こんにちは。ブラッシュボイスです。
「座った方が歌いやすいのに、立つと声が出にくくなる」というご相談を頂くことがあります。
カラオケでは座って歌うことが多いですし、自宅で練習するときもソファや椅子に座ったままという方は少なくないでしょう。
実は、座った方が歌いやすいと感じるのにはきちんとした理由があります。
逆に言えば、その仕組みを理解すれば立って歌う時にも同じように楽に声を出せるようになります。
この記事では、座って歌う場合と立って歌う場合の身体の使い方の違いを整理し、歌う時の姿勢のポイントや立って歌うコツをご紹介していきます。
もちろん文章だけですべての感覚をお伝えするのは難しい部分もありますが、普段の練習に取り入れられるヒントになれば幸いです。
座った方が歌いやすいと感じる理由
座ると腹式呼吸がしやすくなる
座った方が歌いやすいと感じる最も大きな理由は、座ることで腹式呼吸がしやすくなるという点にあります。
人間は立っている時、無意識のうちにバランスを取ろうとして、お腹周りの筋肉に力が入りがちです。
人形を立たせることが難しいように、直立を維持するだけでもかなりの筋肉を使っています。
お腹周りが緊張した状態では、横隔膜がスムーズに下がりにくくなるため、深い息が吸いづらくなります。
一方で座ると、椅子が身体を支えてくれるため下半身の力みが軽減されます。
お腹周りの筋肉がリラックスしやすくなり、横隔膜が自然に下がることで、たっぷりと息を取り込めるようになるわけです。
腹式呼吸の基本について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。
腹式呼吸のやり方と練習法
安定感が声の自由度につながる
座っていると身体が安定するため、余計な力を使わずに発声に集中できるというメリットもあります。
立っている時は足元のバランスや重心の位置を常にコントロールしなければなりません。
それだけで意識が分散して、結果的に喉や肩に不要な緊張が入ってしまうことがあります。
座ることでそうした「立つためのエネルギー」が不要になり、息のコントロールや発声に意識を向けやすくなるのです。
座って歌うメリットは「息を吸う時」に限られる
ただし、ここで注意して頂きたいポイントがあります。
座って腹式呼吸のメリットを感じるのは、主に息を吸う時です。
息を吐く(声を出す)段階では、座っているからといって共鳴が高まるわけではありません。
むしろ座った姿勢が崩れていると、息を吐く時にかえって力みが生じるケースもあります。
息を吸うのが楽になることと、声がよく響くことは別の問題だと覚えておいて下さい。
座って歌う時に注意すべきポイント
猫背・前かがみは声の大敵
座って歌う時に最もやってはいけないのが、猫背や前かがみの姿勢です。
背中が丸まるとお腹からの声の支えが弱くなり横隔膜の動きが制限されますし、気道も狭くなって息がスムーズに通らなくなります。
座ると身体が楽になる分、つい背もたれに寄りかかったり、スマホを見るような前傾姿勢になってしまいがちです。
せっかくの座るメリットを活かすためにも、骨盤を立てて背筋をまっすぐ伸ばす意識を持ちましょう。
座り方のコツは「骨盤」と「足裏」
座って歌う時の理想的な姿勢は、椅子に浅めに腰掛けて、両足の裏をしっかり床につけた状態です。
坐骨(お尻の下にある2つの骨)で座面を感じるように座ると、自然と骨盤が立ちます。
頭のてっぺんから糸で吊られているようなイメージを持つと、背筋が伸びつつも力まない姿勢が作りやすくなります。
足裏が床についていないと身体が不安定になり、腹筋や背筋に余計な緊張が入ってしまいます。足を組むのも同様に避けた方がよいでしょう。
立って歌うと声が出にくくなる原因
下半身の緊張が呼吸を妨げる
先ほどもお伝えした通り、立っている時は身体のバランスを保つためにお腹周りや脚の筋肉が緊張しやすい状態です。
この緊張が横隔膜の動きを制限し、十分な息が吸えなくなることが声の出にくさにつながります。
普段から立って歌い慣れていない方ほどこの傾向は強くなります。
座って練習ばかりしていると、立った時との感覚のギャップに戸惑うことも珍しくありません。
重心が不安定だと喉に力が入る
重心が前後に偏っていたり、片足に体重が乗りすぎていたりすると、身体は無意識にバランスを取ろうとします。
その結果、肩や首、喉周りにまで不要な力が入ってしまうことがあります。
喉に力が入った状態では声帯が自由に振動できず、声がこもったり、高音が出しにくくなったりします。
「立つと声が細くなる」「高い声が届かない」と感じる方は、重心の取り方を見直してみると改善のヒントが見つかるかもしれません。
息漏れと共鳴不足のサイン
立って歌った時に「声が響かない」と感じる場合、息漏れが多くなっている可能性があります。
身体の緊張で呼吸のコントロールが乱れ、声に対して使う息の量が多くなりすぎてしまうのです。
息が多すぎると上咽頭での共鳴が不足し、声がぼやけたような質感になります。
例えば「あ」と発声するつもりが「は」のように息混じりの音になってしまうイメージです。
はっきりとした発音を心がけることで息漏れを減らし、共鳴しやすい声に近づけることができます。
立って歌うコツ|正しい姿勢の作り方
足は肩幅・重心はやや前に
立って歌う時の基本姿勢として、まず足を肩幅程度に開き、つま先をわずかに外側に向けます。
重心は土踏まずからつま先の付け根あたりに置くイメージで、やや前寄りにすると安定します。
かかとに重心が乗ると身体が後ろに反りやすく、喉が詰まるような感覚が出ることがあります。
逆につま先に乗りすぎると前傾して腹筋が固まってしまいます。
「少しだけ前に」という意識がちょうどよいバランスを生みます。
膝と骨盤を意識してリラックス
立っている時に見落としがちなのが膝です。
膝をピンと伸ばしきってしまうと、脚全体が突っ張って下半身の柔軟性が失われます。
膝をほんの少しだけ緩めることで、骨盤が自然な位置に収まり、横隔膜が動きやすくなります。
骨盤は前傾も後傾もさせず、まっすぐ立てるイメージです。
おへその下あたりに重心を感じながら、上半身の力を抜いてみて下さい。
頭・首・肩のポジション
姿勢というと「背筋を伸ばす」ことばかり意識しがちですが、頭の位置が前に出ていると、いくら背筋を伸ばしても喉が圧迫されます。
耳の位置が肩の真上にくるようなイメージで、顎を軽く引きましょう。
肩は上がらないように力を抜き、腕は自然に体側に垂らします。
鏡の前で横から自分の姿をチェックすると、耳・肩・腰・くるぶしが一直線になっているかどうかを確認できます。
立って歌えるようになるための練習法
ハミングで共鳴の感覚をつかむ
立った状態で声の響きを確認するのに最適なのがハミングです。
口を閉じた状態で「ん〜」と声を出すことで、鼻腔や頭部への共鳴を感じやすくなります。
まずは座った状態でハミングを行い、鼻の奥や額のあたりに振動を感じる感覚を覚えて下さい。
その感覚を保ったまま立ち上がってハミングを続けると、立った状態でも共鳴を維持する感覚がつかめるようになります。
ハミングの詳しいやり方はこちらで解説しています。
ハミングの効果と練習法
リップトリルで息のコントロールを安定させる
リップトリル(リップロール)は、息の量と圧力のバランスを整える優れた練習法です。
唇を「ブルルル」と振動させるエクササイズで、余計な力が入っていると唇の振動が途切れるため、脱力の確認にもなります。
立った姿勢でリップトリルを行い(脱力と力強い発声の関係も参考に)、振動が安定して続くようであれば、息のコントロールが上手くできている証拠です。
途切れてしまう場合は、姿勢を見直したり、肩の力を抜いたりしてみましょう。
リップトリルについて詳しくはこちらをご覧下さい。
リップトリル(リップロール)のやり方
座る・立つを交互に繰り返す練習
座って歌いやすい感覚をそのまま立った状態に持っていくために、座った状態と立った状態を交互に切り替えながら同じフレーズを歌う練習がおすすめです。
手順はシンプルです。まず座った状態で楽に歌えるフレーズを1つ選び、お腹の動きや声の響きを確認します。
次にそのままゆっくりと立ち上がり、同じフレーズを同じ感覚で歌ってみます。
違和感がある部分を意識しながら何度か繰り返すことで、立った時にどこに力が入ってしまうのかが分かるようになります。
裏声や高音域で姿勢が崩れやすい方へ
高い声を出す時ほど姿勢が重要
裏声や高音域を出そうとすると、無意識に顎が上がったり、身体が反ったりする方が多いです。
これは「高い音=上に向かって出す」というイメージが身体に染みついているためですが、実際には姿勢が崩れることで声は出にくくなります。
高音を出す時こそ、顎を引いて重心を安定させることが大切です。
裏声の出し方やコントロールについてはこちらの記事も参考にして頂けます。
裏声の出し方と練習法
腹式呼吸の土台があれば姿勢に左右されにくくなる
最終的に目指したいのは、座っていても立っていても同じように歌える状態です。
それを支えるのが腹式呼吸の土台であり、正しい姿勢の習慣です。
腹式呼吸が身体に定着してくると、立っている時でも自然と横隔膜を使えるようになり、姿勢の違いに左右されにくくなります。
日頃のトレーニングで座った状態と立った状態の両方を意識的に取り入れてみて下さい。
まとめ|座った方が歌いやすい理由を理解して立ち姿勢でも活かそう
座った方が歌いやすいと感じるのは、座ることで下半身の力みが減り、腹式呼吸で息を吸いやすくなるためです。
ただし、座っていることで声の共鳴が高まるわけではないという点は押さえておきましょう。
立って歌うコツは、正しい姿勢で余計な力みを取り除くことに尽きます。
足幅・膝・骨盤・頭の位置を丁寧に確認し、ハミングやリップトリルで立った状態での呼吸と共鳴の感覚を育てていくことが大切です。
歌う時の姿勢は意外と見落としがちですが、姿勢を整えるだけで声の出やすさが大きく変わることも珍しくありません。
今日からぜひ意識してみて下さい。
もし「自分の姿勢が合っているか分からない」「立つと力んでしまうクセが抜けない」といったお悩みがあれば、プロのボイストレーナーに直接見てもらうのが一番の近道です。
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