こんにちは。ブラッシュボイス・関東代表ボイストレーナーの鈴木智大です。
今回はリップロール(リップトリル)のやり方やコツについて、ボイストレーニングの観点から詳しく解説していきます。
「リップロールって聞いたことはあるけど、実際にやってみるとうまくできない…」という方、結構多いんですよね。
でも安心して下さい。正しいやり方とちょっとしたコツさえ掴めば、どなたでもできるようになります。
文章だけだと伝わらない部分もありますが、できるだけ分かりやすくお伝えしていきますので、ぜひ最後まで読んでみて下さい。
リップロール(リップトリル)とは?
リップロールの基本的な仕組み
リップロール(リップトリル)とは、軽く閉じた唇に息を送り込んで、唇を「ぶるるる~~」と振動させるボイストレーニングの基本エクササイズです。
イメージとしては、馬が「ぶるる~~」と唇を震わせている、あの感じに近いですね。子供の頃に遊びでやったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
一見すると単純な動作に思えますが、実はこのリップロール、呼吸のコントロール・唇周辺の脱力・声帯への負担軽減など、歌に必要な要素を同時にトレーニングできる非常に優れた練習なのです。プロのシンガーさんがライブ前の舞台袖でリップロールをされている光景は珍しくありません。
リップロールとリップトリルの違い
「リップロール」と「リップトリル」、名前が二つあって混乱される方もいらっしゃいますが、どちらも全く同じエクササイズを指しています。英語圏では「lip trill」と呼ぶことが多く、日本のボイトレ教室では「リップロール」と呼ぶのが一般的です。呼び方が違うだけですので、どちらで覚えて頂いても問題ありません。
※ボイトレにおけるリップトリルは、管楽器の奏法としてのリップトリルとは意味が異なりますのでご注意下さい。
リップロールのやり方|3ステップで解説
さて。ここからはリップロールの具体的なやり方をステップごとにお伝えしていきます。
しっかりやれば初めての方でも数分でコツを掴めることが多いですよ。
ステップ1:顔と唇の力を抜く
まず大事なのは、顔全体の余計な力を抜くことです。
口を軽く閉じて、唇はギュッと結ぶのではなく、自然に触れ合っている程度の状態にして下さい。赤ちゃんが眠っているときの口元をイメージすると分かりやすいかもしれません。顎にも力が入りやすいので、口を軽く開閉して顎の筋肉もほぐしておきましょう。
鏡を見ながらやると、無意識に力が入っている箇所に気づきやすくなります。
ステップ2:息だけでリップロールする
最初は声を出さず、息だけで唇を振動させるところから始めます。
- 鼻から軽く息を吸う
- 唇を軽く閉じたまま、「ブー」と息を前に送り出す
- 唇が「ぶるるる~~」と振動すれば成功です
最初から長く続ける必要はありません。まずは1~2秒でも唇が震えればOKです。息の量は「ろうそくの火を遠くからゆっくり揺らす」くらいのイメージで、強すぎず弱すぎない一定の圧力を意識して下さい。
ステップ3:声を乗せてリップロールする
息だけのリップロールが安定してきたら、次は声を乗せていきます。
- 息だけのリップロールを始める
- そのまま「ウー」と低めの声を出す
- 唇の振動を保ったまま、声を響かせる
声を出した瞬間に唇の振動が止まってしまう場合は、発声に意識が行きすぎて息の圧力が変わっている可能性があります。声は小さめから始めて、振動が安定してから徐々に音量を上げていきましょう。
腹式呼吸がしっかりできていると、息の圧力が安定しやすくなります。
腹式呼吸の基礎についてはこちらのページで詳しく解説しています。
腹式呼吸のやり方・練習方法について
リップロールができない原因と対処法
「やり方は分かったけど、やっぱりうまくできない…」という方もいらっしゃると思います。
リップロールができない場合、原因はだいたい決まっていますので、一つずつ確認してみて下さい。
唇に力が入りすぎている
最も多い原因がこれです。唇をしっかり閉じた方が振動しそうに思えますが、力が入るほど唇は硬くなり、振動しにくくなります。
唇を「ポカン」と半開きにした状態から、そっと閉じるくらいの力加減を意識してみて下さい。とにかく脱力です。
息の量が合っていない
息が強すぎると唇が一気に開いて「ブッ」と一瞬で終わってしまいます。逆に弱すぎると振動するだけの圧力に達しません。
コツは息の量を少なくすること。少ない息の量で唇をバタバタさせることができないという事は、表情が硬いということなんです。まずは少し強めに息を出して振動する感覚を掴み、そこから少しずつ息を減らして「ちょうどいいポイント」を探ってみて下さい。
頬を支えていない
唇だけで振動を維持しようとすると不安定になりがちです。両手の人差し指を口角のやや上あたりに当て、頬を軽く持ち上げるように支えてみて下さい。
これだけでリップロールが格段にやりやすくなる方が非常に多いです。慣れてきたら手を離しても同じ状態をキープできるようになりますので、最初は遠慮なく手を使って大丈夫ですよ。
唇が乾燥している
唇が乾燥していると摩擦が大きくなり、振動しにくくなります。リップクリームを薄く塗るか、練習前に水で唇を軽く湿らせてから行うと改善することがあります。意外と見落としがちなポイントです。
リップロールの効果|なぜボイトレの定番なのか
リップロールがこれだけ多くのボイストレーナーやプロのシンガーに取り入れられているのには、しっかりとした理由があります。
呼気コントロールが鍛えられる
リップロールを安定して続けるには、一定の圧力で息を吐き続ける力が必要です。この「息を安定させる力」は、歌唱時のロングトーンやフレーズの安定感に直結します。
息が続かない、フレーズの最後で声が揺れる、といった悩みを持つ方にとって、リップロールは呼気コントロールを鍛える最適なエクササイズです。慣れれば大きな力を発揮する練習ですよ。
声帯への負担が少ないウォーミングアップになる
リップロールは唇が振動のクッションとなるため、声帯に過度な負担をかけずに発声の準備ができます。いきなり大声で歌い始めると声帯を傷める原因になりますが、リップロールから始めることで声帯を徐々に温めることができるのです。
ハミングも声帯に優しいウォーミングアップとしておすすめです。
ハミングの練習方法 音の高さ・息漏れ・喉の状態、振動のチェックについて
表情筋が柔らかくなる
歌うときに顔や顎に余計な力が入ると、口の開きが小さくなったり発音が不明瞭になったりします。リップロールを実施すると表情筋が柔らかくなります。
表情筋が柔らかくなることで口角も上がりやすく、ピッチが取りやすくなるだけではなく、表情豊かに感情表現ができるようになります。
滑舌の改善にも効果がありますので、滑舌が悪い原因と改善トレーニングも合わせてご確認下さい。特に高音を出そうとすると顔に力が入りやすい方は、リップロールで脱力の感覚を身につけることが有効です。
リップロールの練習時間と頻度の目安
「リップロールは何秒やればいいの?」「毎日やるべき?」という質問をよく頂きます。ここでは目安をお伝えしますね。
目標は30秒|秒数の目安
リップロール(リップトリル)は30秒くらい続けて欲しいのです。
30秒…少し長いと思われるかもしれませんね。でも少ない息の量でリップロールをやることで、30秒、さらにはそれ以上も可能なのです。最初は5~10秒を1セットとして3~5セットから始め、慣れてきたら1セット15秒、20秒と延ばしていきましょう。
ロングブレスが30秒できる方は、息のみのリップロールも30秒以上を目安にしてみて下さい。声を使ったリップロールも同じく30秒を目標にしていきましょう。
毎日の練習に取り入れるには
リップロールは声帯への負担が少ないため、毎日行っても問題ありません。ボイトレの練習前のウォーミングアップとして2~3分、歌の練習をしない日でも1~2分やるだけで効果が期待できます。
朝の支度中や移動中(声を出さない息だけバージョンなら周囲を気にせずできます)など、日常のすきま時間に取り入れると習慣化しやすくなりますよ。自宅や外出先でも気軽にできるボイトレの一つですね。
リップロールを歌の上達につなげるために
リップロールは単体でも効果のあるエクササイズですが、歌の上達につなげるにはいくつかのポイントを意識することが大切です。
練習曲のメロディでリップロールする
ウォーミングアップとしてのリップロールに慣れてきたら、練習中の曲のメロディをリップロールでなぞってみて下さい。歌詞を発音する負荷がない分、音程の動きと呼吸の配分に集中できます。
苦手なフレーズやブレスが足りなくなる箇所をリップロールで練習すると、息の使い方の課題が見えてきます。
高音域の練習にも活用する
高い声を出すときに力んでしまう方は、リップロールで高音域を出す練習が有効です。
発声練習の目的と役割でもリップトリルを使ったウォーミングアップを音源付きで解説していますので、合わせてご活用下さい。リップロール中は唇のクッション効果で声帯への圧力が分散されるため、地声では出しにくい音域でもリラックスした状態で発声しやすくなります。
まずリップロールで高音を出す感覚を掴み、その脱力した状態を覚えた上で実際の発声に応用していく、というステップが効果的です。
裏声・ファルセットの練習と組み合わせると、高音域の表現がさらに広がります。
裏声・ファルセットの出し方・コツや練習方法まとめ
タングトリルと組み合わせる
リップロールと並んでボイトレの基本エクササイズとして挙げられるのがタングトリル(巻き舌)です。リップロールが唇を振動させるのに対し、タングトリルは舌先を上顎に当てて振動させます。「トゥルルルル…」という音が出るあの練習ですね。
リップロールは唇周辺の脱力に、タングトリルは舌の柔軟性に重点があります。どちらか片方だけでも効果はありますが、両方を練習メニューに組み込むと口周り全体のコントロール力が向上します。タングトリルがどうしてもできないという方は、まずリップロールをしっかりマスターしてから挑戦するのがおすすめです。
タングトリルの詳しいやり方はこちらで解説しています。
タングトリル(巻き舌)のやり方・コツについて
まとめ|リップロールは毎日の習慣にしたい基礎練習
この記事のポイント
- リップロール(リップトリル)は唇を振動させるボイトレの基本エクササイズ
- やり方のコツは脱力と少ない息の量
- できない場合は唇の力み・息の量・頬のサポート・乾燥をチェック
- 呼気コントロール向上・声帯保護・表情筋の柔軟化に効果あり
- 目標秒数は30秒。毎日2~3分で十分効果が期待できる
独学に限界を感じたら
リップロールは自宅でも手軽にできるエクササイズですが、「正しくできているか分からない」「リップロールはできるけど歌に活かせていない」という声も少なくありません。
なかなか文字だけだと伝わらない部分が多いかもしれません。何かご質問がありましたらお気軽にご質問頂くだけでも構いません。ブラッシュボイスでは60分の無料体験レッスンも行っておりますので、ご興味がありましたらぜひ一度お越し下さい。
腹式呼吸やハミングといった基礎練習についても、あわせて読んで頂けると練習の幅が広がります。
腹式呼吸のやり方・練習方法について
ハミングの練習方法について
ブラッシュボイス・関東代表ボイストレーナー 鈴木智大
