こんにちは。ブラッシュボイス・関東代表ボイストレーナーの鈴木智大です。
「以前は出ていた裏声が、急に出なくなった」「裏声がかすれるようになってしまった」——こうしたお悩みのご相談を、レッスンの現場でも非常に多く頂きます。
結論から申し上げますと、裏声が出なくなった状態は、多くの場合改善が可能です。安心して下さい。正しい原因を理解し、適切なトレーニングを行えば、裏声を取り戻すことは十分にできます。
今回は、裏声が出なくなる・かすれる原因と、その具体的な改善法について詳しく解説致します。
裏声(ファルセット)が出なくなるとはどういう状態か
まず、裏声が出なくなった状態がどういうことなのかを整理しておきましょう。
裏声の仕組みと声帯の動き
裏声を出す時、声帯は薄く引き伸ばされた状態で振動しています。地声の時は声帯が厚くしっかり閉じて振動するのに対し、裏声では声帯の縁だけが軽く触れ合うようなイメージです。
この「薄く引き伸ばす」動きがうまくいかなくなると、裏声が出ない・かすれるといった症状が起こります。声帯の周囲にある筋肉(輪状甲状筋)が適切に働かなくなっている状態と言えます。
「出なくなった」と「もともと出ない」の違い
以前は出ていたのに出なくなった場合と、そもそも裏声を出した経験がほとんどない場合とでは、原因が異なります。以前出ていた方は、声帯を薄く使う感覚を身体が覚えているため、正しいアプローチで比較的早く取り戻せることが多いです。
どちらの場合でも改善は可能ですので、焦らずに取り組んで頂ければと思います。
裏声が出なくなった・かすれる5つの原因
裏声が出なくなる原因は一つではありません。ご自身に当てはまるものがないか、確認してみて下さい。
原因1:喉を締めて発声する癖がついている
これが最も多い原因です。地声で無理に高音を出そうとして喉を締める癖がつくと、声帯を薄く引き伸ばす動きが阻害されてしまいます。喉の周りの筋肉が常に緊張した状態では、裏声に必要な柔軟な声帯の動きができなくなるのです。
カラオケで力任せに歌い続けた結果、裏声が出なくなったというケースは非常に多いです。
原因2:呼吸が不安定・息の使い方に問題がある
裏声は地声と比べて、息のコントロールがよりシビアに求められます。腹式呼吸が十分にできていないと、息の量が多すぎたり少なすぎたりして、声帯がうまく振動できません。
特に息を一気に吐きすぎてしまう方は、声帯に過度な負担がかかり、裏声がかすれやすくなります。お腹で息を支える感覚が身についているかどうかが、大きなポイントになります。
原因3:声帯疲労・喉の使いすぎ
長時間の歌唱や大声での会話が続くと、声帯は疲労します。喉の疲れが蓄積した状態では、声帯の細やかな動きが鈍くなり、裏声が出にくくなるのは当然のことです。
風邪を引いた後や、声を酷使した翌日に裏声が出なくなるのは、声帯の一時的な疲労や軽い炎症が原因であることがほとんどです。この場合は適切な休息で回復しますので、まずは喉を休めることが第一です。
原因4:換声点の壁にぶつかっている
換声点(かんせいてん)とは、地声と裏声が切り替わるポイントのことです。この換声点の前後で声がひっくり返ったり、裏声に切り替えられなかったりする方は少なくありません。
声が裏返る現象と裏声が出ない現象は、実は根っこの部分で繋がっています。換声点をスムーズに越えられないために、裏声そのものを出す感覚を見失ってしまうのです。
原因5:声帯の異常や加齢による変化
声帯結節(けっせつ)やポリープ、声帯の炎症など、医学的な原因で裏声が出なくなることもあります。また、加齢に伴い声帯の柔軟性が低下することで、以前のように裏声が出にくくなるケースもございます。
長期間改善しない場合は、一度耳鼻咽喉科を受診されることをおすすめ致します。医学的な問題がないことを確認した上でトレーニングに取り組む方が安心です。
裏声を取り戻すための基礎トレーニング
ここからは、裏声を取り戻すための具体的なトレーニング方法をお伝えしていきます。文章でのご説明には限界がございますが、ご自宅で取り組めるものを中心にご紹介致します。
ステップ1:腹式呼吸で息の土台を作る
まずは腹式呼吸の安定が最優先です。お腹に手を当てて、鼻からゆっくり息を吸い、お腹が膨らむのを感じて下さい。その状態から、歯と歯の間から「すーーー」と細く長く息を吐きます。
目安は30秒以上、できれば45秒以上まっすぐ吐き続けられるようにしましょう。このロングブレスが安定してできるようになると、裏声に必要な繊細な息のコントロールが身につきます。
ステップ2:喉を開く感覚を掴む
裏声を出すためには、喉が十分に開いている必要があります。鏡の前で「あーー」と発声してみて下さい。このとき確認して頂きたいポイントは3つです。
- 舌の先端が下の歯の裏側に自然に触れていること
- 舌の中央部が平らな状態を保っていること
- 喉の奥がしっかり見えていること
舌が盛り上がっていたり、喉の奥が見えなかったりする場合は、喉が閉まっている状態です。軽く欠伸(あくび)をするような感覚で喉を開いてみて下さい。この「喉が開いた感覚」を身体に覚えさせることが大切です。
ステップ3:小さな声から裏声を出す練習
いきなり大きな裏声を出そうとせず、まずはとても小さな声で構いません。「ほーーー」と、ため息のような息混じりの声を出してみて下さい。このとき力を入れる必要は全くありません。
頭のてっぺんに声を当てるようなイメージで、ふわっと軽く出すのがコツです。かすれても構いませんので、まずは裏声の「きっかけ」を掴むことを目指しましょう。小さな裏声が安定してきたら、少しずつ声量を上げていきます。
裏声の質を高める応用トレーニング
基礎が安定してきたら、次のステップに進みましょう。裏声の質を高めることで、歌唱にも活かせるようになります。
上咽頭共鳴(じょういんとうきょうめい)を意識する
ファルセットでの共鳴は上咽頭(じょういんとう)がほぼ100%と言っても過言ではありません。上咽頭とは、鼻の奥から喉の上部にかけての空間のことです。
「んーーー」とハミングをしてみると、鼻の奥や頭の中が振動する感覚があると思います。この振動を感じる場所こそが上咽頭です。この共鳴が得られないと、裏声は成立しません。ハミングで共鳴の感覚を掴んでから、そのまま「んーーあーー」と口を開いて裏声に繋げる練習が効果的です。
地声と裏声の切り替え練習
地声から裏声へ、裏声から地声へとスムーズに切り替える練習をしましょう。「あー」の地声から、同じ音量のまま裏声の「あー」に移行します。最初は音が途切れても構いません。
この練習は換声点(かんせいてん)を滑らかにする効果があり、ファルセット・裏声の安定にも直結します。毎日少しずつ取り組むことで、地声と裏声の境目が徐々になめらかになっていきます。
裏声を使った簡単なフレーズ練習
単音の練習が安定してきたら、簡単なメロディーを裏声だけで歌ってみましょう。最初は音域が狭くゆっくりな曲がおすすめです。歌い慣れた曲のサビだけを裏声で歌うのも良い練習になります。
この段階で大切なのは、喉に力を入れないことです。「力を抜いても声が出る」という体験を積み重ねることで、裏声の感覚が定着していきます。
裏��をさ���に安定���せたい方はヘッドボイスの出し方と練習方法も合わせてご確認下さい。
裏声が出ない時にやってはいけないこと
改善を急ぐあまり、逆効果になってしまう練習法もあります。以下の点にはご注意下さい。
力任せに裏声を出そうとする
裏声が出ないからといって、力を込めて無理やり出そうとするのは禁物です。喉を締めた状態で無理に裏声を出そうとすると、声帯に大きな負担がかかります。かえって症状が悪化する恐れがありますので、力みを感じたら一度休憩して下さい。
裏声は「力を抜くことで出る」ものです。頑張れば出るというものではないという点が、地声との大きな違いです。
喉の痛みや違和感を無視して練習を続ける
練習中に喉が痛い、ヒリヒリする、声が出にくくなったといった違和感を感じた場合は、すぐに練習を中止して下さい。声帯は繊細な組織ですので、無理を続けると回復に時間がかかってしまいます。
適度な休息を挟みながら練習することが、結果的に上達への近道です。
裏声の改善にはプロの指導が効果的です
ここまで、裏声が出なくなった原因と改善法についてお伝えして参りました。ご自身で取り組めるトレーニングをご紹介致しましたが、正直なところ、文章だけでは伝えきれない感覚的な部分も多くございます。
一人ひとりに合った原因の特定が大切
裏声が出ない原因は人それぞれです。喉の締め癖が原因の方もいれば、呼吸の問題が主因の方もいます。ご自身では気づきにくい癖を客観的に見てもらうことで、改善のスピードは大きく変わります。
ブラッシュボイスの無料体験レッスン
ブラッシュボイスでは、60分の無料体験レッスンを実施しております。裏声が出なくなった原因をトレーナーが直接確認し、お一人おひとりに合った改善方法をご提案させて頂きます。
「裏声が出なくなった」「ファルセットがかすれるようになった」とお悩みの方は、お気軽にお問い合わせ下さい。一緒に裏声を取り戻していきましょう。
ブラッシュボイス・関東代表ボイストレーナー 鈴木智大
