シャウトの出し方|喉を痛めずに力強い声を出すコツと練習法
こんにちは。ブラッシュボイス・関東代表ボイストレーナーの鈴木智大です。
「シャウトを出してみたいけど、喉を壊しそうで怖い……」
「見よう見まねで叫んでみたら、すぐに声が枯れてしまった……」
こういったご相談、レッスンでも少なくありません。シャウトはロックやパンク、メタル系の楽曲で欠かせない歌唱テクニックですが、やり方を間違えると声帯を傷めるリスクが高い技術でもあります。
でも、安心して下さい。正しい仕組みを理解して、段階を踏んで練習すれば、喉を痛めずにシャウトを出せるようになります。逆に言えば、基礎をすっ飛ばして力任せに叫ぶことだけは絶対に避けて頂きたいのです。
この記事では、シャウトの出し方・やり方を基礎から順を追って解説します。がなり声やデスボイスとの違い、ボイトレでの具体的な練習法、そして練習時に気をつけるべき注意点まで、一通りお伝えしていきますね。
シャウトとは――叫び声を歌に活かす歌唱テクニック
シャウトとは、ひとことで言えば「叫び声」を歌の中に取り入れる歌唱テクニックです。基本的には表声(地声)をベースに、強い呼気で声帯に負荷をかけることで、ノイジーで荒々しい声を生み出します。
ライブのMCで場を盛り上げる掛け声として使うボーカリストも多いですし、楽曲のサビやクライマックスで感情を爆発させるために使われることもあります。B’zの稲葉浩志さんやONE OK ROCKのTakaさんの歌を思い浮かべると、イメージしやすいかもしれません。
シャウトの仕組み――なぜ喉を痛めやすいのか
シャウトで声がノイジーになる理由は、強い息の圧力によって声帯が通常よりも激しく振動し、いわば「声が割れた」状態になるからです。これは意図的に声帯へ大きな負荷をかけている状態ですので、やり方を誤ると声帯を傷つけてしまいます。
だからこそ、シャウトを安全に出すためには「息の力で声帯を鳴らす」という感覚が不可欠です。喉の力だけで無理に叫ぶのではなく、お腹からしっかり押し上げた息を使って声帯を振動させる。この違いが、喉を壊すシャウトと長く使えるシャウトの分かれ道になります。
シャウトを出す前に身につけておくべき基礎
さて。ここからシャウトの具体的な出し方に入っていきたいのですが、その前にとても大切なことをお伝えします。
シャウトの練習に入る前に、腹式呼吸と共鳴の基礎を必ず身につけて下さい。
これは本当に「急がば回れ」です。基礎ができていない状態でシャウトに挑戦すると、喉だけに負担が集中して、声帯を痛めるどころか声が出なくなってしまうケースもあります。
腹式呼吸がシャウトの土台になる理由
シャウトには通常の発声よりも強い呼気が必要です。この「強い息」を喉ではなくお腹で生み出すのが腹式呼吸の役割です。
身体感覚としては、お腹の底から空気を押し上げるようなイメージです。風船を下からグッと押しつぶして、一気に空気を吐き出す感覚に近いかもしれません。この「息の土台」がないと、足りない息の力を喉の締め付けで補おうとしてしまい、すぐに声が枯れてしまいます。
腹式呼吸のやり方について詳しく知りたい方は、腹式呼吸の練習方法の記事をご覧下さい。
共鳴を使って声を効率よく響かせる
シャウトは大音量で叫ぶイメージが強いですが、実は「大きな声を出す」こと自体が目的ではありません。共鳴を活かして声を効率よく響かせることで、喉への負担を抑えながら力強い声を出すことが大切です。
鼻腔や口腔の共鳴がしっかり使えていると、無理に声量を上げなくても「通る声」「存在感のある声」が出せます。逆に共鳴が使えていないと、同じ音量を出すために喉に何倍もの負荷がかかってしまいます。
表声の安定が最低条件
シャウトは基本的に表声(地声)で行います。ですので、まず表声そのものが安定していることが前提になります。自分の表声のトップの音(最高音)がどこまで出せるかを把握しておきましょう。
表声が不安定な状態でシャウトに挑戦すると、声が裏返ってしまったり、音程がまったくコントロールできなくなったりします。焦らず、まずは通常の発声を整えることから始めて下さい。
シャウトの出し方・コツ
基礎が整っていることを前提に、ここからシャウトの具体的な出し方をお伝えしていきます。
ステップ1:強い呼気を作る――ドッグブレスの活用
シャウトには強い息の圧力が必要です。まずは息を強く・素早く吐く力を鍛えましょう。そこで取り入れて頂きたいのが「ドッグブレス」です。
ドッグブレスとは、犬が走った後に「ハッハッハッハッ」と息をするように、スタッカートでアタックの強い息を出すトレーニングです。お腹を使えていないと絶対にできませんので、腹式呼吸の確認にもなります。
練習手順:
- 背筋を伸ばしてリラックスした姿勢を取る
- 「ハッハッハッハッハッ」と短く鋭い息を連続で吐く(1セット10回程度)
- お腹が弾むように動いているか確認する
- 慣れてきたら「ハッハッハッハッハーーー」と最後を長く伸ばす
- 最後の「ハーーー」はなるべく強く、息を吐ききるまで行う
この「最後に伸ばす」部分が、シャウトの呼気に直結します。お腹の底から押し出すような感覚を身体で掴んで下さい。
ステップ2:喉の閉め具合を探る
ドッグブレスで強い呼気が作れたら、次は声を乗せていきます。ここが最も重要なポイントです。
シャウトでは、通常の発声よりも喉をわずかに閉め気味にします。強い呼気と、この「わずかに閉めた喉」のバランスが取れたときに、声帯が独特の振動をしてノイジーなシャウト声が生まれます。
身体の感覚で言うと、重い荷物を持ち上げるときに自然と「うっ」と声が漏れる、あの喉の感覚に近いです。ただし、これを力いっぱいやるのではなく、ほんの少しだけ喉を閉じるイメージです。
試し方:
- 自分の表声の最高音付近の音を決める(例:A4など)
- 母音「あ」でその音をまっすぐ伸ばしてみる
- 声を出しながら、喉をほんの少しだけ閉め気味にしてみる
- 「あ゛ー」とノイズ混じりの声が出れば成功
閉めすぎると声が裏返ったり、詰まったりします。閉め加減が足りないと、ただの大声になってしまいます。この「ちょうどいい塩梅」を見つけるのがシャウトのコツで、正直なところ文章だけでお伝えするには限界があります。感覚的な微調整が必要な技術ですので、最初はうまくいかなくても焦らず、少しずつ探ってみて下さい。
ステップ3:短いフレーズから始める
ノイズ混じりの声が出せるようになったら、いきなり長いフレーズで使うのではなく、短い発声から練習を始めましょう。
- 「あ゛っ!」と一瞬だけシャウトする
- 安定したら「あ゛ーーー」と2〜3秒伸ばす
- 慣れてきたら好きな楽曲のサビの一部分で試す
短い発声で感覚を掴んでから徐々に伸ばしていくのが、喉を守りながら上達するための鉄則です。
シャウトとがなり声・デスボイスの違い
シャウトと混同されやすいテクニックに「がなり声」と「デスボイス」があります。似ているようで仕組みが異なりますので、整理しておきましょう。
がなり声との違い
がなり声は、声帯を強く閉鎖した状態で発声することで生まれる、ガラガラとした質感の声です。シャウトが「叫び」のニュアンスであるのに対して、がなり声はもう少し抑えた音量でも使える表現技法です。
ポップスやR&Bでも感情を込めるために使われることが多く、シャウトに比べると喉への負担はやや軽い傾向にあります。がなり声について詳しく知りたい方は、がなり声の出し方の記事で解説していますので、ぜひ併せてお読み下さい。
デスボイスとの違い
デスボイスはデスメタルなどで使われる極端に歪んだ声で、仮声帯(かせいたい)と呼ばれる声帯の上にある組織を振動させて出すとされています。シャウトが表声ベースであるのに対して、デスボイスはまったく異なるメカニズムで発声します。
シャウトの延長線上にあるように思われがちですが、発声の仕組みが根本的に違いますので、シャウトが上手くなったからといってデスボイスが出せるわけではありません。
使い分けのポイント
どのテクニックを使うかは、楽曲のジャンルや表現したい感情によって変わります。
- シャウト:爆発的な感情表現、ライブでの盛り上げ、サビのクライマックス
- がなり声:抑えた中での感情表現、泣きのニュアンス、幅広いジャンルで使用可能
- デスボイス:ヘヴィメタル・デスメタル系の楽曲に特化した表現
まずはシャウトとがなり声の違いを体感できるようになると、表現の幅がぐっと広がりますよ。
シャウトのボイトレで気をつけるべき注意点
シャウトは喉への負担が大きいテクニックです。練習の際は以下の注意点を必ず守って下さい。何度でも言いますが、ここは本当に大事です。
練習時間を厳守する
一回のシャウト練習は長くても30分以内にして下さい。一日に複数回練習する場合は、一回を10分以内に抑え、練習と練習の間に最低1時間は声を休ませましょう。
喉に違和感を感じたら、その時点で即座に練習を中止して下さい。「もうちょっとだけ」の無理が声帯の損傷につながります。喉の疲れ・違和感について解説した記事も参考にして頂ければと思います。
ウォーミングアップを必ず行う
いきなりシャウトから始めるのは、準備運動なしで全力ダッシュするようなものです。必ず通常の発声練習やリップロール、ハミングなどでウォーミングアップを行ってからシャウトの練習に入りましょう。
目安としては10〜15分程度のウォーミングアップを行い、喉が十分にほぐれた状態で始めるのが理想です。
水分補給とケアを怠らない
シャウトの練習中はこまめに水分を取って下さい。声帯は乾燥すると傷つきやすくなります。常温の水を手元に置いておくのがおすすめです。冷たい飲み物は喉の筋肉を収縮させてしまうので避けましょう。
練習後は声をなるべく使わず休ませること。翌日に声がかすれるようであれば、練習強度が高すぎるサインです。
シャウトの練習に役立つ補助トレーニング
シャウトそのものの練習だけでなく、土台となる発声力を底上げするトレーニングも併せて行うと、より安全に、より早く上達できます。
ファルセット(裏声)の練習
「シャウトなのに裏声?」と不思議に思われるかもしれませんが、ファルセット(裏声)の練習はシャウトの上達にも関係しています。裏声の練習をすることで、声帯の柔軟性が高まり、表声と裏声の切り替えがスムーズになります。声帯のコントロール力が向上すると、シャウト時の喉の閉め具合もより繊細に調整できるようになるのです。
腹式呼吸の強化トレーニング
腹式呼吸が基礎として大切だとお伝えしましたが、シャウトに必要な呼気の強さは通常の発声よりもかなり高いレベルが求められます。
おすすめの強化メニューとしては、ティッシュを壁に押し当て、息だけで落ちないように支え続けるトレーニングがあります。遊び感覚でできますが、お腹の使い方がしっかり問われる練習です。
ロングトーンで息の安定性を高める
一つの音を長くまっすぐ伸ばすロングトーンの練習は、息の圧力を一定に保つ力を養います。シャウトで声がぶれたり途中で途切れたりする方は、ロングトーンの安定性が不足しているケースが多いです。
「アー」で10秒、15秒と息が続く限り伸ばす練習を、毎日のウォーミングアップに組み込んでみて下さい。
まとめ
この記事でお伝えしたシャウトの出し方のポイントを整理します。
- 基礎が最優先:腹式呼吸・共鳴・表声の安定をまず身につける
- 強い呼気を作る:ドッグブレスで息を強く吐く力を鍛える
- 喉の閉め具合を探る:わずかに閉め気味にして「ちょうどいい塩梅」を見つける
- 短いフレーズから段階的に:一瞬の発声から徐々に伸ばしていく
- 練習時間を厳守する:一回30分以内、喉に違和感を感じたら即中止
- 補助トレーニングも活用する:ファルセットやロングトーンで発声力の土台を強化する
シャウトは正しいやり方で練習すれば、喉を痛めずに習得できる歌唱テクニックです。ただし、文章でお伝えできることには正直なところ限界があります。喉の閉め具合や息の圧力のバランスは、実際に声を聴いてもらいながら調整するのが最も確実で安全です。
「自分のやり方が合っているのかわからない」「練習しているけど声が枯れてしまう」という方は、一度プロのトレーナーに見てもらうことを検討して頂ければと思います。ブラッシュボイスでは無料体験レッスンを行っておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
株式会社ブラッシュボイス 関東代表ボイストレーナー/鈴木智大
