こんにちは。ブラッシュボイスです。
演劇や舞台を志す方にとって、発声練習は基礎中の基礎です。稽古場で「あえいうえおあお」という掛け声を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
しかし、なんとなく声を出しているだけでは、なかなか効果を実感できないものです。正しいやり方を知っているかどうかで、上達のスピードは大きく変わってきます。
今回は、演劇・舞台で求められる発声練習の方法を、基礎から実践メニューまで丁寧にご紹介していきます。声優やアナウンサーを目指す方にも役立つ内容です。
文章だけではどうしてもお伝えしきれない部分もありますが、できるだけわかりやすくお話ししますので、ぜひ最後までお付き合い下さい。
演劇・舞台の発声練習が一般的なボイトレと違う理由
舞台では「遠くまで届く声」が求められる
歌のボイトレではマイクを通して歌うことが前提ですが、演劇や舞台ではマイクなしで客席の最後列まで声を届ける必要があります。小さな劇場であっても、感情のこもったセリフを観客全員に届けるには、ただ大きな声を出すだけでは不十分です。
喉だけで無理に声量を上げようとすると、すぐに声が枯れてしまいます。身体全体を使って声を「響かせる」技術を身につけることが、舞台に立つうえでの大前提になります。怒鳴るような発声ではなく、身体の中で声を増幅させるイメージを持って頂くとわかりやすいかもしれません。
よく「お腹から声を出す」と言いますが、これはまさに身体を楽器のように使うということです。腹式呼吸で安定した息を送り、口や鼻の空間で共鳴させることで、無理なく遠くまで届く声が生まれます。この感覚は一朝一夕では身につきませんが、正しい発声練習を続けることで必ず体得できます。
中低音域の響きと表現力がカギ
舞台での発声は、歌のように極端に高い音を出す場面は少なく、普段の話し声に近い中低音域が中心になります。この音域でいかにクリアに、そして感情を込めて響かせられるかが、演劇における発声の大きなポイントです。
地味に感じるかもしれませんが、中低音域をしっかり鍛えることで表現の幅がぐっと広がります。囁くようなセリフから力強い叫びまで、同じ音域の中でも声の質感を変えられるようになるのが理想です。声優やアナウンサーを目指す方にとっても、この中低音域の安定した響きは不可欠な要素です。
滑舌と発声はセットで鍛える
演劇の現場では、声の大きさだけでなく「言葉がはっきり聞こえるかどうか」も非常に重要です。いくら声が通っていても、何を言っているかわからなければ演技は観客に伝わりません。
そのため、舞台の発声練習では発声と滑舌を切り離さず、常にセットで意識していくことが大切です。発声練習の方法を選ぶ際にも、声の響きと言葉の明瞭さの両方を同時に鍛えられるメニューを取り入れていきましょう。
「滑舌」という言葉はもともとアナウンサーの業界用語で、文字通り舌を滑らかに動かすことを指します。日本語のほとんどの音は舌の位置や動きで決まりますので、舌の動きを意識した練習が滑舌改善の近道になります。
発声練習の土台|腹式呼吸をマスターしよう
なぜ腹式呼吸が必要なのか
演劇・舞台の発声練習を始める前に、まず身につけて頂きたいのが腹式呼吸です。胸で浅い呼吸をしていると、声の支えが弱くなり、長いセリフを安定して届けることが難しくなります。
お腹の底から息を使うイメージで呼吸することで、声に芯が生まれ、遠くまで通る声の土台ができます。舞台俳優にとって腹式呼吸は「できたほうがいい」ものではなく、「できなければ始まらない」と言っても過言ではありません。
腹式呼吸の詳しいやり方については、こちらの記事で解説しています。
腹式呼吸のやり方と効果
腹式呼吸の基本練習
まずは仰向けに寝た状態で、お腹が自然に膨らむ感覚を確認してみて下さい。仰向けの状態では誰でも自然と腹式呼吸になりますので、この感覚を覚えておくことが大切です。立った状態でも同じようにお腹を使えるようになることが目標になります。
息を吐くときに「スーーー」と細く長く出す練習を行うと、息のコントロール力が身につきます。最初は10秒、慣れてきたら20秒、30秒と伸ばしていきましょう。この練習は場所を選ばずにできますので、通学や通勤の合間にも取り組むことができます。
呼吸の安定感がすべての発声練習の土台になります。焦らずじっくり取り組んで頂ければと思います。
もうひとつおすすめの練習として、息を「ハッ、ハッ、ハッ」と短く強く吐く練習があります。これはお腹のインナーマッスルを意識するのに効果的で、セリフの中で瞬間的に声量を上げたいときの土台になります。長く吐く練習と短く吐く練習を交互に行うと、息のコントロールの幅が広がります。
「あえいうえおあお」の正しいやり方と効果
「あえいうえおあお」とは何か
「あえいうえおあお」は、演劇の世界で広く使われている五十音の発声練習です。「あ行」から「わ行」まで、すべての行を同じパターンで発声していきます。
具体的には以下のような順番です。
あえいうえおあお
かけきくけこかこ
させしすせそさそ
たてちつてとたと
なねにぬねのなの
…(わ行まで続く)
通常の「あいうえお」の並びではなく、母音の順番を「あ→え→い→う→え→お→あ→お」と変えているのがポイントです。この並びによって、口の形の切り替えを素早く正確に行うトレーニングになっています。単純に見えますが、実際にやってみると口が思うように動かないことに気づく方も多いはずです。
正しいやり方の4つのポイント
ただ早口で読み上げればよいわけではありません。以下の4つのポイントを意識して下さい。
1. 一音一音をはっきり発音する
最初はゆっくりで構いません。「あ」「え」「い」…と、一つひとつの音を丁寧に口を開けて発声しましょう。速さは後からついてきます。まずは正確さを最優先にして下さい。
2. 口の形を大きく動かす
「あ」は縦に大きく開く、「い」は横にしっかり引く、「う」は唇を前に突き出す。母音ごとの口の形をはっきり作ることが、滑舌改善に直結します。鏡を見ながら練習すると、自分の口の動きを客観的に確認できるのでおすすめです。
3. 腹式呼吸を意識する
お腹から息を送り出しながら発声します。喉に力が入っていないか、常にチェックして下さい。声が喉で詰まる感覚がある場合は、一度深呼吸をしてからやり直してみましょう。
4. 姿勢を正して行う
背筋を伸ばし、顎を少し引いた状態で行います。身体が丸まっていると、お腹から息がスムーズに流れません。壁に背中をつけて立つと、正しい姿勢の感覚をつかみやすくなります。
苦手な行を重点的に練習する
全行を通して練習したら、自分が詰まりやすい行や発音が曖昧になる行を見つけて下さい。たとえば「さ行」や「ら行」が苦手という方は非常に多いです。「た行」と「な行」が混ざってしまうという方もいらっしゃいます。
苦手な行は2〜3回繰り返し練習することで、特定の子音の発声が着実に改善されていきます。全行を1回通すよりも、苦手な行を集中的に繰り返すほうが効率的ですので、毎日の練習メニューに組み込んで頂くと効果的です。
舞台俳優が実践する定番の発声練習メニュー
北原白秋「五十音」
「あめんぼ赤いなあいうえお」から始まる、北原白秋の有名な詩です。各行に対応した美しい日本語で構成されており、発声・滑舌・リズム感を同時に鍛えることができます。
声に出して読むだけでも練習になりますが、腹式呼吸を意識しながら、一文字一文字を丁寧に響かせることを心がけて下さい。演劇部や劇団の稽古でも定番中の定番として使われている教材です。暗記して、いつでもどこでも練習できるようにしておくと便利です。
外郎売(ういろううり)
演劇の世界では暗記して練習するのが定番とも言える、歌舞伎十八番のひとつです。早口言葉や普段使わない言い回しが満載で、滑舌の総合トレーニングとして非常に優れています。プロの俳優や声優の養成所でも必ずと言っていいほど取り上げられる教材です。
最初は原稿を見ながらゆっくり読むところから始め、徐々にスピードを上げていきましょう。全文はかなりの長さがありますので、段落ごとに区切って少しずつ覚えていくのがおすすめです。暗記できるようになると、口の動きや発声そのものに意識を集中できるようになります。
外郎売で特に意識したいのは、意味を理解しながら読むことです。意味がわかると自然と抑揚がつき、単なる滑舌練習を超えた「伝える発声」のトレーニングになります。
早口言葉トレーニング
「生麦生米生卵」「隣の客はよく柿食う客だ」「東京特許許可局」「赤巻紙青巻紙黄巻紙」など、おなじみの早口言葉も立派な発声練習の方法のひとつです。
ポイントは、速さよりも正確さを優先することです。はっきり発音できるスピードから始めて、少しずつテンポを上げていくのが効果的です。言い間違えたら速度を落として、正確に言えるまで繰り返して下さい。自分で言いづらい言葉の組み合わせを見つけて、オリジナルの早口言葉を作ってみるのもよいトレーニングになります。
声の響きを高めるボイトレテクニック
ハミングで共鳴の感覚をつかむ
口を閉じた状態で「ん〜」と声を出すハミングは、声の響きを体感するのにとても効果的な練習です。鼻のあたりや額のあたりがビリビリと振動する感覚があれば、うまく共鳴できている証拠です。
この振動の感覚を維持したまま口を「ま〜」と開けて発声すると、共鳴を伴ったよく通る声になります。舞台で遠くまで声を届けるために欠かせない「響き」の感覚を、ハミングを通して体得していきましょう。
ハミングについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧下さい。
ハミングの効果と練習方法
リップロールで脱力を身につける
唇をブルブルと震わせながら声を出すリップロールは、喉の力みを取るのに最適なウォーミングアップです。演劇の発声において喉の力みは大敵ですので、練習前のウォーミングアップとして取り入れることをおすすめします。
リップロールがスムーズにできるようになると、喉がリラックスした状態で声を出す感覚がつかめます。最初はうまく唇が震えないかもしれませんが、頬を軽く手で押さえるとやりやすくなりますので試してみて下さい。
リップロールの詳しいやり方はこちらで解説しています。
リップロール(リップトリル)のやり方
裏声トレーニングで声の表現幅を広げる
舞台で感情を表現する場面では、普段より高い声が必要になることもあります。裏声をコントロールする練習をしておくと、表現の引き出しが増えます。
また、裏声と地声の切り替えを滑らかに行えるようになると、セリフの中で自然に声のトーンを変化させられるようになります。感情の起伏が大きいシーンでの演技力向上にもつながりますので、ぜひ取り組んでみて下さい。日常的に裏声で歌を歌ってみるだけでも、少しずつ声域は広がっていきます。
裏声の出し方については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
裏声の出し方とコツ
日常でできる発声練習の取り入れ方
朝のルーティンに組み込む
発声練習は毎日少しずつ続けることが何より大切です。朝の5〜10分をルーティンにするだけでも、1ヶ月後には確実に変化を感じられるようになります。
おすすめの朝練メニューは以下の通りです。
1. 腹式呼吸で深呼吸(1分)
2. リップロール(1分)
3. ハミング(1分)
4. 「あえいうえおあお」全行通し(3〜5分)
5. 苦手な行の反復練習(2分)
これだけで約10分です。朝一番に声を出すことで、一日を通して声の調子が良くなる効果も期待できます。大きな声が出せない環境の場合は、小さな声でも口の形をしっかり作ることを意識するだけでも十分に効果があります。
モノマネで表現力を磨く
これは意外に思われるかもしれませんが、モノマネは表現力を養う優れたトレーニングです。好きな俳優さんやタレントさんの話し方を真似してみて下さい。
声のトーン、話すスピード、間の取り方、感情の込め方など、言葉では説明しきれない多くの要素を体感的に学ぶことができます。似ているかどうかは気にしなくて大丈夫です。「観察して再現しようとする」というプロセスそのものが、表現力のトレーニングになっています。
身近な人の話し方でも構いませんし、映画やドラマのセリフを真似するのもよい練習です。恥ずかしがらずに、楽しみながら取り組んでみて下さい。
発声練習を行う際の注意点
発声練習で最も気をつけて頂きたいのは、間違ったやり方で続けてしまうことです。自己流で長期間練習してしまうと、気づいたときには改善が難しい癖がついてしまっている可能性があります。
喉が痛くなる、声がかすれるといった症状がある場合は、発声方法に問題があるサインです。無理をせず練習を中断し、正しいフォームを見直して下さい。
また、練習前には必ずウォーミングアップを行い、練習後にはクールダウンとして軽いハミングや深呼吸を行うことで、喉への負担を軽減できます。特に演劇・舞台の発声はプロの指導のもとで基礎を固めることが、結局は一番の近道です。
ブラッシュボイスのボイトレ無料体験レッスン
いかがでしたでしょうか。演劇・舞台の発声練習は、腹式呼吸を土台にした「あえいうえおあお」をはじめ、ハミングやリップロール、外郎売など、さまざまな方法を組み合わせて行うことが効果的です。
ただ、文章でお伝えできることには限界があり、自分ひとりでは正しくできているか判断しづらい部分も多いのが発声練習の難しさでもあります。身体の使い方や声の響かせ方は、実際にプロに声を聞いてもらいながらフィードバックを受けることで格段に上達します。自分では気づけない癖や改善点を的確に指摘してもらえるのが、プロの指導を受ける最大のメリットです。
ブラッシュボイスでは、演劇や舞台を目指す方にも対応したボイストレーニングを行っています。ボイトレ無料体験レッスンで、あなたの声の状態をプロのトレーナーが診断し、最適な練習方法をご提案致します。
演劇・舞台の発声についてお悩みの方、まだボイトレを試されたことのない方も、ぜひお気軽にお申し込み下さい。
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