自分は力んでいたのではないか」と不安になる方も多いのですが、実は力み以外にも大きな原因があります。

    先に結論からお伝えすると、発声時の力みは必ず少なからず生じますし、久しぶりの発声では筋肉痛になることは自然なことです。
    力みだけが原因ではなく、発声で使われるインナーマッスルが長期間使われなかったことで弱っていたことが大きな要因です。

    今回はインナーマッスルと発声の関係、筋肉痛が起こるメカニズム、そして久しぶりの発声で体を痛めないためのウォーミングアップ方法まで、詳しくお話ししていきます。

    目次

    いただいたご質問:久しぶりの発声で全身筋肉痛に

    ハンドルネーム:独居房の少女
    質問タイトル:発声に関する力み
    質問内容:

    発声に関する力みについて質問させてください。
    ここ最近コロナ禍で、なかなか声を出せない日々が続いていて、かなり久しぶり(1年ぶり)位に大きな声を歌で出してみました。
    こんなに大きな声を出したのは久しぶりだなと思って、その時はとっても気持ちが良かったのですが、翌日になって全身が痛くて痛くてしょうがありませんでした。
    これは明らかに筋肉痛だったんですけども、喉から足のつま先まで全部痛いような筋肉痛でほんとに大変でした。

    僕は以前にボイストレーニングを3年間も習っていて、力を抜く発声方法には自信があったのですが、これは僕が力んで声を出していたからこうなってしまったのでしょうか?
    それとも他に何か理由があってこのような筋肉痛が生じているのでしょうか?
    ぜひご教示いただければ幸いです。

    3年間もボイストレーニングをされていた方なので、発声の基本はしっかり身についていたはずです。
    にもかかわらず全身が筋肉痛になったということは、力みだけでは説明がつかない原因があります。

    順を追って詳しく解説していきましょう。

    発声における「力み」の本当の意味

    ボイトレでよく言われる「力まないで歌いましょう」というアドバイスですが、これは「一切力を入れるな」という意味ではありません。

    声を出すという行為には、必ず筋肉の働きが必要です。
    呼吸をするための筋肉、声帯を振動させるための筋肉、口を開けて言葉を形作るための筋肉――声を出すだけでもこれだけ多くの筋肉が関わっています。

    ボイトレで問題になる「力み」とは、発声に必要のない部分にまで余計な力が入ってしまう状態のことです。
    具体的には以下のような箇所です。

    • 肩・首 ――高音を出そうとすると無意識に力が入りやすい部位です
    • ――口を大きく開けようとして顎に力を込めてしまうケースがあります
    • 舌の奥(舌根) ――舌根に力が入ると喉が圧迫され、声の通りが悪くなります
    • ――胸で声を支えようとすると呼吸が浅くなりがちです

    こうした余計な力みは、発声効率を下げるだけでなく、喉への負担を増大させます。
    脱力と発声のコツについては別の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

    ただし今回のケースでは、質問者の方は3年間のボイトレ経験がありますから、力みだけが全身筋肉痛の原因とは考えにくいのです。

    発声で筋肉痛が起こる本当の理由

    1年間もの長い間、大きな声を出していなかったというのが最大のポイントです。
    結論から言えば、久しぶりの発声で筋肉痛になるのは、普段使われていないインナーマッスルが急に刺激されたからです。

    発声で使われる「2種類の筋肉」

    ここで大切なのは、発声では2種類の筋肉が使われるという点です。

    アウターマッスル(表層筋)
    体の表面に近い大きな筋肉です。腕を動かしたり歩いたりといった日常動作で常に使われています。
    発声でも使われますが、普段の生活で鍛えられているため、多少激しく歌った程度では筋肉痛にはなりにくいのが特徴です。

    インナーマッスル(深層筋)
    体の深い部分にある小さな筋肉群です。日常生活ではあまり使われず、発声時にこそ活躍する筋肉です。
    腹式呼吸で腹圧をコントロールする際に使う腹横筋や横隔膜、姿勢を安定させる多裂筋、骨盤底筋群などが該当します。

    発声、とりわけ大きな声や高い声を出す場合は、このインナーマッスルに大きな負荷がかかります。
    1年間使っていなかったインナーマッスルがいきなり本格的に刺激されたことで、全身に筋肉痛が出たというのが今回のメカニズムです。

    なぜ「全身」が痛くなるのか

    「喉から足のつま先まで」全身が痛くなったという点について、不思議に思われるかもしれません。
    しかし、これは発声の仕組みを考えると十分に説明がつきます。

    腹式呼吸で声を出す際、お腹の中の腹圧が上がったり下がったりを繰り返します。
    この腹圧の変動はお腹周りだけでなく、骨盤底筋を通じて足の筋肉へ、横隔膜を通じて背中や首の筋肉へと連鎖的に伝わります。

    つまり、発声は全身運動なのです。
    特にインナーマッスルは体の中心(体幹)から四肢へとつながるネットワークを形成しているため、発声による負荷が全身に広がるのは当然のことと言えます。

    「力み」と「筋肉痛」は別の問題

    ここで整理しておきたいのは、力みと筋肉痛は必ずしもイコールではないということです。

    • 力みによる痛み ――喉の痛み、首や肩のこわばりなど、発声に不要な部分に集中する傾向があります。発声直後から痛みを感じることが多いです
    • インナーマッスルの筋肉痛 ――全身に広がる筋肉痛で、翌日〜翌々日に出るのが典型的です。いわゆる「遅発性筋肉痛(DOMS)」と同じメカニズムです

    今回の質問者の方は「翌日になって全身が痛くなった」とのことですので、インナーマッスルの筋肉痛であった可能性が高いと考えられます。
    もちろん、1年のブランクで多少の力みが出ていた可能性もゼロではありませんが、それが主原因とは言いにくいでしょう。

    高い声・大きな声ほどインナーマッスルへの負荷が大きい

    同じ発声でも、声の出し方によってインナーマッスルへの負荷は大きく変わります。

    高い声や大きな声は、より多くの呼気圧(息の圧力)を必要とするため、腹圧のコントロールに関わるインナーマッスルへの負荷が一気に増大します。

    具体的な場面で言えば、以下のようなケースで負荷が大きくなります。

    • サビの高音を力強く歌う場面 ――特に地声で高い声を出そうとすると全身に力が入りやすくなります
    • ロングトーンで声を伸ばす場面 ――長く息を使い続けることで腹圧の維持時間が長くなり、インナーマッスルへの負担が増します
    • 声量を上げて歌う場面 ――カラオケで盛り上がって思い切り声を出すと、普段以上の呼気圧が必要になります

    ミックスボイスなどの歌唱方法では、適切な声帯の使い方によって効率的に高音を出すため、力みや負荷を軽減できます。
    しかしブランクが長いと、以前できていた歌唱方法の感覚が鈍っていることが多く、結果的に体への負荷が増えてしまうことがあります。

    発声とダイエットの関係――インナーマッスルの観点から

    ここで少し視点を変えて、発声とダイエットの関係についてもお話しします。

    「歌を歌うとダイエット効果がある」という話を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
    これはほぼ正解でして、発声によるインナーマッスルへの刺激がその根拠です。

    インナーマッスルは基礎代謝に深く関わる筋肉群で、ここが鍛えられると日常的なエネルギー消費量が増加します。
    腹式呼吸を使った発声練習は、このインナーマッスルを効果的に刺激するトレーニングとしても機能するのです。

    カラオケで1〜2時間歌い続けると、かなりのカロリーを消費すると言われています。
    これは単に声を出しているだけでなく、全身のインナーマッスルを使い続けているからこそ消費カロリーが大きくなるのです。

    逆に言えば、それだけの運動量があるからこそ、久しぶりに歌えば筋肉痛になるのも納得できますね。

    久しぶりの発声で筋肉痛を防ぐためのウォーミングアップ

    では、久しぶりに声を出す場合にどうすれば筋肉痛を最小限に抑えられるのか、具体的な方法をご紹介します。

    1. リップロールで喉と呼吸を準備する

    リップロールは、唇をブルブルと振動させながら声を出すエクササイズです。
    喉への負担が少なく、呼吸のコントロールとインナーマッスルのウォーミングアップを同時に行えます。

    久しぶりの発声前には、2〜3分間リップロールを行うだけでも体の準備状態が大きく変わります。
    低い音から始めて、少しずつ音域を上げていくのがポイントです。

    2. 腹式呼吸を意識したブレストレーニング

    腹式呼吸をゆっくりと繰り返すことで、横隔膜や腹横筋といったインナーマッスルを少しずつ目覚めさせることができます。

    具体的な手順としては以下の通りです。

    • 鼻からゆっくり4秒かけて息を吸い、お腹が膨らむのを確認する
    • 口から8秒かけてゆっくり息を吐き、お腹がへこむのを確認する
    • これを5〜10回繰り返す

    歌う前にこのブレストレーニングを行うだけで、腹圧のコントロールがスムーズになり、発声時のインナーマッスルへの急激な負荷を軽減できます。

    3. 小さい声・低い声から段階的に上げていく

    久しぶりに歌う時、最初からサビの高音を全力で歌うのは避けましょう。
    まずは話し声程度の音域・音量から始めて、15〜20分かけて徐々に声量と音域を広げていくのが理想的です。

    これはスポーツのウォーミングアップと全く同じ考え方です。
    いきなり全力疾走すれば筋肉を傷めるように、いきなり全力で歌えばインナーマッスルに過度な負荷がかかります。

    4. 休憩を挟みながら歌う

    カラオケで何時間も連続して歌い続けるのは、久しぶりの場合は特に避けた方がよいでしょう。
    2〜3曲歌ったら水分補給をしながら数分休憩を入れることで、インナーマッスルへの負荷が分散されます。

    ブランク後に発声力を取り戻すためのトレーニング

    ウォーミングアップで筋肉痛を軽減することはできますが、根本的にはインナーマッスルの筋力を取り戻すことが大切です。

    毎日の短時間練習が効果的

    週1回2時間歌うよりも、毎日10〜15分の発声練習を続ける方がインナーマッスルの回復には効果的です。
    インナーマッスルは持久力に優れた筋肉ですので、低負荷・高頻度のトレーニングが最も効率的に鍛えられます。

    自宅で声が出せない環境の方は、リップロールやハミングなど小さな音でできるエクササイズだけでも十分効果があります。

    脱力を意識した発声練習

    ブランクがあると、以前は自然にできていた脱力した発声の感覚が薄れていることがあります。
    肩の力を抜き、顎を楽にして、舌根を下げた状態で発声する感覚を改めて確認しましょう。

    鏡の前で歌い、以下のポイントをチェックするのがおすすめです。

    • 肩が上がっていないか
    • 首に筋(すじ)が浮き出ていないか
    • 顎が前に突き出ていないか
    • 表情がこわばっていないか

    これらの兆候が見られたら、力みが出ているサインです。
    一度発声を止めて、体をリセットしてからやり直しましょう。

    喉の筋肉痛と体の筋肉痛の違い

    最後に一つ大切なことをお伝えしておきます。

    今回の質問者の方のように全身が筋肉痛になるケースは、インナーマッスルの問題なのでそこまで心配はいりません。
    数日で回復しますし、定期的に歌っていれば次第に筋肉痛は起きにくくなります。

    しかし、喉だけが集中的に痛む場合は、力みによる喉への過負荷が原因である可能性が高いです。
    この場合は発声方法自体を見直す必要があります。

    喉の痛みが数日経っても引かない場合や、声がかすれて戻らない場合は、無理をせず声を休めてください。

    もし発声方法に不安がある場合は、ボイストレーナーに直接見てもらうのが最も確実です。
    ブラッシュボイスではボイトレ無料体験レッスンを実施していますので、力みや発声のクセが気になる方はお気軽にお試しください。

    まとめ

    今回は「久しぶりの発声で筋肉痛になるのは力みが原因か?」というご質問に回答しました。
    ポイントを整理すると以下の通りです。

    • 発声には必ず力が必要であり、完全な脱力では声は出せない
    • 久しぶりの発声で全身筋肉痛になるのは、インナーマッスルが長期間使われなかったことが主な原因
    • 高い声・大きな声ほどインナーマッスルへの負荷が大きくなる
    • リップロールや腹式呼吸のウォーミングアップで筋肉痛を軽減できる
    • 喉だけが痛む場合は力みの問題なので、発声方法の見直しが必要

    発声は全身運動です。
    久しぶりに歌う時はスポーツと同じように、ウォーミングアップをしっかり行ってから楽しんでください。

    また何かご不明な点があればいつでもご質問ください。

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