本記事の内容は『【ブラッシュボイス】青木亮のボイトレチャンネル』でも動画で解説していますので、今回の腹式呼吸の解説以外にも様々なノウハウをYouTubeにて動画で解説していますので、ご興味あれば是非ご視聴ください。

2004年 … ボイストレーニングスクール ブラッシュボイス創業。
2013年 … 一般社団法人日本ボイストレーナー連盟を設立。
ボイストレーナーを目指す方のための民間資格試験の実施、
勉強会を開催。
これまでに歌手、アナウンサー、声優など幅広いジャンルで約2,000名以上の方々にレッスンを実施。
自身がレッスンを行ってきた経験に基づき、YouTubeではボイストレーニング知識の共有、ノウハウの提供などを行っています。
質問や動画で取り上げてほしい事があればお気軽にYouTubeのコメント欄までコメント頂ければと思います。
今日は腹式呼吸についてやっていきたいと思います。
歌を歌われている方は特にそうだと思うんですけども、喋っていることに悩みを抱えている方もそうですね。
例えば、声を使うときに息が浅くて相手に声が届きづらいなとか、もっとハキハキ喋ってほしいのにハキハキ喋れないとか、そういうことで悩んでいる方、いらっしゃるんじゃないでしょうか。
そういう方はなおさら必見なんですけれども、特に歌をやられている方、腹式呼吸はとても重要ですので必ず覚えていただきたいと思います。
ではやっていきましょう。
腹式呼吸のメカニズム
まず結論から言って、腹式呼吸ができていない状態で喋ったり、もしくは歌ったりしても大きな発声能力の変化はまず得られないと思ってください。
これはもう断言できます。
それでは今から腹式の解説をしていきますけども、こちらのホワイトボードに書き込んでいきたいと思います。
まずは実践じゃなくて座学で学んでいきましょう。

これは人間の上半身です。
上半身の中には器官があって、肺があって、肺とくっついている状態でここに横隔膜というドーム状の硬い筋肉でできた膜が存在しています。
普段呼吸をするときは、この横隔膜が作用することによって肺を伸縮させて、息が出たり入ったりということが起こるわけです。
その下におへそがあります。
おへそは横隔膜の下にあります。
へそのちょうど横の方にある筋肉、これが実は「腹横筋」という筋肉で、この腹横筋を使っていきたいと思います。
この真ん中に走っている筋肉もありまして、これは「腹直筋」と言います。
この腹直筋を使って腹式呼吸をやるんだ、絶対にやるんだというボイストレーナーさん、すごく多いんですけども、はっきり言ってもう古いです。
腹直筋も使いますけど、もっと正確にやっていくのであれば、この腹横筋をイメージしてトレーニングしていってください。
では解説していきます。
腹式呼吸で息を吐くときは、この腹横筋を横にせり出した状態にします。
どういうことかというと、咳払いするとき、笑っているとき、あばら骨と骨盤のちょうど谷間あたり、おへその真横を親指で押さえてみる。
力を抜いて、ここがせり出してくるのが分かると思います。
このせり出している部分が腹横筋です。
腹横筋がせり出していると、腹直筋は前にへこむように基本的に連動してきます。
そうすると何が起こるかというと、横隔膜より下の方には臓器がいろいろありますけども、一番大きな臓器は大腸や小腸などです。
それらの臓器が引っ張られて前にへこんでくることでお腹の容積が縮まります。
内臓が圧迫されると、横隔膜はその反動で上にグッと上がってきます。
すると肺が圧迫されて、勢いのある空気が上の方に出ていく。
これが基本の理屈です。
息を吸うときはどうかというと、縮こまった容積を元に戻すだけ。
これで息は入ってきます。
それどうやるのかというと、腹横筋、それから腹直筋を少し横に出っ張らせている状態、つまり力んでいる状態です、この力みを一気に取るだけです。
力を抜く、緩める、完全に。
そうすると横隔膜も反動で下に下がってきて、肺の形状も元に戻り、空気は勝手にスーッと入ってきます。
このスピードはだいたい0.5秒くらいです。
ですから腹式呼吸を使うことで、例えばすぐに息を吸わなきゃいけない歌、そういう状況のときに非常に有効です。
すぐに吸って次のフレーズに行かなきゃいけない、でも時間がないという場合でも、0.5秒で吸えるわけです。
もう一つ聞いてほしいのが、腹式呼吸というのは縦の呼吸方法なんですね。
一方で、我々が普段行っている呼吸方法は「胸式呼吸」といいます。
胸式というのは深呼吸のような呼吸。
胸を大きく広げて閉じる。
ただし日常生活ではこんなに大きく広げることはありません。
例えば歩行している場合、胸の筋肉を横に伸ばして息を吸っている人がほとんどです。
だから胸式というのは横の作用による息の吸い方なんですね。
つまり横隔膜があまり作用しない、それが胸式呼吸のデメリットです。
腹式呼吸のメリットは、横隔膜を強烈に作用させられるという点です。
それは腹横筋の使い方によって大きく変わるということです。
腹式呼吸の練習方法
それでは実際の練習方法を紹介します。

あばら骨と骨盤の間、骨がないところを親指で押し込んでください。
力を抜いた状態でかなり強く押し込みます。
そのまま口を半開きにして「グッグッ」と息を吐いてみてください。
腹横筋が勢いよく横にせり出して、力を抜くと元に戻る。
「吐いて、吸って、吐いて、吸って」これが繰り返しできていればOKです。
腹横筋が動かない人は…
腹横筋が全然動かない、ずっと力んでいる状態の人は、寝そべって練習するのも効果的です。
仰向けに寝っ転がって、顔が上、足が下の状態で力を抜きます。
腹筋の部分を自分で押さえてみると、ぶよぶよの状態になっているはずです。
その状態で足を少し上げると、腹筋が一気に成立して「ガシッ」と広がってくると思います。

その状態が、直立時に腹式呼吸をしたときの腹横筋がせり出すMAXの感覚です。
できない人はコウスケくんのレッスン動画、下記に記載の第2回目のレッスン動画にて「足上腹筋運動」の解説をしているのであわせて参考にしてください。
腹式呼吸練習時の注意点
次に腹式呼吸を練習する際の注意点です。
実は腹式呼吸は、お腹まわりに筋肉があまりついていない人のほうが最初は覚えやすいんです。
腹直筋を鍛えてシックスパックにしたり、腹筋群を鍛えてカチカチにしていると、逆にお腹の筋肉が固まって動かしにくくなります。
ですので、筋トレよりも先に腹横筋の動かし方や腹直筋のへこみ具合を確認できる体の状態を作ることが大事です。
息を吐く時のポイント
最後に、息を吐くときのポイント。
口を大きく開けすぎて「ハッハッハッ」と吐く人がいますが、それは良くありません。
口は歯と歯の間に小指1本分くらいの隙間を保つ程度。
「あんぐり開ける」のではなく「フッ」と出すイメージで。
慣れてきたら手のひらを前に出して、息がきちんと手のひらに当たっていることを確認してください。
空気が上にいったり下にいったりする場合、音程を取るのが難しくなります。
息をまっすぐ吐くこと、そしてきれいな音で吐くことが重要です。
「フッフッ」ではなく「フッ」。
ハッハでもファッファでもない。
できている時の鋭い空気の音は誰がやっても同じ音になります。
動画でやっているような感じの音の感じで練習してみてください。
ブラッシュボイスでは無料体験レッスンを全国各地、オンラインでも実施しています。
独学でボイトレが難しい方は、レッスンでしっかりサポート可能です。
気になる方はぜひお気軽に無料体験レッスンにお申し込みください。