米津玄師さんのように楽に高音を歌い上げる方法とは

    こんにちは。ブラッシュボイス・関東代表ボイストレーナーの鈴木智大です。

    レッスンで「米津玄師さんのように歌いたい」というリクエストをいただくことが、ここ数年でとても増えました。
    男性の生徒さんはもちろん、女性の方からも「あの独特な声の雰囲気を出したい」と相談を受けることがあります。

    米津玄師さんの歌声は、低音域の深みのある響きから高音域の伸びやかさまで、非常に幅広い表現力を持っています。「自分には無理だ」と感じてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、安心して下さい。
    米津さんの歌い方にはいくつかの明確な特徴があり、それを一つずつ理解して練習していけば、近い表現ができるようになっていきます。

    この記事では、米津玄師さんの声の出し方や高音のコツ、代表曲ごとの歌い方、そして段階的な練習法まで、なるべく分かりやすくお伝えしていきます。
    文章だけだと伝わりにくい部分もありますが、身体の感覚をイメージしながら読んでいただければと思います。

    目次

    米津玄師の歌い方──3つの大きな特徴

    まず、米津玄師さんの歌声がなぜあれほど魅力的に聞こえるのか。その要素を整理してみましょう。

    ① 低音域の深い響きと「チェストボイス」の安定感

    米津さんの歌い方で最初に注目したいのは、低音域の豊かな響きです。
    「Lemon」のAメロや「感電」のイントロ部分を聴くと分かりますが、低い音域でも声が薄くならず、胸のあたりにしっかり響いている印象を受けます。

    これはチェストボイス(胸声)がしっかり鳴っている状態です。
    イメージとしては、胸の真ん中に手を当てて「んー」とハミングしたとき、手にビリビリと振動が伝わってくる感覚です。
    この振動を感じられるようになると、低音域に芯が出てきます。

    レッスンでも「米津さんの低音が出せない」とおっしゃる方が多いのですが、実は音域自体はそこまで低くないことが多いんです。
    響きの「深さ」が足りないだけで、チェストボイスの練習をすると見違えるように変わる方がたくさんいらっしゃいます。

    ② ミックスボイスによる滑らかな高音

    米津さんの歌の最大の特徴と言えるのが、地声から高音域へ移行するときの滑らかさです。
    普通であれば「ここから裏声に切り替わったな」と分かるポイントがあるものですが、米津さんの場合はその境目がほとんど感じられません。

    これがいわゆるミックスボイス(地声と裏声の中間的な歌唱方法)と呼ばれるテクニックです。
    地声の力強さを保ちながら、裏声の柔軟性も活かして高音を出していく歌い方ですね。

    身体感覚でたとえると、あくびをするときのように喉の奥を縦に開きながら、同時におでこの方向に声を飛ばしていくようなイメージです。
    喉を締め付けて高い声を絞り出すのではなく、空間を広げて声を「通す」感覚に近いと思います。

    ミックスボイスについて詳しく知りたい方は、ミックスボイスの練習方法を解説したページもご確認下さい。
    基本的な仕組みから段階的なトレーニング法まで紹介しています。

    ③ 表現力豊かなビブラートとストレートトーンの使い分け

    米津さんの歌い方をよく聴いていると、ロングトーン(長く伸ばす音)でビブラートをかける箇所と、あえてまっすぐに伸ばす箇所を意図的に使い分けていることに気づきます。

    たとえば「Lemon」のサビ最後の「ウェッ」という揺れは、自然に声が揺らぐ程度の繊細なビブラートです。
    一方で「KICK BACK」のサビではストレートに突き抜けるような声の使い方をしています。
    この切り替えが楽曲ごとの「色」を作っているんですね。

    ビブラートの練習方法については、ビブラートのやり方・かけ方まとめや、ビブラートとこぶしの違い・練習法を解説したページも参考にして頂けると思います。

    また、米津さんの歌声そのものの魅力については米津玄師の歌声分析|ヒットの秘密をボイトレ視点で解説でも詳しく分析しています。

    米津玄師の高音を出すために必要な3つの土台

    さて。米津さんのような高音を目指すとなると、いきなりサビの高い音を出そうとする方が多いのですが、それだとどうしても喉を締めてしまいがちです。
    まずは土台をしっかり作ることが大切です。

    土台① 腹式呼吸で息の支えを作る

    高音を安定して出すために最も重要なのが、息の支えです。
    米津さんの歌声が高音域でもブレないのは、しっかりとした呼吸のコントロールがあるからだと考えられます。

    腹式呼吸のイメージとしては、お腹の前だけでなく、腰回り全体——ちょうどウエストに浮き輪を巻いているような感覚で360度膨らませる呼吸です。
    吸ったときにお腹だけがポコッと出るのではなく、脇腹や背中側にも広がりを感じられると理想的ですね。

    腹式呼吸の詳しいやり方については、腹式呼吸の基礎を解説したページをご確認下さい。

    土台② 喉を開くフォームを身につける

    「喉を開く」という表現はボイトレでよく使われますが、具体的にどういう状態かイメージしにくいですよね。

    一番分かりやすいのは、「ホッ」と温かい息を手に吹きかけるときの喉の状態です。
    このとき、喉の奥が自然と広がっているのを感じられると思います。
    この開き具合を保ったまま声を出していくことで、詰まりのない伸びやかな高音が出しやすくなります。

    米津さんの楽曲は音域が広いので、この「喉を開いたフォーム」がないと、高音部分で力んでしまったり、声が細くなってしまったりしがちです。

    土台③ ファルセット(裏声)の質を上げる

    「ミックスボイスを習得したい」という方にまずお伝えしているのが、裏声をしっかり鍛えましょうということです。これは少し意外に感じるかもしれません。

    ミックスボイスは地声と裏声の「混合」ですから、裏声の筋力が弱いままだと、地声に引っ張られて結局「叫び声」のような高音になってしまいます。
    息漏れの少ない、芯のある裏声をまず作ることが、ミックスボイスへの近道です。

    ファルセット(裏声)の具体的な練習方法は、ファルセットの出し方を解説したページにまとめてありますので、併せてご覧頂ければと思います。

    代表曲で学ぶ!米津玄師の歌い方──曲別ポイント解説

    ここからは、米津さんの代表曲を取り上げて、それぞれの歌い方のポイントを解説していきます。
    実際にレッスンでも課題曲として扱うことが多い楽曲です。

    「Lemon」──感情の起伏をダイナミクスで表現する

    「Lemon」は米津さんの代表曲であり、カラオケでも非常に人気の高い楽曲です。
    音域はそこまで広くないのですが、歌いこなすには繊細なコントロールが求められる、実は難易度の高い曲です。

    ポイント①:Aメロの「語り」のような歌い方

    Aメロは抑えめのトーンで、まるで誰かに語りかけるように歌われています。
    ここで大事なのは息を混ぜたウィスパー気味の発声です。完全な地声でハキハキ歌ってしまうと、この曲の世界観が壊れてしまいます。
    イメージとしては、ろうそくの炎を揺らさないくらいの優しい息遣いで声を乗せる感覚です。

    ポイント②:サビの「あの日の悲しみさえ」のロングトーン

    サビに入ると声量が上がりますが、ここでいきなり全力で張り上げるのではなく、徐々に声を膨らませていくのがコツです。
    風船を少しずつ膨らませるように、息の量を段階的に増やしていくイメージですね。
    「悲しみさえ」の「え」の部分では自然なビブラートが入ると、より米津さんの歌い方に近づきます。

    ポイント③:「ウェッ」のニュアンス

    Lemonの代名詞とも言える「ウェッ」という声の引っ掛け。
    これは声帯を瞬間的に閉じて開く「グロッタルストップ(声門閉鎖)」というテクニックに近いものです。
    いきなり真似しようとすると喉を痛めることもあるので、まずは「え?」と軽く驚いたときに出る声の感覚から練習してみて下さい。

    「KICK BACK」──攻めの発声でパワフルに

    チェンソーマンの主題歌として話題になったこの曲は、米津さんの楽曲の中でもかなりアグレッシブな歌い方が求められる一曲です。

    ポイント①:テンポが速いので「子音の立て方」が重要

    BPMが速く、言葉を詰め込むパートが多いため、子音をはっきり発音する意識が大切です。
    特にサビの「努力 未来 A BEAUTIFUL STAR」のような畳みかけるフレーズでは、舌先の動きを素早くする練習が効果的です。
    「タタタタ」と舌先で上の歯茎をはじく早口練習を日常的にやっておくと、速いフレーズが楽になってきます。

    ポイント②:サビの高音は「前方向に飛ばす」

    この曲のサビは勢いが必要なので、声を上に持ち上げるのではなく、正面の壁にぶつけるように前方向へ飛ばすイメージで歌ってみて下さい。
    上方向に意識を持っていくと喉が締まりやすくなりますが、前方向であれば喉への負担が軽減されます。

    ポイント③:地声とファルセットの切り替え

    KICK BACKではサビの中で地声と裏声が素早く入れ替わるパートがあります。
    この切り替えを滑らかにするために、普段から地声→裏声→地声と音をつなげるサイレン練習(救急車のように「ウィーウォーウィー」と上下する練習)をしておくことをお勧めします。

    「Pale Blue」──裏声の美しさが光る一曲

    この曲は米津さんの裏声の美しさが存分に発揮されている楽曲です。

    ポイント①:サビの高音域はファルセット主体

    サビの「もう一回 もう一回」のパートは、息を多めに混ぜた柔らかいファルセットで歌われています。
    ここで地声を張ってしまうと曲の雰囲気が変わってしまうので、思い切って裏声に切り替える勇気が大事です。

    ポイント②:Aメロとサビの声質の対比

    Aメロの落ち着いた地声から、サビの浮遊感のある裏声へ——このコントラストがPale Blueの聴きどころです。
    Aメロでは胸に響かせるイメージ、サビでは頭のてっぺんから声が抜けていくイメージで歌い分けてみると、メリハリがつきます。

    「感電」──リズム感と声の軽さがカギ

    「感電」はファンキーなリズムが特徴的で、リズム感と声の「抜き」の技術が問われる楽曲です。

    ポイント①:リズムに「乗る」のではなく「食う」

    この曲のリズムは、拍のちょうど上に乗るのではなく、少し前にずらして「食い気味」に歌うとグルーヴが出ます。
    身体でリズムを取るとき、つま先でトントンと床を踏むのではなく、かかとを浮かせてつま先立ちでリズムを感じるくらいの前のめり感がちょうど良いかもしれません。

    ポイント②:声を張りすぎない

    感電はサビでも意外と声を張っていません。
    7割くらいの力加減で、声に余裕を残しておくのがポイントです。全力で歌ってしまうと「感電」の持つ軽やかさやおしゃれさが失われてしまいます。
    重いバッグを片手で軽々持つような、余力を見せる歌い方を意識してみて下さい。

    米津玄師の歌い方を身につける5ステップ練習法

    ここからは、米津さんの歌い方に近づくための練習法を5つのステップに分けてご紹介します。
    焦らず、一つずつ取り組んでみて下さい。

    STEP1:腹式呼吸とロングブレスで息の土台を作る

    まずは呼吸のコントロールから始めましょう。

    • 仰向けに寝た状態で、お腹に手を当てて自然な腹式呼吸を確認する
    • 「スーーーー」と息だけを細く長く吐く(目標:20秒以上)
    • 慣れてきたら立った状態でも同じ感覚を再現する

    地味ですが、ここを飛ばしてしまうと後の練習がすべて不安定になってしまいますので、しっかり取り組んで頂きたいステップです。
    ピアノを使ったスケール発声など、具体的な発声練習メニューについては発声練習の目的と役割|ピアノ伴奏付き音源で実践トレーニングもご参照下さい。

    STEP2:ハミングで響きのポジションを見つける

    次に、声の響きを適切な場所に集める練習です。

    • 口を閉じて「んー」とハミングする
    • 鼻の付け根(目と目の間あたり)にビリビリと振動を感じるポジションを探す
    • 低い音から少しずつ音程を上げながら、振動の位置が変わらないように意識する

    米津さんの声の「芯」は、この鼻腔共鳴(びくうきょうめい=鼻の空間に声を響かせること)が大きく関わっていると思います。
    最初は分かりにくいかもしれませんが、続けていくうちに「ここだ」というポジションが見つかるはずです。

    STEP3:地声と裏声のブリッジ練習

    ミックスボイスの準備段階として、地声と裏声の切り替えをスムーズにする練習です。

    • 低い音から「マー」と発声し、少しずつ音程を上げていく
    • 地声の限界付近で自然に裏声に切り替わるポイントを見つける
    • 切り替わるポイントで「ガクッ」と声が変わらないように、なるべくなめらかにつなぐ
    • 上りだけでなく、裏声から地声に下りていく練習も同じくらい重要

    感覚としては、エスカレーターの乗り継ぎのように、段差を感じさせず次のフロアに移動するようなイメージです。
    最初はどうしても「ガクッ」となりますが、しっかりやれば少しずつ滑らかになっていきます。

    STEP4:米津さんの楽曲でフレーズ練習

    ここからは実際の楽曲を使った練習に入ります。
    いきなり1曲通して歌うのではなく、フレーズ単位で区切って練習するのがポイントです。

    • まずは「Lemon」のAメロなど、音域が低めで歌いやすいパートから
    • 原曲を聴きながら、米津さんの息遣いや声の抜き方をよく観察する
    • 1フレーズずつ真似してみて、録音して聴き比べる
    • うまくいかない部分は、何が違うのかを分析する(音程?声質?リズム?)

    レッスンでも、1曲まるごと歌ってから修正するのではなく、4小節くらいの短い単位で繰り返し練習する方法を取っています。
    この方が確実に上達が早いです。

    STEP5:表現力を磨く──強弱と感情の込め方

    技術的な部分がある程度できるようになったら、最後は表現力です。

    • 歌詞の内容を読み込み、どのフレーズで感情が高まるかを把握する
    • 感情が高まる箇所では声量を上げ、静かな箇所では声を落とす(ダイナミクス)
    • ビブラートをかける箇所、ストレートに伸ばす箇所を意識的に決める
    • 「歌を届ける相手」を具体的にイメージして歌う

    米津さんの歌い方の魅力は、テクニックだけでなく「歌に込められた感情が聴き手に伝わってくる」ところにあると思います。
    技術はあくまで感情を伝えるための手段ですので、最終的にはご自身の感情をどう声に乗せるかが大切になってきます。

    難易度別!米津玄師のおすすめ練習曲

    最後に、練習に使いやすい米津さんの楽曲を難易度別にまとめました。ご自身のレベルに合わせて選んでみて下さい。

    初級(まずはここから)

    • 「Lemon」──音域が比較的狭く、テンポもゆったり。表現力の練習に最適
    • 「アイネクライネ」──メロディが歌いやすく、ミックスボイスの入門にちょうど良い
    • 「馬と鹿」──サビの盛り上がりが分かりやすく、ダイナミクスの練習になる

    中級(基礎ができてきたら)

    • 「感電」──リズムが独特なので、リズム感のトレーニングに効果的
    • 「Pale Blue」──裏声の使い方を学ぶのに最適な楽曲
    • 「LOSER」──低音域と高音域の差が大きく、声の切り替え練習になる

    上級(チャレンジ曲)

    • 「KICK BACK」──テンポ・音域・リズムすべてが高難度
    • 「地球儀」──繊細なコントロールが求められる。息遣いの精密さが必要
    • 「さよーならまたいつか!」──朝ドラ主題歌。独特なリズムと音程の跳躍が難しい

    初級の曲でしっかり基礎を固めてから、徐々にステップアップしていくことをお勧めします。
    いきなり上級の曲に挑戦すると、変なクセがついてしまうことがあるので注意して下さい。

    米津玄師のように歌うために大切なこと──まとめ

    ここまで、米津玄師さんの歌い方の特徴、高音の出し方、代表曲ごとのポイント、そして5ステップの練習法をお伝えしてきました。
    改めて大切なポイントをまとめると、

    • 腹式呼吸で息の支えを作ることが、すべての土台になる
    • ミックスボイスの習得は、裏声の強化から始めるのが近道
    • 曲ごとに歌い方のアプローチが違うので、それぞれの特徴を理解して歌い分ける
    • テクニックは大事だが、最終的には感情を込めて歌うことが米津さんの歌の魅力に近づくカギ

    とはいえ、実際にお声を聴いてみないとわからない部分もございます。
    骨格や声帯の形は一人ひとり違いますので、「自分の場合はどこから取り組めばいいか」は、実際に声を出してみて判断するのが一番確実です。

    不明点があれば、ボイトレ無料体験レッスンにお越し頂くなどでも構いません。
    是非お気軽にお越し下さい。「米津さんのこの曲が歌いたい」とリクエスト頂ければ、あなたの声の状態に合わせた練習メニューを一緒に考えていきます。

    株式会社ブラッシュボイス 関東代表ボイストレーナー 鈴木智大

    よかったらシェアしてね!
    • URLをコピーしました!
    目次