いつもボイストレーニング、お疲れ様です。
今回は「楽器の音に対して声をうまく合わせられない」というご質問をいただきました。
アーティスト活動を目指してボイストレーニングに通い始めたものの、ピアノやキーボードなど楽器の音に自分の声を合わせるのが難しいと感じている方は少なくありません。
トレーナーの声(人の声)には合わせられるのに、楽器の音になると途端に音程が取りにくくなる。この悩みには明確な理由があります。
結論:ズバリ「相対音感を鍛える」ことが解決への近道です。
この記事では、楽器の音に合わせにくい原因、相対音感とは何か、そして具体的なトレーニング方法まで詳しく解説していきます。
今回いただいたご質問の内容
HN:ナイン
質問タイトル:歌う時に楽器の音にうまく音程を合わせる事ができない
初めて質問させていただきます。
現在20代ですがアーティスト活動を始めたいと思い最近ボイストレーニングに通いはじめました。
音程を合わせる際、トレーナーさんの声(人の声)で発声している音であれば合わせやすいのですが、ピアノやキーボードなどの楽器の音だと合わせにくく感じます。
何故人の声のほうが合わせやすいのでしょうか。
また、楽器の音にも合わせるようにできるようになるためにはやはり共鳴による声の骨伝導を利用して相対音感を高めるトレーニングを行うことを地道に続けていくことが1番重要なのでしょうか。
宜しくお願いします。
今回のご質問にはいくつかのポイントが含まれています。
順番に整理しながら回答していきます。
そもそも相対音感とは何か?
まず「相対音感」について整理しておきましょう。
相対音感とは、ある基準の音を聴いて、それに対して別の音の高さを判断できる能力のことです。
歌においては、自分以外の音(伴奏やほかのパートの声など)を聴いて、自分の声の高さを合わせていく力を指します。
これに対して「絶対音感」は、何の基準もなく音を聴いただけで「これはド」「これはラ」と音名がわかる能力です。
絶対音感は幼少期にしか身につかないと言われていますが、相対音感は大人になってからでもトレーニング次第で十分に鍛えることができます。
相対音感に関する詳しい記事はこちらもあわせてお読みください。
楽器の音より人の声に合わせる方が歌いやすいのはなぜか?
これは非常によくあるお悩みです。
理由はシンプルで、楽器の音色を聴くことに慣れていないため、人の声の方が音程を取りやすいということです。
質問者様は20代後半とのことですが、20年以上にわたる日常生活の中で最も聴き慣れている音は「人間の声」です。
赤ちゃんの頃から家族の声を聴き、友人との会話、テレビやラジオなど、私たちは常に人の声に囲まれて生きています。
一方で、ピアノやギターなどの楽器の音は、音楽の授業や聴いている曲の中で耳にすることはあっても、「その音に自分の声を合わせる」という経験は限られています。
人の声と楽器の音色の違い
もう少し具体的に説明すると、人の声と楽器では倍音の構成が異なります。
人の声は豊かな倍音を含みつつも、私たちの脳が最も処理しやすい周波数帯に集中しています。
これは人間の聴覚が進化の過程で、コミュニケーションに必要な「人の声の周波数帯」を特に敏感に聞き取れるように発達したためです。
対してピアノの音は、人の声とは異なる倍音構成を持っています。
そのため、楽器の音の中から「基音(もとになる音の高さ)」を聴き取って、自分の声を合わせるには慣れが必要なのです。
ただし安心してください。
楽器の音に対して慣れてくれば、人間の声と同じように聞き分けて音程を取れるようになっていきます。
つまり「楽器に対しての相対音感」を磨いていくことが大切であり、それは十分に可能なことです。
楽器の音にうまく合わせるには相対音感を高めるのが重要なのか?
ご質問の通り、楽器の音に合わせて歌えるようになるためには、楽器の音に慣れることが最も重要です。
はじめの頃は楽器で音程を取ることが難しいかもしれませんが、きちんと向き合って楽器の音に慣れていくことが上達への一番の近道になります。
では、具体的にどうやって楽器の音に慣れていけばよいのでしょうか。
いくつかの方法をご紹介します。
方法①:ソルフェージュで楽器の音に合わせる練習
ソルフェージュとは、楽器が出す音に対して自分の声を合わせていく音感トレーニングです。
ボイストレーニングの現場でも非常によく使われる方法で、音程の精度を高めるうえで欠かせない練習です。
具体的な進め方としては、次のステップを繰り返します。
ステップ1:ピアノやキーボードで1つの音を鳴らし、その音に合わせて声を出す
ステップ2:その様子をスマホでも構わないので録音する
ステップ3:録音を聴き返して、自分の声がどのようにズレているかを確認する
ステップ4:ズレに気づいたら、もう一度同じ音に合わせて声を出し直す
この「録音→確認→修正→録音」のサイクルを繰り返すことが大切です。
ソルフェージュについては、共鳴の仕組みについても触れている下記の記事を参考にしてみてください。
また、正しい発声の基礎固めとしてこちらの記事もおすすめです。
方法②:チューナーアプリを使って音程を可視化する
録音だけでは自分のズレが判断しにくいという方には、チューナーアプリを使って音程のズレを視覚的に確認する方法がおすすめです。
スマホのチューナーアプリを使えば、自分が出している声の音程が目で見てわかります。
楽器の音を鳴らしながら声を出し、チューナーの表示で「高すぎる」「低すぎる」を確認しながら修正していくのです。
耳だけに頼るよりも、目でもフィードバックが得られるため上達スピードが上がる方が多いです。
チューナーを活用した音程トレーニングについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
方法③:簡単なメロディから段階的に慣れる
いきなり難しい曲で楽器に合わせようとすると挫折しやすくなります。
まずはドレミファソラシドのスケール(音階)を楽器と一緒に歌うところから始めてみてください。
慣れてきたら、次のように段階を上げていくとよいでしょう。
レベル1:スケール(ドレミファソラシド)を楽器に合わせて歌う
レベル2:簡単な童謡やメロディを楽器の伴奏に合わせて歌う
レベル3:好きな曲のサビなど、短いフレーズを楽器に合わせて歌う
レベル4:曲全体を楽器の伴奏に合わせて通して歌う
焦らず段階を踏むことで、楽器の音色に対する耳が確実に育っていきます。
録音チェックで音程のズレに気づくコツ
ソルフェージュの練習で大切なのは、録音を聴き返したときに「妥協しない」ことです。
「まあだいたい合っているかな」で済ませず、少しでもズレを感じたらもう一度やり直す。
この地道な積み重ねが、楽器に対する音程の精度を着実に高めていきます。
録音チェックの際は次のポイントに注意してみてください。
・音の出だし:声を出した瞬間に正しい音程に当たっているか
・音の途中:ロングトーンで音がブレたり下がったりしていないか
・フレーズのつなぎ:音が移動するとき(音程が変わるとき)にスムーズに合わせられているか
もし自分の声がどのようにズレているのか、自分自身で聴いても判断ができない場合は、ボイストレーナーに聴いてもらいましょう。
客観的な耳でチェックしてもらうことで、自分では気づけなかったクセやズレを把握できます。
ハモリ練習で相対音感をさらに鍛える
ある程度楽器の音に合わせられるようになってきたら、ハモリの練習に取り組むことで相対音感をさらに強化できます。
ハモリとは、メインのメロディに対して別の音程で歌うことです。
メロディとは異なる音を正確にキープする必要があるため、相対音感を使う力が自然と鍛えられます。
楽器の音に合わせる練習と並行して取り組むと、音を聴き分ける耳がより早く育ちます。
ハモリの具体的な練習方法についてはこちらの記事をご覧ください。
楽器の音に合わせるトレーニングを続けるための心構え
最後に、練習を継続するうえでの心構えについてお伝えします。
楽器に対して音程を合わせる力は、一朝一夕で身につくものではありません。
しかし、正しい方法で地道に続ければ、必ず楽器の音にも自然に合わせられるようになります。
・毎日少しずつでOK:1日5分〜10分のソルフェージュでも、続けることで確実に変わります
・完璧を目指さなくてよい:少しずつ精度が上がっていけば十分です。大切なのは「気づき」を積み重ねること
・いろいろな楽器の音に触れる:ピアノだけでなく、ギターやアプリの音源など、さまざまな音色に慣れておくと応用力が広がります
質問者のナインさんはアーティスト活動を目指しているとのことですので、楽器に合わせて歌える力は今後ますます重要になってきます。
ぜひ焦らず、着実にトレーニングを続けてみてください。
また何かわからない点があればお気軽にご質問ください。
ボイストレーニングに興味があるけれど一歩を踏み出せないという方は、まずはボイトレ無料体験レッスンで気軽にご相談ください。
楽器に対する音程の取り方や相対音感のトレーニングについても、トレーナーが丁寧にアドバイスいたします。

