今回はハミングに関するご質問を頂きましたので、詳しく解説していきます。
ハミングとは、口を閉じたまま「んーーーーー」と発声することです。口を閉じているので、感覚的には「ん」でも「あ」でも同じような状態になります。
ハミングは一見シンプルな練習ですが、鼻腔共鳴の感覚をつかむためにとても効果的なボイストレーニングの一つです。正しいやり方を身につけることで、歌声全体の響きが大きく変わってきます。
ハミングをする際の息漏れや振動の確認方法、裏声と表声のどちらが良いのかなど、細かくチェックしていきましょう。
ハミングに関する質問内容
2009年08月26日に頂戴した質問
質問投稿者:あーこさん
質問タイトル:『ハミングについての質問』
以下質問内容:
こんにちは。
すでに同じ質問がありましたら、すみません。
ハミングをするのに適した音の高さというのはあるのでしょうか?
鼻から息が漏れないように、声を前に出すことを意識しながらやってみるのですが、何故か喉が痛くなってきます。
唇は、指で触れると振動が分かる位にしかならないのですが、正しくは、リップトリルする時くらいブルブルなるものなのでしょうか?
眉間辺りが気持ち悪い感じになるのですが…。
よろしくお願いします。
ハミングとは?基本の仕組みと効果
回答に入る前に、まずハミングの基本的な仕組みと、なぜボイストレーニングにおいてハミングが重要なのかを整理しておきましょう。
ハミングとは、口を閉じた状態で声を鼻に通して発声する方法です。「ん〜」と声を出すだけなので誰でもすぐに始められますが、正しいフォームで行うと声の響きや共鳴の感覚を養う非常に優れた練習になります。
ハミングの主な効果は以下の通りです。
1. 鼻腔共鳴の感覚をつかめる
口を閉じている分、声のエネルギーが鼻腔(鼻の奥の空間)に集まりやすくなります。この共鳴の感覚を体で覚えることが、歌声に「響き」をプラスする第一歩です。
2. 喉への負担が少ない
ハミングは口を大きく開ける必要がないため、正しく行えば喉に余計な力が入りにくい練習です。ウォーミングアップとしても最適と言えます。
3. 音程のコントロール力が向上する
ハミングでは声の「響き」だけに集中できるため、音程を安定させるトレーニングとしても効果的です。余計な要素を排除して、ピッチの精度を高めることができます。
4. 声量アップにつながる
鼻腔共鳴がしっかりできるようになると、声に倍音が加わり、無理に力を入れなくても通る声が出せるようになります。結果として声量のアップにもつながるのです。
こうした効果があるからこそ、プロのボーカリストもウォーミングアップにハミングを取り入れていることが多いです。発声練習の基本として、ぜひ日常的に取り入れてみてください。
【回答】ハミングをするのに適した音の高さ
『ハミングをするのに適した音の高さというのはあるのでしょうか?』
ご質問が重複していたとしてもあまりお気になさらずにお願い致します。幾つかご質問がございましたので順番に回答させて頂きます。
適した音の高さはあります。
まずは、“発声しやすい音の高さ”で練習することが大切です。
これをボイストレーニングではボイスポジションと言います。
女性の場合は…C〜Fの実声
男性の場合は…F〜Cの実声
この辺りが一般的ですね。
上記のようなボイスポジションで正しくできるようになったら、高い音や低い音などでも練習してみてください。
なぜボイスポジションから始めるべきなのか
ハミングに限らず、ボイストレーニング全般に言えることですが、自分が最も楽に出せる音域で正しいフォームを作ることが上達への近道です。
いきなり高い音や低い音でハミングをしようとすると、喉に余計な力が入ったり、鼻腔共鳴がうまくできなかったりします。まずは中間の楽な音域で「正しい共鳴の感覚」をしっかりと体に染み込ませることが重要です。
ボイスポジションでのハミングが安定してきたら、半音ずつ上げたり下げたりしてみましょう。スケール(音階)を使って上下に移動する練習が効果的です。この時も、共鳴の感覚が途切れないように意識してみてください。
ハミングの音域を広げるステップ
具体的な練習の進め方をまとめると、以下のようになります。
ステップ1:ボイスポジションで安定させる
まずは楽に出せる音域で、リラックスした状態でハミングを行います。この段階では音程の正確さよりも、「響きの感覚」を掴むことを優先しましょう。
ステップ2:半音ずつ音域を広げる
ボイスポジションから半音ずつ上へ、そして下へと音域を広げていきます。無理のない範囲で行うことがポイントです。
ステップ3:スケール練習に移行する
ド・レ・ミ・ファ・ソと上がってソ・ファ・ミ・レ・ドと下がる、といったスケール練習をハミングで行います。発声練習と同じ要領で、ハミングでもスケールを使うと効率が良いです。
【回答】息漏れ・喉の痛みの原因と対処法
『鼻から息が漏れないように、声を前に出すことを意識しながらやってみるのですが、何故か喉が痛くなってきます。』
これは喉が締まっていることが原因だと思います。
声を前に出すことを意識しすぎてしまっているのかもしれませんね。
ハミングでも口腔内でしっかり共鳴ができていれば、鼻からの息漏れも少なくなります。それがポイントですが、それはご理解頂いているんですよね。
であれば、以下の対処法を試してみてください。
1. 下顎に力が入らないようにする
ハミングは口を閉じて行いますが、歯を強く噛み締める必要はありません。上下の歯は軽く離した状態で、唇だけを軽く合わせるようにしましょう。顎に力が入ると、それが喉の緊張にもつながってしまいます。
2. 喉に血管が浮かないようにする
鏡を見ながらハミングをしてみてください。首筋に血管が浮いていたら、それは力が入りすぎているサインです。力を抜いてやり直しましょう。
3. リップロールで喉の緊張を和らげる
ハミングの前にリップロールを行うのがおすすめです。リップロールは唇を「ブルブルブル」と振動させながら声を出す練習で、喉の緊張をほぐすのに非常に効果的です。リップロールができる状態 = 喉がリラックスしている状態なので、そのまま口を閉じてハミングに移行するとスムーズに行えます。
「声を前に出す」意識の落とし穴
ハミングで「声を前に出す」という意識は決して間違いではありません。鼻腔の前方に響きを集めるイメージは正しい方向性です。
しかし、「前に出そう」と意識しすぎると、かえって喉を押し付けるような力みが生まれることがあります。これが喉の痛みの原因になっているケースが非常に多いのです。
「前に飛ばす」というよりも、「鼻の奥で自然に響かせる」というイメージに切り替えてみてください。声を飛ばすのではなく、響きが自然に広がっていく感覚を大切にしましょう。
ハミングで喉が痛くなる場合のチェックリスト
ハミングをしていて喉が痛くなったり苦しくなったりする場合は、以下のポイントを一つずつ確認してみてください。
・顎を噛み締めていないか
・首や肩に力が入っていないか
・姿勢が前のめりになっていないか
・息を吸いすぎていないか
・無理に大きな声で出そうとしていないか
特に息の吸いすぎは意外と見落とされがちなポイントです。ハミングは口を閉じている分、少ない息の量でも十分に響きます。たっぷり吸った息を全部使おうとすると、喉に過剰な圧力がかかってしまいます。
腹式呼吸を使って、リラックスした状態で適度な量の息を吐くことを心がけてみてください。
【回答】唇の振動チェック ─ ハミング成功のサイン
『唇は、指で触れると振動が分かる位にしかならないのですが、正しくは、リップトリルする時くらいブルブルなるものなのでしょうか?』
ハミングが成功している状態は、指で確認などしていなくても振動を感じます。その振動で痒くて痒くて口を閉じてはいられない!というほどビリビリ来ます。
この「ビリビリ」の感覚こそが、鼻腔共鳴がしっかりと起きている証拠です。唇だけでなく、鼻の周り、頬骨のあたり、場合によっては頭頂部にまで振動を感じることがあります。
振動の段階と目指すべきレベル
ハミングの振動には段階があります。
レベル1:指で触れるとかすかに振動がわかる
あーこさんが現在いらっしゃる段階です。声は出ていますが、共鳴がまだ弱い状態です。
レベル2:触れなくても唇がムズムズする
共鳴が少しずつ強くなってきた段階です。唇に軽い痒みを感じるくらいの振動が出てきます。
レベル3:唇全体がビリビリと振動する
これが理想的な状態です。鼻腔共鳴がしっかりと起きており、共鳴のエネルギーが顔全体に伝わっている感覚があります。
いきなりレベル3を目指す必要はありません。日々の練習を重ねることで、徐々に共鳴が強くなっていきます。焦らず、リラックスした状態でコツコツ練習を続けてみてください。
ハミングとリップロールの振動の違い
ご質問にあったリップロールとの比較ですが、振動の性質は異なります。
リップロールは唇の物理的な振動(唇自体がバタバタと動く)ですが、ハミングの振動は声の共鳴による振動です。唇自体がバタバタと動くのではなく、鼻腔や口腔で増幅された声のエネルギーが唇に伝わって「ビリビリ」と感じるのです。
ですので、リップロールのように唇がブルブルと大きく動くわけではなく、もっと細かい振動として感じます。しかしその強さは、正しくできていれば「じっとしていられないほど」のレベルになります。
【回答】眉間の違和感について
『眉間辺りが気持ち悪い感じになるのですが…』
このような状態は初耳ですが、どうやらお話を伺っている限りでは未完成な状態のようです。もっと精度が上がると、この心配事も解消されるのかもしれませんね。
ただし、一つ補足をさせて頂くと、鼻腔共鳴が正しくできている場合、眉間や鼻の付け根あたりに振動を感じること自体は正常です。「気持ち悪い」と感じるのは、おそらく共鳴が不完全な状態で無理に鼻腔に響かせようとしているため、不自然な圧力がかかっているのだと推測できます。
リラックスした状態で自然な共鳴ができるようになると、眉間の振動は「気持ち悪い」ではなく「心地よい響き」として感じられるようになります。頑張ってみてください。
ハミングの正しいやり方 ─ 実践手順
ここからは、ハミングの具体的なやり方を手順を追って解説していきます。初心者の方も、既に練習を始めている方も、改めて確認してみてください。
準備:正しい姿勢を作る
ハミングを始める前に、まず正しい姿勢を作りましょう。
・背筋を伸ばして、リラックスした状態で立つ(座っていてもOK)
・肩の力を抜く
・顎を軽く引く(上を向かない)
・足は肩幅程度に開く
腹式呼吸ができる状態を整えることも大切です。胸式呼吸のまま行うと、息のコントロールが難しくなり、喉に負担がかかりやすくなります。
手順1:軽く口を閉じる
唇を軽く合わせます。この時、歯と歯の間にはわずかな隙間を保ちましょう。歯を噛み合わせてしまうと、口腔内の空間が狭くなり、共鳴が起きにくくなります。
イメージとしては、唇だけが閉じていて、口の中には空間がある状態です。
手順2:鼻から息を吸う
鼻からゆっくりと息を吸います。たっぷり吸いすぎる必要はありません。7〜8割程度の量で十分です。
手順3:「ん〜」と声を出す
鼻に響かせるイメージで「ん〜」と声を出します。最初はボイスポジション(楽に出せる音域)で行いましょう。
この時、以下のポイントを意識してください。
・息は一定の量で安定して吐く(強すぎず、弱すぎず)
・声を「飛ばす」のではなく「響かせる」イメージを持つ
・喉ではなく、鼻の奥〜頭のてっぺんに響くイメージで発声する
手順4:振動を確認する
ハミングをしながら、鼻の頭や唇に軽く指を当ててみてください。振動を感じたら、共鳴が起きている証拠です。練習を重ねるうちに、指を当てなくても強い振動を感じられるようになっていきます。
手順5:音を変えてみる
一つの音で安定してハミングができるようになったら、少しずつ音程を変えてみましょう。低い音から高い音へ、高い音から低い音へと滑らかに移動する練習(グリッサンドやポルタメント)も効果的です。
ハミングと鼻腔共鳴の関係
ハミングの最も重要な目的の一つが、鼻腔共鳴(びくうきょうめい)の感覚を身につけることです。
鼻腔共鳴とは、声が鼻の奥にある空間(鼻腔)で増幅・共鳴することです。鼻腔共鳴がしっかりとできると、声に豊かな倍音が加わり、響きのある美しい声になります。
歌が上手い人の声が「よく通る」「響きがある」と感じるのは、この鼻腔共鳴がしっかりと使えているからです。
ハミングは口を閉じているため、声のエネルギーが自然と鼻腔に向かいます。つまり、ハミングは鼻腔共鳴を「強制的に」体験できる練習だと言えるのです。
ハミングで鼻腔共鳴の感覚をつかんだら、その感覚を覚えたまま口を開けて「あー」と発声してみてください。鼻腔共鳴の響きを維持したまま通常の発声に移行できれば、歌声にも大きな変化が出てきます。
ハミングの練習で気をつけるべきポイント
ハミングの練習をより効果的に行うために、いくつかの注意点をまとめます。
1. 息の量をコントロールする
ハミングでは、少なめの息で十分に響くことを意識しましょう。口が閉じている分、息の出口が限られるため、たくさんの息を吐こうとすると鼻から息が漏れたり、喉に圧力がかかったりします。
腹式呼吸で息をコントロールしながら、安定した量の息でハミングを維持できるようにしましょう。
2. 喉をリラックスさせる
繰り返しになりますが、喉のリラックスはハミングにおいて最も重要なポイントの一つです。喉に力が入ると共鳴が阻害され、息漏れや痛みの原因になります。
ハミングの前にリップロールを数回行う習慣をつけると、喉をリラックスさせた状態でスムーズにハミングに入れます。
3. 長時間やりすぎない
ハミングは喉への負担が少ない練習ですが、それでも長時間続けると疲労が蓄積します。1回の練習は5分〜10分程度を目安にしましょう。短い時間でも毎日継続することの方が、長時間を一気にやるよりも効果的です。
4. 鏡でフォームを確認する
練習中は鏡を見て、首や顎に余計な力が入っていないかを確認しましょう。自分では気づかないうちに力んでいることは珍しくありません。客観的に自分の状態を観察する習慣が上達につながります。
ハミングを歌に活かすためのステップ
ハミングの練習だけで終わらせてしまうのはもったいないです。ハミングで掴んだ共鳴の感覚を歌に活かすことが最終的な目標です。
ステップ1:ハミングから母音へ移行する
ハミングで共鳴の感覚を掴んだら、そのまま口を開けて「あー」「えー」「いー」「おー」「うー」と発声してみましょう。ハミングの時に感じていた振動や響きを維持したまま母音に移行できると、共鳴のある声で歌えるようになります。
ステップ2:好きな曲をハミングで歌う
好きな曲のメロディーをハミングで歌ってみましょう。歌詞をつけずにハミングだけで歌うことで、音程やリズムに集中できます。この練習は、曲の全体像をつかむのにもとても有効です。
ステップ3:ハミングと歌詞を交互に歌う
1フレーズをハミングで歌い、次のフレーズは歌詞をつけて歌う、という交互の練習を行います。ハミングの共鳴の感覚を歌詞の部分にも引き継ぐことが狙いです。
ハミングと合わせて行いたい練習
ハミングの効果をさらに高めるために、以下の練習を組み合わせてみてください。
リップロール
リップロールは喉のリラックスと息のコントロール力を高める練習です。ハミングの前のウォーミングアップとして最適です。リップロールで唇を振動させる感覚は、ハミングでの鼻腔の振動にもつながります。
腹式呼吸
腹式呼吸はすべてのボイストレーニングの土台です。息のコントロールがしっかりとできるようになると、ハミングの安定感が格段に向上します。
スケール発声練習
発声練習の一つであるスケール練習をハミングで行うことで、音程感と共鳴の両方を同時に鍛えられます。ピアノやキーボードアプリなどを使って、正しい音程で行いましょう。
よくあるハミングの疑問
裏声と表声、どちらでハミングすべき?
基本的には表声(地声)でのハミングから始めることをおすすめします。表声の方が声帯がしっかりと閉じている状態なので、共鳴を感じやすいです。
表声でのハミングが安定してきたら、裏声でのハミングにもチャレンジしてみましょう。裏声でのハミングは、高音域の発声力を鍛えるのに効果的です。
ハミングはどのタイミングで練習すべき?
ハミングは歌の練習の一番最初、ウォーミングアップとして行うのが理想的です。いきなり歌い始めるのではなく、ハミングで声の状態を整えてから本格的な練習に入ることで、喉への負担を減らし、練習の効果を高めることができます。
また、日常生活の中でも、家事をしながら軽くハミングするなど、気軽に取り入れることができます。毎日少しずつでも行うことで、共鳴の感覚が自然と身についていきます。
ハミングで声が鼻に抜けすぎる場合は?
ハミングで声が鼻に抜けすぎて「鼻声」のようになってしまう場合は、軟口蓋(口の奥の天井の柔らかい部分)の位置を意識してみてください。軟口蓋がしっかりと上がっている状態であれば、鼻に抜けすぎることなく、バランスの取れた共鳴が得られます。
まとめ:ハミングで声の響きを変えよう
今回のあーこさんからの質問を通して、ハミングの基本的なポイントを整理しました。
・ハミングはボイスポジション(楽に出せる音域)から始める
・喉が痛くなる場合は力みが原因。リラックスを意識する
・正しいハミングでは唇が「ビリビリ」と強く振動する
・リップロールや腹式呼吸と組み合わせると効果的
・ハミングで掴んだ共鳴の感覚を歌に活かすことが最終目標
ハミングは地味な練習に見えるかもしれませんが、声の響きを根本から変えるための非常に重要なトレーニングです。毎日少しずつ、リラックスした状態で継続してみてください。
ハミングについてはこちらのページもご覧ください。
【ボイトレノウハウ3】ハミング
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