こんにちは。
ブラッシュボイス・関東代表ボイストレーナーの鈴木智大です。
今回は若手演歌歌手の山内惠介さんの歌い方について、ボイトレの観点から徹底解説していきたいと思います。山内惠介さんと言えば、氷川きよしさんの後輩にあたる演歌界期待の星。その甘いマスクと伸びやかな歌声で幅広いファン層を獲得しています。
山内惠介さんの歌声の最大の特徴は、芯のあるまっすぐなビブラートと、楽曲を彩る繊細なピッチベンドのテクニックです。これらは一朝一夕で身につくものではありませんが、正しいボイトレを積み重ねることで確実にレベルアップできます。
今回の記事では、山内惠介さんの歌唱から学べるポイントを余すところなくお伝えしていきますので、演歌に限らず歌の表現力を高めたいと考えている方もぜひ最後まで読んでみてください。
山内惠介さんの歌声の魅力とは
山内惠介さんは2001年にデビューして以来、「風蓮湖〜摩周湖」「愛が信じられないなら」「唇スカーレット」など数々のヒット曲を世に送り出してきました。その歌声には、演歌の伝統的な美しさと現代的な親しみやすさが同居しています。
ボイストレーナーの視点から見ると、山内惠介さんの歌には大きく分けて以下のような特徴があります。
①低音域でも芯がブレない安定したビブラート
②音程を微妙にずらして表情をつけるピッチベンド
③腹式呼吸に支えられた伸びのあるロングトーン
特に演歌では、ビブラートの美しさが楽曲全体の印象を左右すると言っても過言ではありません。山内惠介さんのビブラートは派手に揺らすタイプではなく、芯を保ちながらまっすぐ伸ばす中に自然な揺れが加わるスタイルです。これが聴く人の心に染み入るような温かさを生み出しています。
演歌の歌い方全般について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考になります。
演歌の歌い方|ボイストレーナーが教えるレベルアップのコツ
山内惠介さんの芯のあるまっすぐなビブラート
演歌ではビブラートがキレイで魅力的な歌手が多いですが、山内惠介さんの声も同じように、まっすぐ伸びやかに歌い上げるのが大きな特徴です。
特に注目すべきは低音域でのビブラートです。低い音域でしっかりと胸に響かせ、声に厚みを出しているのが聴き取れます。低音のビブラートは高音に比べて難易度が高く、息の支えが不十分だと声がぼやけてしまいがちです。山内惠介さんはそこをしっかりとコントロールしています。
芯のあるビブラートを身につけるためのボイトレ
この芯のあるまっすぐなビブラートを習得するためのコツを、段階を追って説明していきます。
ステップ1:腹式呼吸の安定
まずはすべての土台となる腹式呼吸をしっかり身につけましょう。ビブラートは息の流れの上に成り立つ技術です。腹式呼吸が安定していないと、ビブラートをかけようとしても声が不安定になってしまいます。
仰向けに寝転んで呼吸すると、自然と腹式呼吸になります。その感覚を立った状態でも再現できるように練習してみてください。お腹が膨らむ感覚、そしてゆっくりと息を吐くときにお腹がへこんでいく感覚を意識しましょう。
ステップ2:胸の響きを意識する
腹式呼吸ができるようになったら、次は胸に手を当てながら発声し、振動を感じるトレーニングを行います。低音を出したときに胸がビリビリと振動する感覚があれば、胸声(チェストボイス)がしっかり出ている証拠です。
山内惠介さんの低音域の豊かさは、このチェストボイスの響きが土台になっています。「あー」とロングトーンで発声しながら、胸の振動を確認してみましょう。
ステップ3:音を揺らすトレーニング
胸の響きが感じられるようになったら、いよいよ音を揺らす練習に入ります。
ここでのポイントは非常に重要です。音を揺らそうとするあまり、顎が動いてしまったり、お腹が揺れたりしないように注意しましょう。顎を動かして音を揺らすのは「ちりめんビブラート」と呼ばれ、聴いていて不安定な印象を与えてしまいます。
あくまでもお腹は通常の発声と同じように使い、喉の開閉で音を揺らすよう意識してボイトレを行ってください。最初はゆっくりとした揺れから始め、慣れてきたら少しずつスピードを上げていくのが効果的です。
ビブラートの練習方法についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事も合わせてご覧ください。
ビブラートの出し方|ボイトレで身につける練習方法
山内惠介さんのビブラートの特徴的なポイント
山内惠介さんのビブラートをさらに細かく分析すると、いくつかの特徴的なポイントが見えてきます。
①ビブラートの振幅が一定
揺れの幅が大きくなったり小さくなったりせず、一定のリズムで安定しています。これは息のコントロールが非常に優れている証拠です。
②フレーズの最後に自然にかかるビブラート
歌い出しからビブラートをかけるのではなく、フレーズのロングトーン部分で自然にビブラートが立ち上がってきます。これが「まっすぐ伸びやかに歌い上げる」印象を作り出しています。
③低音でも高音でもビブラートの質が変わらない
音域が変わってもビブラートの美しさが保たれています。これは発声の基礎がしっかりしていなければ実現できないことです。
同じ演歌系のビブラートテクニックとして、坂本冬美さんの歌い方も非常に参考になります。
坂本冬美さんのビブラートの出し方を解説
山内惠介さんのピッチベンドについて
皆さん、ピッチベンドというテクニックはご存知でしょうか?楽器を嗜んでいる方であればわかる方も多いと思います。ギターのチョーキングやシンセサイザーのピッチベンドホイールと同じ原理で、歌においても非常に効果的な表現技法です。
直訳すると「音程を曲げる」という意味です。本来の音よりも高い音、もしくは低い音から入って正しい音を出すテクニックのことを指します。しゃくり上げやフォールとも共通する部分がありますが、ピッチベンドはより微細な音程変化を指すことが多いです。
言葉だけで説明するととても分かりづらいため、実際の楽曲を例にして解説していきたいと思います。
「愛が信じられないなら」に聴くピッチベンドの実例
山内惠介さんの「愛が信じられないなら」という楽曲には、ピッチベンドのテクニックが随所に散りばめられています。
まず最初の入り、Aメロの「あなたの背中」という歌詞に注目してください。この「背中」の「せ」の音をよく聴いてみましょう。
いかがでしょうか?
一聴すると声が震えているようにも感じますが、よく聴くと少し高い音から入って正しい音に調整して発声しているのです。この微妙な音程の移り変わりが、歌に表情や感情の深みを加えています。
その他にも、サビの「愛が信じられないなら」の「ら」と「ない」の「な」でもピッチベンドが確認できます。
さらに注目すべきは、サビの最後の部分「一人になればいい」の「ば」です。この「ば」については、正しい音を発音し、すぐに少し高い音にズラし、またすぐに正しい音に戻るという、非常に高度なピッチベンドを駆使しています。わずかコンマ数秒の間にこれだけの音程操作を行うのは、相当なテクニックです。
ピッチベンドの種類
ピッチベンドにはいくつかのパターンがあります。山内惠介さんの楽曲の中にも複数のパターンが見られます。
①上からのアプローチ
本来の音より高い音から入り、正しい音に下げるパターンです。「背中」の「せ」がこのタイプに当たります。切なさや哀愁を表現するのに効果的で、演歌では特に多用されるテクニックです。
②下からのアプローチ(しゃくり)
本来の音より低い音から入り、正しい音にすくい上げるパターンです。歌に勢いや力強さを加えたいときに効果を発揮します。カラオケの採点機能で「しゃくり」としてカウントされるのはこのタイプです。
③往復型のピッチベンド
「一人になればいい」の「ば」のように、正しい音→高い音→正しい音と往復するパターンです。非常に高度なテクニックで、ビブラートに近い効果を生みますが、意図的に1回だけ音を揺らすという点でビブラートとは区別されます。
ピッチベンドを練習するためのボイトレ
ピッチベンドは音を揺らすという、かなり高い歌唱技術が必要になってきます。いきなりピッチベンドの練習に取り組むよりも、まずはビブラートを習得してから挑戦する方が、スムーズに身につけられるはずです。
その理由は、ビブラートもピッチベンドも「音程を意図的にコントロールする」という点で共通しているからです。ビブラートで音を連続的に揺らすことに慣れれば、その揺れを1回だけ、しかも狙ったタイミングで行うピッチベンドにも応用しやすくなります。
具体的な練習方法としては、以下のステップがおすすめです。
ステップ1:半音の上下を意識する
ピアノやキーボードアプリを使い、ある音とその半音上の音を交互に出す練習をしましょう。「ド→ド♯→ド」という具合です。最初はゆっくり、慣れてきたらスピードを上げていきます。
ステップ2:なめらかに移行する
ステップ1では音が階段状に変わりますが、ピッチベンドでは音をなめらかにスライドさせるのがポイントです。「ド」から「ド♯」に移るとき、パッと切り替えるのではなく、滑るように音程を変化させましょう。
ステップ3:楽曲の中で実践する
山内惠介さんの「愛が信じられないなら」を実際に歌いながら、先ほど解説したポイントでピッチベンドを入れてみましょう。最初は大げさでも構いません。感覚を掴んだら徐々にさりげなく入れられるよう調整していきます。
山内惠介さんの歌唱に学ぶロングトーンの重要性
ビブラートやピッチベンドを支えるもう一つの重要な要素が、ロングトーンの安定感です。山内惠介さんの歌を聴くと、フレーズの最後で音を長く伸ばす場面がたくさんあります。そのロングトーンが非常に安定しており、だからこそビブラートが美しく響くのです。
ロングトーンが不安定だと、ビブラートをかけても揺れがバラバラになり、聴いていて心地よくない印象を与えてしまいます。逆に、ロングトーンがしっかりしていれば、その上に乗るビブラートも自然と美しくなります。
ロングトーンを安定させる練習
ロングトーンを安定させるために意識したいポイントは3つです。
①息の量を一定に保つ
声を伸ばしている間、息の量が変わらないように意識しましょう。最初に息を使いすぎると後半で声が細くなりますし、逆に最初に息を節約しすぎると声に力がなくなります。一定の息の流れを維持するためには、やはり腹式呼吸が欠かせません。
②喉を開いた状態をキープする
ロングトーンの途中で喉が閉まってしまうと、声質が変わったり声が途切れたりします。あくびをするときのように喉を開いた状態を維持することを意識しましょう。
③体の力みを取る
肩や首に力が入っていると、長く声を伸ばすことが難しくなります。リラックスした状態で声を出せるよう、発声前に軽くストレッチをするのも効果的です。
まずは「あー」という母音で10秒間安定してロングトーンを出す練習から始めてみてください。10秒が安定したら15秒、20秒と少しずつ伸ばしていきましょう。
演歌ならではの表現力を高めるボイトレのヒント
山内惠介さんの歌い方から学べることは、ビブラートやピッチベンドだけにとどまりません。演歌全体に通じる表現力のポイントをいくつかご紹介します。
こぶしとビブラートの違い
演歌でよく使われる「こぶし」は、ビブラートと混同されがちですが、実は異なるテクニックです。ビブラートは音を細かく均等に揺らす技術であるのに対し、こぶしは音を装飾的に回す技術です。
山内惠介さんの歌唱では、こぶしよりもビブラートが主体となっていますが、フレーズによっては軽いこぶしを入れている部分もあります。両方のテクニックを使い分けられるようになると、演歌の表現の幅が一気に広がります。
声の強弱(ダイナミクス)の使い方
山内惠介さんの歌を注意深く聴くと、フレーズごとに声の強さを細かく変えていることが分かります。Aメロでは比較的抑えめに歌い、サビに向かって徐々にボリュームを上げていく。そして最も盛り上がるポイントで力強く歌い上げ、その後すっと引くような表現をしています。
このダイナミクスのコントロールも、腹式呼吸と喉のリラックスがしっかりできていなければ実現できません。すべての表現テクニックは発声の基礎に支えられているということを覚えておいてください。
言葉の一つひとつを大切にする歌い方
山内惠介さんの歌唱で特に印象的なのは、歌詞の一語一語を非常に丁寧に発音していることです。演歌は歌詞の世界観を伝えることがとても大切なジャンルです。言葉をはっきりと聴かせながらも、メロディの流れを損なわない。この絶妙なバランス感覚は、多くの歌い手にとって参考になるはずです。
ボイトレでは「滑舌」のトレーニングとして取り組みますが、ただ滑舌が良ければいいというわけではありません。歌としての流れを大切にしながら、必要な言葉をしっかり届けるという意識が重要です。
ビブラートやピッチベンド まとめ
ここまで山内惠介さんの歌い方をボイトレの観点から詳しく解説してきました。改めて重要なポイントをまとめます。
●芯のあるビブラートは腹式呼吸と胸の響きが土台
顎やお腹を揺らすのではなく、喉の開閉で音を揺らすことがポイントです。
●ピッチベンドは歌に表情と感情の深みを加えるテクニック
ビブラートをしっかり練習した上で取り組むと習得しやすくなります。
●ロングトーンの安定がすべての土台
息の量を一定に保ち、喉を開いた状態をキープすることが大切です。
●こぶし・ダイナミクス・言葉の表現力も合わせて磨く
技術だけでなく、歌詞を大切にする姿勢が演歌の表現力を高めます。
ビブラートやピッチベンドは、すぐにできるようになる方はとても少ないため、地道なトレーニングが必要です。できないからと言って肩を落とす必要はありません。少しずつボイトレを積み重ねていき、喉を器用に使えるようにしていきましょう。
ビブラートの基礎から学び直したい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
ビブラートの出し方|ボイトレで身につける練習方法
このような細かいテクニックについて、ブラッシュボイスではその人に合ったトレーニング方法を丁寧にレクチャーしております。ビブラートの揺れ方の癖や声質の特徴は一人ひとり異なりますので、個別にアドバイスを受けることで上達のスピードが大きく変わります。ぜひ一度、ボイトレ無料体験レッスンにお越しください。
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関東代表ボイストレーナー/鈴木 智大

