KICKBACK(米津玄師)の歌い方|難しいポイントと練習法をプロが解説

    こんにちは。ブラッシュボイスです。

    米津玄師さんの「KICKBACK」は、アニメ『チェンソーマン』のオープニングテーマとして大ヒットし、カラオケでも非常に人気の高い楽曲です。「KICKBACKをカッコよく歌いたい」「挑戦してみたけど難しすぎる」というご相談を、レッスンでもたくさん頂きます。

    実際、KICKBACKは米津玄師さんの楽曲の中でもトップクラスに難しい曲です。テンポの速さ、頻繁な転調、ラップ的なパート、高音域の力強さ——さまざまな要素が組み合わさっていて、「何から手を付けていいか分からない」という状態になりやすいんですね。

    この記事では、KICKBACKの歌い方について、何が難しいのかを整理したうえで、それぞれのパートを攻略するための具体的な練習法をお伝えしていきます。文章だけでは伝わりにくい部分もありますが、身体の感覚をイメージしながら読み進めて頂ければと思います。

    目次

    KICKBACK(米津玄師)の歌い方──まず知っておきたい楽曲の特徴

    KICKBACKの歌い方を練習する前に、まずはこの楽曲がどういう構造をしているのかを理解しておくことが大切です。闇雲に繰り返し歌うよりも、「どこが難しくて、なぜ難しいのか」を把握してから練習するほうが、はるかに効率が良いです。

    テンポが速く、言葉数が非常に多い

    KICKBACKのBPM(テンポ)は約150で、J-POPの中ではかなり速い部類です。さらに、Aメロやサビには言葉がぎっしり詰め込まれていて、一つひとつの音符に対して正確に言葉を載せていく技術が求められます

    早口言葉のようなフレーズが続くため、口の動き(滑舌)が追いつかないと、言葉が潰れて何を歌っているのか分からなくなってしまいます。これはリズム感というよりも、口周りの筋肉の瞬発力の問題です。

    1曲の中で何度も転調する

    KICKBACKの大きな特徴として、1番だけでもキー(調)が3〜4回変わるという点があります。Aメロ、Bメロ、サビ、それぞれで調性が異なるため、「さっきまでのメロディの感覚」が次のセクションでは通用しません。

    転調が多い曲を歌い慣れていない方にとって、これは非常にやっかいです。感覚的に音を取ろうとすると、転調のタイミングで必ずと言っていいほどピッチ(音程)がずれてしまいます。

    ベースラインが独立して動いている

    一般的なポップスでは、ベース(低音パート)がボーカルのメロディを支えるような動きをしていることが多いです。しかし、KICKBACKではベースラインがかなり自由に動いていて、ボーカルとは別の旋律を描いています

    これは楽曲としてはとてもカッコいいアレンジなのですが、歌う側からすると厄介です。カラオケで伴奏を聴きながら音を取ろうとすると、ベースの音に引っ張られてメロディが狂ってしまうことがあるんですね。ボーカルの旋律を自分の中にしっかり持っておく必要があります。

    KICKBACKのAメロ・ラップパートの歌い方

    ここからは、KICKBACKの各パートごとに歌い方のポイントを解説していきます。まずは冒頭のAメロから見ていきましょう。

    Aメロはリズムキープが最優先

    KICKBACKのAメロは、ラップに近い歌い方で言葉を刻んでいくパートです。メロディの上下幅はそこまで大きくありませんが、16分音符のリズムに正確に言葉を乗せていくことが求められます

    ここで大事なのは、言葉の「頭」をリズムに合わせる意識です。早口になりすぎて走ってしまう方が非常に多いのですが、実は米津さん自身は一つひとつのビートに対してかなり正確に言葉を配置しています。「急いでいるように聞こえるけれど、リズムは絶対にずらさない」——これがKICKBACKのAメロのカッコよさの正体です。

    リズム感の基礎を固めたい方は、リズムトレーニングの基本を解説したページもぜひ参考にして下さい。

    言葉を「点」で置いていくイメージ

    ラップ的なパートを歌うときに意識したいのは、メロディを「線」で歌おうとしないことです。通常の歌い方では音と音を滑らかにつなげますが、Aメロに関しては一つひとつの音を「点」として打ち込んでいくような感覚で歌ったほうがリズムが安定します。

    身体の感覚でいうと、お腹の底で小さく「トッ、トッ、トッ」とリズムを刻みながら、その弾みに言葉を乗せていくイメージです。喉先だけで言葉を出そうとすると、すぐに滑ってしまいます。お腹のリズムと口の動きを連動させることがポイントですね。

    滑舌の練習が効果的

    言葉数の多いAメロを正確に歌うためには、口周りの瞬発力を鍛えておくことが大切です。リップトリル(唇をブルブルと震わせるエクササイズ)は、口周りの脱力と呼吸のコントロールを同時に鍛えられるので、ウォーミングアップとしても非常に効果的です。

    リップトリルのやり方については、リップロール・リップトリルの練習法を解説したページに詳しくまとめてあります。KICKBACK練習前のウォーミングアップに取り入れてみて下さい。

    KICKBACKのサビの歌い方──高音を力まずに出すコツ

    KICKBACKのサビは、この曲の最大の聴かせどころです。勢いのある高音が連続するパートですが、ただ力任せに声を張り上げるだけでは、喉を痛めてしまう可能性があります。

    エフェクト(加工)と実際の歌い方を区別する

    まず押さえておきたいのが、KICKBACKの音源ではボーカルにエフェクト(音声加工)がかなりかけられているという点です。ガナリ声のように聞こえる部分は、歪み系のエフェクトで音質を荒くしている効果が大きいです。

    米津玄師さんは本来、非常に滑らかで丁寧な歌い方をされる方です。KICKBACKのような激しい楽曲で、あの荒々しいサウンドを生声だけで再現しようとすると、声帯に大きな負担がかかります。エフェクトの部分は「演出」として割り切り、自分の声質の範囲で表現することが大切です。

    ちなみに、エフェクトを使って表現することは音楽の世界では一般的な手法であり、決して「ごまかし」ではありません。録音技術を含めて一つの作品を仕上げていくのが現代の音楽制作です。

    高音は「上に飛ばす」ではなく「前に押し出す」

    KICKBACKのサビの高音域は、男性の場合mid2G〜hiA付近まで使います。この音域になると、声を「上に飛ばそう」とすると喉が締まり、力んだ声になりやすいのが一般的な傾向です。

    おすすめの感覚は、「上に飛ばす」のではなく「前に押し出す」イメージです。おでこの少し前あたりに的があると想像して、そこに向かって声を投げかけるような意識で歌うと、喉の締め付けが軽減されて楽に高音が出しやすくなります。

    このような地声の力強さを保ちながら高音を出す歌唱方法がミックスボイスです。詳しくはミックスボイスの練習フローを解説したページをご確認下さい。段階的に習得する方法を紹介しています。

    サビ前のブレスポイントを決めておく

    サビで高音を安定させるには、どこで息を吸うかを事前に決めておくことが重要です。KICKBACKはフレーズの切れ目が短いため、ブレスの位置を曖昧にしたまま歌い始めると、サビの後半で息切れを起こしてしまいます。

    息の支えがなくなった状態で高音を出そうとすると、喉に頼る発声になってしまい、声がかすれたり裏返ったりする原因になります。フレーズごとに「ここで吸う」というポイントを明確にしておきましょう。

    息の支えの基本となる腹式呼吸については、腹式呼吸の基礎を解説したページで詳しくお伝えしています。

    KICKBACKの転調に対応するための音程トレーニング

    先ほどもお伝えしたように、KICKBACKは転調の多い楽曲です。この転調にスムーズに対応するためには、いくつかの練習方法が効果的です。

    セクションごとに分けて覚える

    KICKBACKを通しで覚えようとすると、転調のたびに音程が迷子になりがちです。まずはAメロ、Bメロ、サビ、それぞれを独立したパーツとして覚えてしまうのが効果的です。

    各セクションの「最初の音」を正確に取れるようになることが特に重要です。セクションの頭さえしっかり入れれば、その中のメロディは比較的スムーズに歌えることが多いです。逆に、頭の音を外すとそのセクション全体がずれてしまいます。

    ピアノやキーボードで音を確認する習慣をつける

    転調に対応するためには、自分の声の音程が合っているかどうかを客観的に確認する作業が欠かせません。スマートフォンのピアノアプリでも構いませんので、各セクションの最初の音を弾いて、その音に合わせて声を出す練習を繰り返してみて下さい。

    特にBメロからサビへの転調は、多くの方が音程を外しやすいポイントです。ここだけを集中的に、何度も「Bメロの最後の音→サビの最初の音」をつなげる練習をすると、本番でもスムーズに移行できるようになります。

    原曲を「歌わずに聴く」時間も大切

    KICKBACKのように複雑な楽曲の場合、歌わずにじっくり聴くことも立派な練習です。ヘッドフォンをして、ボーカルの旋律だけを意識して追いかけてみて下さい。

    先ほど「ベースラインに引っ張られる」というお話をしましたが、これを防ぐためにも、ボーカルのメロディラインを耳で完全に覚えてしまうことが一番の対策です。ベースやドラムに惑わされず、「自分はこのメロディを歌うんだ」という確信を持てるようになるまで聴き込んでみましょう。

    カラオケでKICKBACKをカッコよく歌うための実践テクニック

    ここまで各パートの歌い方を解説してきましたが、実際にカラオケで歌う場面でのテクニックについても触れておきましょう。

    エコー(リバーブ)を切る・下げる

    KICKBACKをカラオケで歌う場合、エコー(リバーブ)を通常より下げる、もしくは切ってしまうのがおすすめです。エコーがかかっていると声が響きすぎて、KICKBACKの持つドライで荒々しい雰囲気が出にくくなります。

    エコーを切ると自分の声がダイレクトに聞こえるので最初は怖く感じるかもしれませんが、この曲に関してはそのほうがカッコよく仕上がりやすいです。

    キー設定を無理しない

    KICKBACKの原曲キーは男性にとってかなり高めです。無理に原曲キーにこだわるよりも、1〜2つキーを下げて、自分の声がしっかり鳴る音域で歌うほうがカッコよく聞こえることが多いです。

    「原曲キーで歌える=上手い」というわけではありません。自分の声が最も力強く響く音域を見つけて、そこで表現力を発揮することのほうがずっと大切です。

    喉を開きすぎず、適度な締まりを意識する

    ボイトレでは「喉を開きましょう」とよく言われますが、KICKBACKに関しては喉を開きすぎないことも大事です。喉を大きく開いた状態だと、どうしても柔らかい響きになってしまい、この曲の攻撃的なニュアンスが出にくくなります。

    とはいえ、喉を完全に締めてしまうと声が潰れます。「普段の7〜8割くらいの開き具合」をイメージして、わずかにタイトな状態を保つのがちょうどいいバランスです。声を潰さない範囲で、少しだけ硬めの響きを作るような感覚ですね。

    KICKBACKを段階的に仕上げる練習の順番

    最後に、KICKBACKを歌えるようになるまでの練習の進め方を、段階的にまとめておきます。一度に全部を完璧にしようとせず、ステップを踏んでいくことが上達への近道です。

    ステップ1:原曲を徹底的に聴き込む

    まずは歌わずに聴くことから始めましょう。ボーカルのメロディを耳で完全に覚えることが目標です。特に転調のタイミングと、各セクションの最初の音を意識して聴いて下さい。通勤中や家事の合間など、繰り返し聴く機会を作ってみて下さい。

    ステップ2:テンポを落として口ずさむ

    メロディを覚えたら、YouTubeやアプリの再生速度を0.75倍に落として、ゆっくり口ずさんでみましょう。この段階では声量を出す必要はありません。音程とリズムを正確に取ることだけに集中して下さい。特にAメロのラップ的なパートは、ゆっくりのテンポで言葉をはめ込む練習をしておくと、原曲テンポに戻したときに格段に楽になります。

    ステップ3:セクション別練習から通し練習へ

    テンポを落とした状態で音程が安定してきたら、原曲テンポでセクションごとに声を出して練習していきます。通しで歌うのではなく、「今日はAメロだけ」「今日はサビだけ」のように集中して取り組むほうが効率的です。裏声の質を上げておくとサビの高音がぐっと楽になりますので、ファルセットの練習方法についてはファルセットの出し方を解説したページもご覧下さい。

    各セクションがある程度歌えるようになったら、通しで歌う練習に入ります。ここで重要なのは体力配分です。KICKBACKはテンポが速い上にフレーズが密集しているため、Aメロから全力で飛ばすとサビの前に息切れしてしまいます。Aメロは6〜7割の力でリズム重視に歌い、サビで全力を出す——という配分を意識してみて下さい。プロのシンガーも、1曲の中でエネルギーの使い方を計算しながら歌っています。

    まとめ──KICKBACKの歌い方を攻略するために

    米津玄師さんの「KICKBACK」は、テンポ・転調・音域・リズムの全てにおいて高い技術が求められる楽曲です。しかし、一つひとつのポイントを分解して段階的に練習していけば、着実に歌いこなせるようになっていきます。

    この記事のポイントをまとめると——

    Aメロ:リズムキープと滑舌が鍵。お腹でリズムを刻む意識を持つ
    サビ:エフェクトの再現にこだわらず、自分の声域で力強い高音を出す
    転調:セクションごとに覚え、各セクションの頭の音を正確に取る
    カラオケ:エコーを下げ、無理のないキー設定で歌う
    練習順序:聴き込み→スロー再生→セクション別→通し、の4ステップ

    米津さんの他の楽曲の歌い方については米津玄師の歌い方|高音を楽に歌い上げる方法もご確認下さい。
    文章だけではお伝えしきれない部分も多いですが、実際に声を出しながらこの記事を読み返して頂ければ、少しずつ感覚がつかめてくると思います。

    もしご自身の練習だけでは限界を感じたり、もっと効率よく上達したいと思われた場合は、プロのボイストレーナーに直接アドバイスをもらうことで一気に道が開けることがあります。ブラッシュボイスでは60分の無料体験レッスンを行っておりますので、お気軽にお申し込み下さい。

    株式会社ブラッシュボイス

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