こんにちは。
ブラッシュボイス・関東代表ボイストレーナーの鈴木智大です。
GLAYと言えば、1990年代から現在に至るまで日本のロックシーンを牽引し続ける、日本を代表するバンドの一つです。
「HOWEVER」「BELOVED」「誘惑」など数々の名曲を生み出し、世代を超えて多くのファンに愛されています。
今回はそんなGLAYのボーカリストであるTERUさんの歌について、ボイストレーナーの視点からじっくりとお話していきたいと思います。
TERUさんの声にはどんな特徴があるのか、なぜあれほど心地よく聴けるのか、そしてその歌い方から私たちが学べることは何なのか。
一つひとつ紐解いていきましょう。
TERUさんの声質の特徴|「癒し」の正体は倍音にあった
TERUさんの声はずっと聴き続けても不快になりません。飽きません。
ずっとBGMとして流していても、空気のように自然にそこにあるような声質です。
ではなぜTERUさんの声はこれほど心地よいのでしょうか。
そこには人間の感じる「癒し」の秘密があります。
それを倍音という概念からご説明します。
整数次倍音と非整数次倍音の違い
まず「倍音」とは、基音(一番低い音)に対して整数倍の周波数で鳴る音のことです。
人の声にはこの倍音が含まれており、その含まれ方によって声の印象が大きく変わります。
倍音は大きく分けて整数次倍音と非整数次倍音の2種類があります。
整数次倍音が多い声は、カリスマ性や説得力があると言われています。
演説やプレゼンテーションで人を惹きつけるタイプの声です。
アーティストで言えば、力強くクリアな歌声を持つボーカリストに多い傾向があります。
一方、非整数次倍音が多い声は、癒しや安心感を感じさせると言われています。
聴いていて心がリラックスし、自然と耳に馴染んでくるような声質です。
TERUさんは非整数次倍音が豊かなボーカリストです。
だからこそ、GLAYの楽曲を何曲続けて聴いても疲れることがなく、むしろ心地よさが増していくのです。
ハスキーボイスと伸びのある声の共存
TERUさんは過去にたばこを辞められたことでも知られています。
禁煙後は声に伸びが出てきたと言われていますが、あの独特のハスキーボイスは健在です。
このハスキーさこそが非整数次倍音の源泉でもあります。
声帯が完全にぴったりと閉じるのではなく、わずかに息が漏れることでハスキーな成分が加わり、それが非整数次倍音を生み出しているのです。
低音域では優しく響き、高音域やテンポ感の良い曲では力強さも兼ね備えている。
にもかかわらず、どこか安心して聞き入ってしまう。
これがTERUさんの声の最大の魅力と言えるでしょう。
ボイトレで倍音をコントロールすることは可能か
ボイトレによって声の質感をコントロールすることはある程度可能です。
息の量や声帯の閉じ具合を意識的に調整することで、整数次倍音寄りの声と非整数次倍音寄りの声を使い分けられるようになります。
例えば、しっかりと声帯を閉じて芯のある声を出せば整数次倍音が強調され、やや息を混ぜて柔らかく出せば非整数次倍音が増えます。
曲やメロディによって使い分けてみるのも、表現の幅を広げる良い方法ではないでしょうか。
TERUさんの歌い方の特徴|フレーズの終わり方に注目
ロックアーティストの中でも、特にTERUさんのフレーズの終わり方は独特です。
ビブラートできれいに終わることもあるのですが、ほとんどが伸ばさずに、息を押し出して脱力して終わるスタイルです。
これは「フォールオフ」とも呼ばれるテクニックで、フレーズの最後に音程をふわっと落として抜いていく歌い方です。
ご本人にとっては昔からのクセなのかもしれませんが、リスナーからするとそれがTERUさんの特徴であり、最大の魅力でもあるのです。
フォールオフが生む「抜け感」の効果
フォールオフには、楽曲に独特の「抜け感」を与える効果があります。
ロックバンドのサウンドは、ギターやドラムの音圧が高く、ともすると歌まで力みがちになりやすいジャンルです。
しかしTERUさんは、フレーズの終わりで力を抜くことで、楽曲全体に「呼吸」を生んでいます。
この緩急のバランスが、GLAYの音楽に聴き疲れしない心地よさをもたらしているのです。
ボイトレの視点から見ると、フォールオフは脱力のコントロールが重要です。
意図的に力を抜くには、まず正しい発声の基礎ができている必要があります。
土台がしっかりしているからこそ、「抜く」という表現が成立するのです。
クセは個性になる|自分の歌い方を否定しないで
こういったクセが個性としてそのボーカリストの魅力になることは少なくありません。
音程やリズムが大きく狂ってしまうようなクセは改善が必要ですが、
他の人にはないクセで悩んでいるボーカリストの方は実はとても多いのです。
しかし、むやみにクセを直そうとする必要はありません。
逆にそれが最大の魅力ポイントになる可能性も高いのです。
TERUさんのフォールオフがまさにその好例でしょう。
大切なのは、自分では判断しにくい「良いクセ」と「改善すべきクセ」を見極めることです。
むしろ悩んだら担当のボイストレーナーに相談して、客観的に判断してもらいながらボイトレを続けていくことをおすすめします。
TERUさんに学ぶ高音域の出し方
TERUさんの楽曲には、高音域を要求される曲が多くあります。
「HOWEVER」のサビや「BELOVED」のロングトーンなど、安定した高音が求められる場面が頻繁に登場します。
ではTERUさんはどのようにして、あの安定した高音を出しているのでしょうか。
地声と裏声のバランス
TERUさんの高音域をよく聴くと、完全な地声でもなく、完全な裏声でもない、両方の要素がバランスよく混ざった声であることが分かります。
これはいわゆるミックスボイスと呼ばれる歌唱方法に近いアプローチです。
地声の芯を残しながら、裏声の軽さやしなやかさを加えることで、無理なく高音を出すことができます。
ただし、TERUさんの場合は先ほどお話しした非整数次倍音が豊かな声質のため、ミックスボイスであっても独特の柔らかさが加わります。
同じ歌唱方法を使っていても、声質によって出来上がるサウンドは大きく異なるのです。
高音で力まないためのポイント
TERUさんの高音に共通しているのは、力みが少ないということです。
多くのボーカリストは高音域になると力が入りすぎて、喉を締めてしまいがちです。
しかしTERUさんは、高音でもフレーズの終わりにフォールオフを入れるなど、常に脱力を意識した歌い方をしています。
これは喉への負担を減らすうえでも非常に理にかなったアプローチです。
ボイトレで高音域を練習する際にも、この「力まない」という意識はとても大切です。
まずは楽に出せる音域から徐々に広げていき、無理のない範囲で高音を伸ばしていくことをおすすめします。
TERUさんの楽曲から学ぶ表現力
TERUさんの歌には、テクニックだけでなく「表現力」という大きな魅力があります。
ここではGLAYの代表曲を例に、TERUさんの表現の特徴を分析してみましょう。
バラードでの繊細な表現
「HOWEVER」や「BELOVED」といったバラード楽曲では、TERUさんの繊細な一面が際立ちます。
Aメロでは息を多めに混ぜた優しい声で歌い、サビに向かって徐々に声量と芯を増していく。
このダイナミクス(強弱)のコントロールがTERUさんのバラードの聴きどころです。
ボイトレではこのダイナミクスの練習が非常に重要です。
小さな声でもしっかりと響かせる技術と、大きな声でも力みすぎない技術。
この両方を身につけることで、楽曲の表現の幅が大きく広がります。
アップテンポ曲での力強さ
一方、「誘惑」や「SOUL LOVE」のようなアップテンポの楽曲では、TERUさんはまた違った一面を見せます。
テンポに乗ったリズミカルな歌い方でありながら、やはりフレーズの終わりには独特のフォールオフが入ります。
力強さと抜け感の絶妙なバランスが、聴く人を心地よく乗せてくれるのです。
アップテンポの曲を歌う際によくある失敗は、テンポに追われて力んでしまうことです。
TERUさんのように「力を入れるところ」と「抜くところ」を明確に意識することで、聴きやすく魅力的な歌になります。
TERUさんのようなハスキーボイスを活かすボイトレ
TERUさんのようなハスキーボイスを持っている方は、それを「弱点」と捉えてしまうことがあります。
しかし先ほどお話しした通り、ハスキーさは非整数次倍音の源であり、聴く人に癒しを与える大きな武器です。
ハスキーボイスの活かし方
ハスキーボイスを活かすポイントは以下の通りです。
1. 息の量をコントロールする
ハスキーな声質はそのままに、息の量を調整することで声の「濃さ」を変えられます。
息を多めにすれば囁くような優しい声に、息を絞ればハスキーでありながら芯のある声になります。
2. 喉に無理な力を入れない
ハスキーボイスの方が無理に声を張ろうとすると、喉を傷めるリスクがあります。
自分の声質に合った発声を見つけることが大切です。
3. マイクとの距離感を意識する
ハスキーボイスは近接効果(マイクに近づくほど低音が強調される効果)と相性が良い声質です。
曲の場面によってマイクとの距離を変えることで、ハスキーさの加減を調整できます。
ビブラートとフォールオフの使い分け
TERUさんの歌い方の特徴として、ビブラートとフォールオフの使い分けがあります。
ロングトーンで伸ばす場面ではきれいなビブラートを使い、短いフレーズやテンポの速い部分ではフォールオフで処理する。
この使い分けが楽曲に変化と奥行きを与えています。
ビブラートの練習は正しいやり方で行うことが重要です。
喉を揺らすのではなく、横隔膜の動きを利用した自然なビブラートを身につけましょう。
GLAYの楽曲を上手に歌うためのボイトレポイント
最後に、GLAYの楽曲を上手に歌いたい方に向けて、ボイトレのポイントをまとめます。
1. まず原曲をよく聴き込む
TERUさんがどこで力を入れ、どこで抜いているかを意識して聴いてみてください。
フレーズの終わり方、息継ぎのタイミング、声質の変化に注目することが大切です。
2. 自分の声域を把握する
GLAYの楽曲は高音域が多く登場します。
無理に原曲キーで歌うのではなく、まずは自分が楽に出せるキーに下げて練習しましょう。
正しい発声が身についてから、徐々にキーを上げていくのが効果的です。
3. フレーズの「抜き」を意識する
TERUさんの最大の特徴であるフォールオフを真似してみましょう。
フレーズの終わりで意識的に力を抜く練習をすることで、歌全体に自然な流れが生まれます。
4. 脱力した高音を練習する
ミックスボイスなどの歌唱方法を学ぶことで、力まずに高音を出すコツが掴めます。
TERUさんのように自然で伸びやかな高音を出すためには、正しい発声の土台作りが欠かせません。
5. 自分らしさを大切にする
TERUさんの歌い方を参考にしつつも、最終的には自分自身の声と個性を活かすことが一番大切です。
完全なコピーではなく、良いエッセンスを取り入れながら自分だけの歌を見つけていきましょう。
まとめ|TERUさんの歌から学べること
今回はGLAYのボーカリストTERUさんの歌い方について、ボイストレーナーの視点から解説してきました。
TERUさんの歌の魅力を改めて整理すると、以下のようになります。
・非整数次倍音による癒しの声質:ハスキーボイスが生み出す、聴き疲れしない心地よさ
・フォールオフによる独特の抜け感:フレーズの終わりに力を抜くことで生まれるTERUさんらしさ
・力みのない高音:地声と裏声のバランスが取れた自然な高音域
・ダイナミクスの巧みなコントロール:バラードからアップテンポまで、楽曲に合わせた強弱の使い分け
これらの要素は、どれもボイトレを通じて身につけていくことが可能です。
もちろんTERUさんと全く同じ声を出すことはできませんが、その歌い方の「考え方」や「アプローチ」は、すべてのボーカリストにとって大きなヒントになるはずです。
ブラッシュボイスでは、ボーカリストさんの個性をくずさないようにボイトレ・レッスンを行っております。
TERUさんのような歌い方を目指したい方も、自分だけの歌声を見つけたい方も、一人ひとりに合ったレッスンでお手伝いさせていただきます。
是非一度、ボイトレ無料体験レッスンにお越し下さい。
株式会社ブラッシュボイス
関東代表ボイストレーナー/鈴木 智大

