こんにちは。ブラッシュボイスです。
「声帯を鍛えて、もっと力強い声で歌いたい」「高音が安定しないのは声帯が弱いから?」——こんな悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
ボイストレーニングに興味を持つと、「声帯を鍛える」「声帯を強くする」という言葉をよく目にしますよね。
ただ、実は声帯そのものは筋肉ではないため、腕や脚のように直接鍛えられるわけではありません。
では何をトレーニングすればいいのか。
この記事では、声帯の仕組みから、声帯周りの筋肉を鍛える具体的な練習法、そして日常のケアまでを丁寧にお伝えしていきます。
文章だけですべてをお伝えするのには限界もありますが、「まず何から始めればいいか」がはっきり見える内容を心がけましたので、ぜひ最後まで読んでみて下さい。
声帯の仕組みを知ろう|声が出るメカニズム
声帯とは何か
声帯とは、喉の奥にある2枚の小さなひだ状の組織のことです。
長さはわずか1.5~2cm程度で、肺から送り出された息がこのひだの間を通るときに振動が起き、それが「声」になります。
イメージとしては、風船の口を引っ張りながら空気を抜くと「ブー」と音が鳴る、あの仕組みに似ています。
風船のゴムが声帯、空気が息にあたるわけですね。
声帯の閉じ具合・引き伸ばし具合によって、声の高さや太さが変わります。
声帯は「筋肉」ではない
ここが非常に大事なポイントです。
声帯の本体は筋肉ではなく、粘膜と靭帯でできた組織です。
つまり、声帯そのものをダンベルで鍛えるように強化するということはできません。
では「声帯を鍛える」「声帯を強くする」とは何を指しているのでしょうか。
答えは、声帯の周りにある筋肉群をトレーニングして、声帯のコントロール精度を上げることです。
車に例えるなら、エンジン(声帯)そのものを替えるのではなく、ハンドル操作(周辺の筋肉)を上手くする、というイメージですね。
声帯を動かす2つの筋肉
声帯の開閉には、主に2種類の筋肉が関わっています。
1つ目は「輪状甲状筋(りんじょうこうじょうきん)」です。
この筋肉が収縮すると声帯が引き伸ばされ、薄くなります。
あくびをする直前の「ふわぁっ」と喉が開く感覚——あの瞬間に輪状甲状筋が動いています。
裏声(ファルセット)を出すときに大きく作用する筋肉で、普段の会話ではあまり使われていません。
2つ目は「閉鎖筋(へいさきん)」です。
こちらは名前のとおり声帯を閉じる方向に働く筋肉群で、芯のある力強い声を出すために欠かせません。
「えっ!」と驚いたときに喉の奥がキュッとなる感覚——あれが閉鎖筋の作用です。
声帯トレーニングとは、突き詰めるとこの2つの筋肉をバランスよく鍛えることに他なりません。
どちらか一方だけが強くても声のコントロールは不安定になりますので、両方をまんべんなく動かしていくことが大切です。
声帯トレーニングの基本メニュー|まずはここから
ここからは、声帯周りの筋肉を鍛えるための具体的な練習メニューをご紹介していきます。
どの練習も特別な道具は不要ですので、自宅でも取り組んで頂けます。
エッジボイスで声帯閉鎖の感覚を掴む
エッジボイスとは、声帯をゆるく閉じた状態で少量の息を通し、「あ゛あ゛あ゛…」とプツプツした音を出す発声エクササイズです。
映画のホラーシーンに出てくるような、あの独特な声を思い浮かべて頂けると分かりやすいかもしれません。
やり方はシンプルです。
まず全身の力を抜いて、自分の出せる一番低い声で「あーーー」と発声します。
そこからさらに低くしていくと、あるポイントで声がプツプツとした質感に変わります。
これがエッジボイスです。
大切なのは喉に力を入れないことです。
エッジボイスは喉を締めて出す声ではなく、脱力の中で声帯が自然に閉じる感覚を掴むための練習です。
1回あたり2~3分を目安にして、無理なく毎日続けることがポイントです。
裏声トレーニングで輪状甲状筋を動かす
閉鎖筋を鍛えるだけでは片手落ちです。
裏声を使ったトレーニングで、輪状甲状筋をしっかり動かしましょう。
日頃よく歌う曲を、すべて裏声だけで歌ってみて下さい。
普段の地声では使わない筋肉が一気に動くため、最初はすぐに声が疲れるかもしれません。
それは輪状甲状筋が普段サボっている証拠のようなものです。
裏声が安定してくると、高音域の伸びやかさが格段に変わってきます。
裏声と地声の切り替えがスムーズになることで、歌の表現の幅もぐっと広がりますよ。
裏声の出し方・コツについてはこちらで詳しくまとめています。
裏声・ファルセットの出し方・コツや練習方法まとめ
「はぁー→あっ」で声帯の開閉を体感する
もっとシンプルに声帯の動きを感じたい方は、この練習がおすすめです。
冷たい指先を温めるように「はぁー」と息だけを吐いてみて下さい。
次に、その息を続けたまま「あっ」と短く声を出します。
「はぁー」は声帯が開いている状態、「あっ」は声帯が閉じた状態です。
この切り替えの瞬間に、喉の奥がキュッと動く感覚を覚えて頂ければ成功です。
声帯のコントロールの第一歩は「開いている・閉じている」をはっきり区別できるようになることですので、地味ですがとても大事な練習です。
声帯トレーニングの応用メニュー|さらに鍛えたい方へ
基本メニューに慣れてきたら、次のステップに進みましょう。
ここでは声帯周りの筋肉をより多角的に鍛えるための応用メニューをご紹介します。
ハミングで共鳴と閉鎖を同時に鍛える
ハミングとは、口を閉じたまま鼻腔に声を通す発声法です。
「んー」と口を閉じて声を出すだけなのですが、実はこのとき声帯はしっかり閉じた状態になっています。
ハミングのいいところは、喉への負担が少ないのに声帯閉鎖と共鳴感覚の両方を同時に鍛えられることです。
低い音から高い音まで、音階を上り下りしながらハミングしてみて下さい。
鼻の付け根や頭のてっぺんが振動する感覚が得られれば、しっかり共鳴できている証拠です。
ハミングの練習について詳しくはこちらをご参照下さい。
ハミングの練習方法 音の高さ・息漏れ・喉の状態、振動のチェックについて
リップロールで息の圧力を安定させる
リップロールとは、唇を軽く閉じた状態で息を通し、「ブルルルル…」と唇を振動させるエクササイズです。
一見すると声帯とは関係なさそうに見えますが、実はリップロールを安定して行うには声帯が適度に閉鎖している必要があります。
さらに、息の圧力が一定でないと唇の振動が途切れるため、呼気のコントロール力を同時に鍛えられる一石二鳥の練習です。
好きな曲のメロディーをリップロールで歌ってみると、高音部分で唇が止まりやすいことに気づくかもしれません。
リップロールが途切れないように練習を重ねるうちに、自然と声帯のコントロール力が上がっていきます。
リップロールの詳しいやり方はこちらで解説しています。
リップロール(リップトリル)の効果や練習方法について
腹式呼吸で声帯への息の送り方を安定させる
声帯トレーニングというと声帯の周辺ばかりに意識が向きがちですが、声の土台は「息」です。
どんなに声帯周りの筋肉が鍛えられていても、息の送り方が不安定だと声もブレてしまいます。
腹式呼吸ができていると、一定の圧力で安定した息を声帯に送り続けることができます。
お腹の底から空気を押し出すような感覚で、ゆっくりと息を吐く練習を日常的に取り入れてみて下さい。
声帯のトレーニングと腹式呼吸は、車の両輪のようなものです。どちらが欠けても歌声は安定しません。
腹式呼吸のやり方・コツはこちらにまとめています。
腹式呼吸のやり方・練習方法について
声帯トレーニングで気をつけたいポイント
声帯周りのトレーニングは正しく行えば効果的ですが、やり方を間違えると喉を傷める原因になりかねません。
ここでは特に注意して頂きたいポイントをまとめます。
声帯や喉の筋肉を意識しすぎない
これは意外に思われるかもしれませんが、非常に重要なことです。
声帯や声帯周りの筋肉を「動かそう」と意識しすぎると、喉に余計な力みが生まれやすくなります。
声帯の開閉や輪状甲状筋・閉鎖筋の動きは、あくまで声が出るときのカラダのメカニズムです。
「こういう仕組みで声が出ているんだな」という補足的な知識として持っておく、というスタンスがちょうどいいでしょう。
リラックスしてクリアに発声することを心がけるだけで、必要な筋肉は自然に動いてくれます。
喉に痛みや違和感があるときは休む
練習中に喉の痛みや強い違和感を感じたら、すぐに練習を中止して下さい。
正しいトレーニングで喉が「痛い」と感じることは基本的にありません。
痛みがある場合は、力みが入っているか、喉のコンディション自体がよくない可能性があります。
痛みが続く場合は無理を重ねず、専門家に相談されることをおすすめ致します。
短時間・毎日がトレーニングの基本
声帯周りの筋肉は小さく繊細ですので、長時間のハードなトレーニングは逆効果になりかねません。
1回の練習は10~15分を目安に、毎日コツコツ続けることが最も効果的です。
筋トレと同じで、小さな負荷を継続することが強い筋肉を育てるコツです。
「今日は30分やったから明日はサボろう」よりも、「毎日10分だけ集中する」方が確実に成長を実感できます。
声帯トレーニングの効果を高める日常のケア
トレーニングだけでなく、日常の過ごし方も声帯のコンディションに大きく影響します。
ちょっとした心がけで練習の効果がグッと変わりますので、ぜひ意識してみて下さい。
こまめな水分補給を習慣にする
声帯は乾燥に弱い組織です。
潤いが不足すると声帯の振動が鈍くなり、かすれ声や声の出しにくさにつながります。
練習前・練習中・練習後を問わず、こまめに水分を摂るようにして下さい。
冷たい水よりも常温の水の方が喉への刺激が少なく、声帯を温かく保てるのでおすすめです。
歌う前のウォーミングアップを省略しない
いきなり全力で歌い始めるのは、準備運動なしで全力ダッシュするようなものです。
ハミングやリップロールで2~3分ウォーミングアップしてから歌い始めるだけで、声帯への負担が大幅に減ります。
声帯は見えない分、コンディションを過信しがちです。
歌う前のウォーミングアップは、習慣として必ず行うようにして下さい。
睡眠と休息を大切にする
声帯周りの筋肉は、トレーニング後の休息中に回復・成長します。
睡眠不足や疲労が溜まった状態では、どんなに練習しても効果が出にくくなってしまいます。
特に声が枯れやすい、朝起きたときに喉がガラガラする、という方は休息が足りていないサインかもしれません。
十分な睡眠を確保し、喉を使い過ぎた日は翌日に声を休める時間を作るよう意識してみて下さい。
声帯トレーニングと歌の上達のつながり
最後に、声帯トレーニングを歌の上達にどうつなげていくかをお伝えします。
基礎練習は大切ですが、それだけで終わってしまうのはもったいないですよね。
地声の安定と声量アップ
閉鎖筋が鍛えられると、声帯がしっかり閉じた状態で発声できるようになります。
その結果、少ない息の量でも芯のある力強い声が出せるようになり、声量が自然とアップします。
「声が通らない」「マイクに声が乗りにくい」と感じている方は、声帯閉鎖のトレーニングに取り組むことで改善が期待できます。
力任せに大きな声を出すのではなく、効率よく声帯を振動させるという発想が大切です。
高音域の伸びと安定感
輪状甲状筋が柔軟に動くようになると、高い音を出すときに声帯がスムーズに伸展します。
高音で声がひっくり返る・裏返るという悩みは、この筋肉が十分に鍛えられていないことが原因のひとつです。
輪状甲状筋と閉鎖筋の両方がバランスよく機能すると、地声と裏声の境目がなめらかになります。
ミックスボイスなどの歌唱方法を身につけたい方にとっても、声帯周りの筋肉のバランスは土台となる要素です。
表現力の幅が広がる
声帯のコントロール力が上がると、強い声・弱い声・息混じりの声・芯のある声と、声色のバリエーションを自在に使い分けられるようになります。
サビで力強く歌い上げたり、Aメロでは柔らかく語りかけるように歌ったり。
そうした緩急のある表現ができるようになるのは、声帯周辺のコントロールが磨かれているからこそです。
テクニックだけでなく「伝わる歌」を目指す方にとって、声帯トレーニングは欠かせない基礎と言えるでしょう。
まとめ|声帯を鍛えて声を強くするために
この記事のポイント
- 声帯そのものは筋肉ではないため、声帯「周りの筋肉」を鍛えることがトレーニングの本質
- 輪状甲状筋(声帯を伸ばす)と閉鎖筋(声帯を閉じる)の2つをバランスよく鍛えることが大切
- エッジボイス・裏声トレーニング・ハミング・リップロール・腹式呼吸を組み合わせて、総合的にトレーニングする
- 喉の力みは逆効果。リラックスした発声を心がける
- 短時間・毎日の継続が最も効果的。水分補給やウォーミングアップも忘れずに
独学で迷ったときは
声帯トレーニングは自宅でも取り組める練習が多いですが、「正しくできているか分からない」「練習しているのに変化を感じない」という壁にぶつかることも少なくありません。
文章だけでは伝えきれない部分も正直あるかと思います。
もし何かご不明な点がありましたら、お気軽にご質問頂くだけでも構いません。
ブラッシュボイスでは60分の無料体験レッスンも行っておりますので、ご興味がありましたらぜひ一度お越し下さい。
株式会社ブラッシュボイス
